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2006年8月 7日

世にも美しい数学入門

紹介者:
株式会社アイ・ティ・イノベーション 代表取締役 林 衛
出版社:
筑摩書房
著者:
藤原正彦/小川洋子
価格:
798円(税込)

私は、7月初旬に、インドへ出張の際の飛行機の中で映画「博士の愛した数式」を観た。記憶喪失になった数学者を取り巻く人々の生き方について考えさせられる印象的な映画である。映画の節々に数式が、出てくる。主人公の博士が、頭の中にある数学の世界を介護に当たっている婦人と息子に易しく説いて聞かせている。数学と人生観を融合させた変わった作品だ。この映画を観た時から作者の小川洋子さんに興味を持っていた。

また、もうひとつ私が、昨年読んだ本で印象に残っているのは、藤原正彦さんの「国家の品格」である。藤原さんの本業は、数学者であるが、「国家の品格」を読む限り、数学者の片鱗は、見えない。論理的で情緒的な日本的な考え方をする人だとこの作品からは、感じられる。藤原さんは、欧米の経験、文化を通じて日本という国の本質を見抜いた人の一人だ。藤原さんの主張の強さと日本に対する強い愛を感じる。論理と情緒は同居してはじめて人間らしさが現れるものだと私は思う。

さてインド出張から帰国後、中部へ出張する際に、本屋で目に留まったのが、今回紹介したい「世にも美しい数学入門」である。中身は、数学者である藤原さんと直木賞作家で「博士の愛した数式」の原作者である小川さんの対談集である。それが、なんと本になっているではないか。どんな会話が、されているか楽しみに思い、迷わず購入した。

私は、今年に入ってからITアーキテクトの重要性と育成について情緒・熱意を持って取り組んでいる。「アーキテクトは、美しいシステムの設計と工法に責任を持つ人である」というのが、私の主張だ。美しいシステムを考察する際に、必要なことは、数学的なセンス、芸術、哲学である。どんな製品でも機能性を追及すると最後には、美しい姿になる。世の中には、ちゃんと設計の仕事をする人は多く存在するが、美しい設計を目指す人は少ない。構造物の美しさは、機能的にも数学的にもこだわり続けて得られるものだ。一般的には、数学は、硬く特別な学問のように見えることがある。システム設計も同様な感覚で捉えられているが、もっとやわらかく自由なアプローチがあっても良いではないかと思う。数学者の仕事は、いつ答えが見つかるかどうか分からないことを何年もかけて追求する。また、数学はすぐに世の中に役立つかどうかは、分からないが、数百年後にすごい価値を生む可能性もある。それが、数学だと教えてくれている。数学とは、純粋な学問である。

私は、本書を、特にIT技術者の方に推薦したい。対談形式で、数学の身近さ、美しさ、自由を教えてくれる。また、藤原さんと小川さんの会話の中で、数学者の気質や性格が、うまく説明されている。

完全数の話は面白い。完全数とは、自分自身の約数の和が、自分自身になる自然数のことである。江夏の背番号は、28であったが、28は、完全数である。28の約数は、1、2、4、7、14であるが、1+2+4+7+14は、28になる。一番小さな完全数は、6、次が、江夏の背番号28、次は496、次は8128、その次は、8桁になり、無限に存在するかどうかは、分からないそうだ。

 

最後に近い章で「オーストラリア人のゲーデルが、1931年に発表した「不完全性定理」について述べている。これには、私は、感動した。「不完全性定理」を簡単に説明すると「数学上の全ての命題は、正しいか嘘っぱちかどちらかに決まっている」ということは、当たり前そうだと普通考えるが、それは間違いで「ある種の命題は、どう頑張っても真とも偽とも判定できないものが存在する」これが証明されたのだ。

この話は、人生そのものだ。最初から真偽が決まっているわけじゃない。全てが、数式で決まっては困る。いろいろなものが存在して良いのだという気持ちになる。このことは、哲学の観点で言えば分かりやすいが、数学でも証明できることが興味深い。

人生の目的は、金じゃないよとも言ってくれている。純粋に何かを取り組むことの素晴らしさを感じ取って欲しい「物や金を目標とするような現代人」のくすりになる本である。

美しい設計を目指すエンジニアに向けて

【この記事はITpro Watcherとの連携コンテンツです】

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