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2005年3月11日

工藤 千温さん(5)
株式会社ティージー・アイティサービス
計画部 戦略企画G グループマネージャー

工藤 千温さん工藤 千温さん
株式会社ティージー・アイティサービス
計画部 戦略企画G グループマネージャー
大学では小学校教員養成課程に在籍するものの、1991年株式会社ティージー情報ネットワークに入社。新人SEとして一から教育を受け、メインフレーム周辺基盤の維持管理業務を担当する。2度の産休後、1999年から運用用務の企画および全体調整業務に異動。2002年サポートセンターでリーダー職に。同年7月、サポートセンターを含む運用サービス部門が株式会社ティージー・アイティサービスとして分社化され、コールサポート業務アウトソーシング実施プロジェクトリーダーに。2003年上記プロジェクト完了と同時に現職となる。

リーダー自身の納得感がまわりも動かす

能登原
こうしてお聞きするとやはり大変なところがあったんだな、と改めて思いますが、工藤さんたちリーダーと一緒にやっていた時は、少なくとも工藤さんに関しては「これは大変だ」という危機感をそれ程感じませんでした。初めてのプロジェクトだというのに、実に淡々とやられていましたよね。

工藤
ええ、確かに淡々とやっていましたね(笑)。

能登原
もちろんその都度、問題・課題とか、スケジュールに対しての進捗状況を報告していただいたわけですが、なぜ私が危機感を感じなかったかというと、問題があっても、工藤さんがそれをきちんと把握されていたんですね。今問題になっていることはこういうことで、それはこういう背景から生じていることなのだ、そしてプロジェクト全体に対する位置づけはこうだ、だからリーダーとしてはこうしていきたいと、全部きちんと納得がいくように説明してくれたというのが非常に大きかった。コンサルとして、私も安心することができました。それから、当時も私がリーダーの皆さんにお話していたことではあるんですが、プロジェクトの進捗や問題・課題についての情報は経営層に上がっていました。それが明確になっていれば、いざとなったら経営層が意思決定できるんです。たとえば、工藤さんが「この問題についてはどうすればよいのか」と相談に行けば、経営層はそれを把握しているので、適切な指示を与えることができる。

だけど一番問題なのは、それがはっきりしないプロジェクトなんですよ。何が問題なのかわからない、さらにそれに対してリーダーとしての自分はどうしたらいいかわからない、などというのがコンサルも経営層も最も困るわけです。スケジュールが意味もなく遅れているとか、ですね。工藤さんのプロジェクトではそういうのはなかったんですよ。ですからプロジェクト管理が非常に上手だと思いました。
そのあと、アイ・ティ・イノベーションのスキル診断もやって頂いたりしましたよね。

工藤
はい、実施しました。

能登原
その時も工藤さんの考え方をヒアリングさせていただきましたが、リーダシップ、管理調整力、コミュニケーションといった項目で評価が高いということがわかりました。その点からも、工藤さんは非常にリーダーとして向いていると思います。工藤さんの初めてのプロジェクトをご一緒して感じたことは、やはり当たっていたと思うんです。

工藤
そうなんですか。

能登原
ええ、リーダーとしての適性は非常に高いですね。
この対談でいつもお聞きすることがあるんですが・・・。工藤さんが今回初めてプロジェクトをやってみてプロジェクト管理には何が大切だと思いましたか。あるいはリーダーとしてでもいいですけど。何人かを率いるリーダーという立場で何が一番大切だとお考えですか?

工藤
自分自身の納得感ですね。

能登原
リーダー自身が納得していれば、それが部下やクライアントにも伝わるということでしょうか。自分が納得したら周囲はきちんと説得できると。

工藤
ええ。私はそんな風に思っているのです。それは私に自信があるからというよりは、むしろ自分にとっては、納得感が行動するための必要条件だからだと思うのです。自分の納得感があれば、まず踏み出せるし、それで周囲を動かせなかったら、またその次の手を考えて行動すればよいわけですから。
結局、自分がやっていることの意義とか意味を感じたいのです。目的や目標が明確でないと、私はどうも先に進めないんですよ。

能登原
それが見えないときはどうするんですか。

工藤
意義や意味を探します。現場や経営上のメリットですとか。意味もなく「やれ」と言われてやったとしても、何の満足感もないじゃないですか。それをやって自分が何か得られたとか、誰かに喜んでもらえたとか、そういう満足感が欲しいのです。だから「どうしてやるのか」ということは自分の中で納得できるまでつなげていきます。

能登原
なるほどね。それで腑に落ちた部分があります。
それに工藤さんとご一緒していて私が思うのは、やはりコミュニケーション能力が非常に高いということです。工藤さんは提案しても、それに固執しない。「こう思いますよ」とこちらが言ったりすると、率直なディスカッションや議論が自然にできる相手だということを、まず感じたんです。ですからディスカッションの中で解決策を見つけていける。それは私だけが感じていることではないと思います。上司や部下の方もやりやすいのではないでしょうか。

工藤
プロジェクト管理ではコミュニケーションができるかどうかというのは大きいと思います。一口にコミュニケーションと言っても、やり方もいろいろあるし、相手によっても全然受け取り方が違いますし。ですからコミュニケーションの方法をいかにたくさん身に付けていて、それを駆使してコミュニケーションを取れるかということが大切なのではないでしょうか。

能登原
工藤さんは変に構えないし、たいていの人とはコミュニケーションが取れそうですよね。

工藤
多分大丈夫でしょう(笑)。

能登原
そういうコミュニケーション能力というかネゴシエーション力というのは、何かトレーニングなさったんですか。それとも元々持っていたんでしょうか。

工藤
どうなんでしょうね。特別なことは何もしていないです。もしかしたら、生後2か月から保育園で集団生活をしていたのが、コミュニケーション力に効いているのかもしれませんけれど。そのくらいしか思いつかないです。

能登原
それは確かに、コミュニケーション能力が発達するかもしれませんね。
私はリーダーにはまず主体性が大切だと思うんですよ。自分の頭で考えて自分が主体的に動く、誰かに言われるのを待っている人というのはリーダーになれないんですけど、ご経歴を見ていると、工藤さんは、その時々の状況でいろいろ考えながらも、基本的にご自分で考えて進路を決めていますよね。それから、割と大変な状況でも、余力を持ってことに当たっているような感じがします。

工藤
余力といわれると、確かにそうかもしれないです。あまり頭の中がいっぱいいっぱいになると自分が自分でなくなってしまうような感じがするので、そういう時はちょっと間を置くようにするんです。

能登原
淡々としている工藤さんでも、頭の中がいっぱいになることもあるんですか。

工藤
もちろんありますよ(笑)。「このままだとマズイ」という時はありますね。そういう時は「あわてちゃいけない」と自分に言い聞かせて整理するんです。で、整理して急がなくていいものをとりあえずこっちに置く。そうして自分のペースをなんとか取り戻すのです。でもお尻に火が付かないとなかなか動けない時もあるじゃないですか。それに、いつも自分の興味が向く仕事ばかりじゃないですし、そういうことはつい脇に置きがちですよね。そういう案件にギリギリであおられたり…でも、そういうのは仕方がないかなと思っています。

ハードなプロジェクトの現場で人が育つ・人を育てる

能登原
これまでの工藤さんのお話を聞いていると、話し方が淡々としているので、読者の方は余裕があるプロジェクトのような感じを受けるかもしれませんが、これだけのことをこれだけの期間でやるというのは、正直なところ非常に大変です。しかも工藤さんは5時までしか現場にいられないというハンディもあった。

私が担当しているプロジェクト支援は、男性リーダーと一緒にやっているのがほとんどなんです。そうするとみんな時間をものすごく使っている。私自身もそうだし(笑)。それなのに工藤さんは時間内にきちんと集中してこれをやりきったというので、驚いたし尊敬の念を持ちました。工藤さんについては、そのタイムマネジメントの上手さの印象が大きいんですよ。

工藤
すごく褒めていただいていますが(笑)・・・。でも私も土日のどちらかは会社に出てきていましたね。
基本的に土曜日は子どもを保育所に預けられるので、土曜日に出ていることが多かったです。毎日きっかり定時に帰るので、土曜日に出社して溜まっていく分を処理していました。

能登原
やはりそういう努力をされてたんですね。

工藤
あとは部下に仕事を任せました。自分で全部はできないので。だから部下は相当残業してましたよ。

能登原
でもそれでまた部下が育ちましたからね。
工藤さんもそうですけど、他の人たちもこのプロジェクトを通じて伸びた部分が大きかったです。私としても、やってよかったなと思えるプロジェクトでした。
工藤さんは結局小学校の先生にはなられませんでしたが、人を育てているということではある意味、同じ部分があるのかもしれませんね。

工藤
育てると言ったら大変おこがましいですが、自分の知っていることを誰かに教えてあげるというのが元々とても好きなんです。

能登原
マネジメントの戦略を考えたり計画をする人たちは、教えることよりもゲームが好きな人が多いかもしれませんけれど。

工藤
そうかもしれませんね。でも、私はゲームが好きというわけではありません。むしろ今回のように現場から仕事の意味をつなげていく方ですね。意味が感じられることが大事なのです。仕事の意味を追いかけていって、多分、最後まで行っても自分の意味とつながらなかったらその組織にはいられないと思います。私はこの会社が、何かよいものに貢献しようという意図と意味をもって存在している組織だと理解しているし、信じることができているんです。

能登原
根本にそれがあるからこそ、ハードな仕事をやっていけるんでしょうね。

戦略企画の立場で考えていること

能登原
現在の部署は戦略企画で、移られて1年になるんですね。

工藤
今度はゲームをする立場というか、ゲームを考える立場になりました。でも難しいですね。思ったように動いていかないといいますか、やりたいことはあってもリソースが思うように揃わなかったりしますから。例えて言えば、展開したいゲームとは全然違う手札しかない感じがあって、そういうことはどうやって解決していけばよいのだろうと考えながら仕事をしているところです。

能登原
扱っているのは企画と戦略全般なんですか。

工藤
基本的には全般です。事業計画の作成とか。会社としてはコスト削減を一気に荒療治で行ったので、コストは削減できたのですが、まだ品質が追いついていない部分もあって、それに付随するところの改善ですね。あとはこの荒療治で、今までの「なあなあの関係」の中で溜まっていた膿のようなものが出てきていて、それをきれいにしていく必要があります。今は現場を回してきれいにしているところで、次の戦略を出すというよりは、実行に移した戦略をきちんと意味があるところに決着させるという段階かな、と思っています。

能登原
また新たな難しさの中に入ってきている。

工藤
リーダーからマネジャになったので、今度はマネジャ会議に出なくてはなりませんし。

能登原
経営の一角ですからね。

工藤
しかも戦略企画グループなので、事務局として経営会議にも出るんですよ。どんどん経営に近い視点は高まっていくのですが、一方で現場に近い方の視点が薄れていく感じです。でも私はもともと現場が好きなんです。現場は好きなんですけど、現在のような現場から離れたところから現場を動かしたいと思っても上手く動かせなくて。そこが悩みですね。

能登原
現在の工藤さんのような立場で、現場とのコミュニケーションをどうするかというのは非常に難しいですよね。

工藤
それには多分、マネジャ達との連携がキーになってくると思うんですよ。各マネジャが、納得感を大切にして部下とコミュニケーションを取れれば、方針や戦略がきちんと下まで落ちていくと思うのですが、なかなか・・・。マネジャ達も苦労しているようです。例えば企画グループが企画立案して、ちゃんとマネジャ会議で合意形成が得られてゴーをかけていのに、現場の担当者がその意味も目的も理解できていなくて「何でこんなことをやるんだ」という批判が出てきたりするんです。それが歯がゆいですよね。

能登原
最後に、子どもさんが小さいうちは仕事を選ばない、というところをあえてお聞きしますが、これからどんな仕事をしていきたいとお思いですか。

工藤
SEを志望した時の動機でもありますが、お客様のところへ行って、その問題解決のお手伝いをしたいですね。99年以降は社内の業務改革でしたから、直接お客さまのプロジェクトをやったというわけではないですし。OSチームで仕事をしていたときは、一応カッコつきの「お客様」相手ではあるものの、CPUのリプレースなど情報通信部の仕事の域を出ていません。そういう意味では、私はまだ本当のSEの仕事をしたことが無いように思います。

やはり私には運用の経験が核なので、できれば運用コンサルなどの業務分野で、お客様に接する機会を得たいと思っています。立場的にはもう、一担当者で満足しているわけにいかないですから、そういった部門やプロジェクトのマネジャとして成果を挙げたいですね。

今までは子どもたちが小さかったので、対顧客の仕事はできにくかったというところもあります。これから段々と子どもたちの手が離れていくので、そちらの仕事をやってみたいですね。

能登原
制約のある中で、これだけの仕事ができた工藤さんですから、今後が益々楽しみです。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

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