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2006年7月28日

細川 努さん(2)
株式会社日本総合研究所 次世代カードシステム事業本部

細川努さん細川 努さん
株式会社日本総合研究所
次世代カードシステム事業本部
1964年中央大学法学部法律学科卒業(株)日本総合研究所において流通系・金融系システムの構築に携わる傍ら、現場においてもオブジェクト指向、データモデリング等の開発手法の普及や、アーキテクチャ設計等の確立に努めてきた。
最近は、稚内北星学園大学東京サテライト校にて客員教授として、学生にシステムアーキテクチャ論を教えている。技術士(情報工学)、システムアナリスト、システム監査技術者。

最近のプロジェクトがうまく行かない理由

細川努さん

細川
最近のプロジェクトは、単に古いものを捨てて新しいシステムを作ればいいというわけでなく、いろいろと難しいケースが増えてきていると思います。例えば既存の古いメインフレームや、今となっては古くなったUNIXを一気に捨ててしまうのでなく、古いシステムを利活用しながら、新旧システムが並存するケースが多くなってきていると感じているのです。
そういうことを実現するためには、新旧の技術やシステム仕様を熟知していないといけませんね。

能登原
たしかにそれは難しい。

細川
ええ、でもそれができないとガラポン(新システムへの一括移行)しなければいけないことになります。

能登原
大企業の基幹系だと、全部作り直そうとするとすごくリスクが高くなるので、やはり徐々に替えたいという気持ちもあるし、だけど思い切って替えないと何年もかかる。その辺のトレードオフが非常に難しいですよね。

細川
私個人の考えとしては、なるべく一度に新システムに切り替えることは避けたほうがいいと思います。
しかしながら、新旧システムが並存すると、旧システムの設計の汚さを新システムに引きずってしまいやすいという別の問題が発生します。
「リスクを抑えながら理想的な新システムを構築する」のは、すごく難しいんですよね。

能登原
難しいですね。頭が良くないと出来ないですね。

細川
わたしみたいに頭の悪い人間でも、きちんとシステムの全体像を把握して、新旧システムの上手なバトン渡しをするためにはやっぱり「システムの見える化」が必要なんです。それを実現するのが、モデリング手法です。
モデリング能力はPMの一個のスキルとしてけっこう重要なんじゃないかなと。

能登原
そうですね。最近、議論があって、そこの領域を担当するのはPMなのかアーキテクトなのか。あまりPMに負担させると、それができるPMがいなくなる(笑)ので、もう少し細分化しよういう話もあります。ちょっとその辺は難しいんですけども。でもそういうことが大事だということはPMも知っておいてもらわないといけませんね。PMはプロジェクトを成功させる上で要ですから。

細川
そうですね。おっしゃる通りです。実際のPMの方を見ていると、けっこうモデリング好きな方多いですけどね。(笑)

能登原
そうですね。でも、さっき細川さんがおっしゃったように、ちょっとずつ良くするというのは、本当になかなか出来ないですね。ダウンサイジングのために汎用機からUNIX側に戻したんだけど、そのまま落としている場合が多いですよね。これじゃあ何にもならないですよ。コードも今までのままだし、いろいろな分析が何もできない。今まで通りの問題が内在されたまま行ってしまうという例が本当に多くて愕然としてしまいました。

細川
レガシーマイグレーションも成功事例ばかりとは限らないようです。たとえば、古いCOBOLプログラムをUNIXなどのオープン環境でも動くように自動的に移植するようなケースが良くありますが、移植した後もきちんと面倒を見られないと苦労することになります。

能登原
プロジェクトの最初にそういうものを直そうという問題点を出して、問題点を解消するためにやるということを一切やっていなくて、汎用機のリース切れにそろそろなるから、とにかく下に移してしまえという安易な発想で、目的が間違っているんですね。そうすると、結局、ユーザー側から見れば何も変わっていない。ユーザーからのもっと良くしたいという希望。経営側から見てこういう数字をこういうふうにすぐ見たいという要求に答えられない。そこを解決していないですからね。
細川 そうですよね。そういうコストとリスク、長期的なメリットみたいなことのバランスっていうのは難しいですね。

能登原
ますます難しくなっています。

細川
プロジェクトが難しくなってきているのは、技術的な課題だけではないと思うのです。

最近のプロジェクトでは、ユーザー部門の調整など、人間系の問題がますます難しくなっていると思うのですが。
一個の部門だけで完結するような仕事ばかりだったら楽でしょうが、最近はそうじゃないですよね。複数の部門に関係する仕事が多くて、システムを作りながら部門間の調整をやっているんですよ。

能登原
そうですね。そういうのが多いです。

細川
なぜそうなっちゃうかと言うと、ユーザーが事務処理を手作業でやっていた時代と違って、多くの企業では、事務処理のかなりの部分がコンピュータで自動化されてしまっています。だから、システムを変えるということは複数の部門に影響を与える可能性が大きくなっているのです。
さらに言えば、業務事務の全体像をわかっている人も少なくなっているのではないでしょうか。

能登原
それに昔は紙のマニュアルもあって、業務の本質である業務ルールが頭に入っていたんだけど、システム化されてプログラムとして組み込まれると、それをもう誰も分からなくなってしまうんですよ。システムの中に本当の業務ルールが隠されているんだけど、それを整理して説明出来なくなるんですよ。

細川
ちょうど車がどんどんオートマ化して電子化してくると中身が分からなくなるみたいなものですね。もう自分でいじることがなくなっちゃう。ちょうど今のビジネスってそんな感じで、人間系とシステム系が一体化・細分化しているような状況だと思うんですよ。
そうなると、お客様のほうから、本当に業務を改善するための要件が出しにくくなってきます。

能登原
いや、出て来ないんですけど、本当は出ないとまずいんですよ。システムを作れないから。だから作るほうは非常に苦しいですよね。そういうプロジェクトは上手く行かないんですよ。

細川
おっしゃる通りです。で、どうなるかというと、システムを作りはじめてからはじめて「これは違う」「こうするべきだった」となりかねません。

能登原
もっとひどいのは「今のまま作ってくれ」というケースです。一応作るんですよ。でもテスト出来ないので、テストの前に仕様書を作ったりとか。テスト仕様書が出来ないんですよね。マイグレーションでも非常に難しいのは、本当に動くかどうかテストしないといけないのに、そのテスト仕様書が作れないということです。結局仕様書を作らないといけないという例がありましたね。

細川
なるほど。それは痛い(笑)

能登原
結局、ドキュメントは必ずいるんだけど、必要最小限度のドキュメントにしないといけないので、そこは難しいですね。あまりいっぱいドキュメントを作っても生産性が下がるので。

細川
それは難しいですね。ドキュメント過多にならずに目的指向でいかに失われた業務ノウハウを発掘するかが課題ですね。

ユーザー側情報システム部によるITガバナンスの必要性

細川努さん

細川
ところで、そういうところがアーキテクトの仕事なのかPMの仕事なのかということですが。コンサルはできないですよね、そういう仕事は。

能登原
コンサル自身はできないですね。PMのコンサルを行う場合でも、最終判断や指示はユーザー側の方がやってくれないと、コンサルが言ってもプロジェクトのメンバーは誰も言うことを聞いてくれない(笑)。PMもやっぱりユーザー、発注者側の方が立ってくれないと苦しいです。

細川
そうなんですよね。そこで、今後ますます元気にがんばってほしいのが、ユーザーの情報システム部です。皆さん本当にやる気があるし、いいノウハウを持っていてよく業務のことをご存じなんですけど、いい仕事がもっと認められて、スポットライトを浴びる存在になってほしいですね。

能登原
マイクロソフトの人たちに聞いたんですけど、その点アメリカは違うらしいですね。アメリカは企業の情報システム部門の人たちが、ちゃんと仕切って社内の仕組みの開発をきちんとするし、なんとなく日本のゼネコンっぽい存在のようです。

細川
そうなんです。アメリカではいわゆるSIerはあまりないんですよね。情報システム部の人たちが戦略コンサルなんかを使いながらシステムを作ってしまう。

能登原
社内SI部門ですね。

細川
ええ、社内の大事なシステムは自分たちが中心になってキッチリ作る。でも、日本では「ものづくりは外でやらせろ」という感じですよね。

能登原
そうですね。そうすると社内調整も大変だし、SIerのハンドリングやドライブにも苦労して、そのわりに上手くいっていないなという感じがします。

細川
こんなに変化の激しい時代だから、本来は情報システム部門が強化されてしかるべきですし、外部任せにしないで、ビジネスとITをドライブする役割としての社内PMが本当はもっともっとたくさん必要なんです。ユーザー側のPMというのが本当はたくさんいらっしゃるべきなのですが、少ないですよね。

能登原
少ないです。日本がどうしてそうなってしまったのかよく分からないですけど、以前のように社内の情報システム部が強いほうがいい仕組みができるし、運用も非常によくなるから、実はコストも安くすむのではないかなと思いますけどね。むしろ、外に投げてしまっていることでコストがかかっているし、変なシステムができてしまったと、最近感じることが多くあります。

細川
世の中の景気はよくなってきたけれど、一方でユーザーに強い情シスが少なくなってしまった。大企業なのに少ない人数でがんばっていらっしゃるところも多いです。
でも、そうなるとなかなか専門性が維持できるとは限りません。
昔はベンダーよりもOSのことをよく知っていたり、コンパイルやドライバは自分で組んじゃうとか技術的にも尖った人が多かったし、業務的にもエンドユーザーと対等に説得出来るような人がいらっしゃったと、私が見ている範囲でも思うんですよね。

能登原
確かに昔は情報システム部門が強くて、例えば、以前私が在籍した企業でも、情報システム部門に100人以上いたんです。今は10人程と聞いています。システム企画中心になったということですね。まあ、それは企業によって違いますけど。
たとえば、大手製造業でシステム部門に500人いて、システム企画部門にもまた何十人といます。それでも開発が多すぎて人が足りないんですよ。そういう企業は情報システム部門を減らしていないと思うんですけど、一方で減らしている企業も多いですよね。僕自身は、人がいないと絶対上手くいかないと思っていますけど。

細川
しかも今はシステム機能をリリースする量が昔より増えているんです。オープン系になって生産性が向上したせいかどうかわかりませんが、「数百画面を数ヶ月でリリースする」とかシステムのリリースが増えると情報システム部門がますます忙しくなります。

能登原
そうですね。それでも分かっている人がいれば保守はそんなに難しくないし、設計がきちんとできていたら、リリース自体もそんなに難しくないと思うんですよ。でも、へたくそに設計したら、もうとんでもないことになります。

細川
しかもそれを現場にちゃんと説明して、段取りして説明会を開いたりしなければならない。

能登原
本当に大変です。システム部門にしっかりしたITガバナンスがあることがやっぱり大切なんですよ。

こういう時代だからこそ、変化を楽しむマインドを

細川努さん

細川
ちょっと苦労する話ばかりしちゃったんですけど(笑)。

能登原
細川さんご自身の話からずれましたね。

細川
いやいや。それはさておき、私が言いたかったことは、私がこの世界に入ってから今まで確実に変化しているということです。今の暗い話みたいに悪く変化した部分もありますし、やはり技術は高度化しているとか、そういうプラスの変化もあるんです。ただ、ちょっと危惧しているのは、最近そういうプラスの変化があまりいい方向に行っていないんじゃないかということです。例えば、COBOLからJAVAになっても全然みんなうれしくないじゃないですか(笑)。.Netもそうです。.NetもJAVAも素晴らしですよ。でも、そんなにうれしくはないですよね。

能登原
確かに、そんなにうれしくはないですね(笑)。

細川
また大変な話になっちゃうんですけど、システム開発の世界では昔よりステップ単価の相場がどんどん安くなってきていると思うのですが、どうでしょう。
オープン技術、ツール、オフショア開発などによって、生産性があがっているのかも知れませんが、それほど楽な仕事ではないとは思います。
そう言った意味では、どんどん状況は変わるんですけど、だからって悲観的になるのではなくて、どうすればうまくできるかを工夫したいですね。「変化を楽しむ」って感じでしょうか。(笑)

能登原
落ち込んでも何も解決しませんからね。細川さんはもともとそういう資質をお持ちなんでしょうけれど、そういうふうに変化を楽しむコツってなにかありますか。

細川
そうですね…。やっぱり経済環境にしてもシステム技術にしても、または組織とかの体制にしても、今ものすごく変化が大きいと思うんですよね。そういう中で、やっぱり今までにあまり固執しないで、変化を楽しんで、自分や周囲の人にとっての新しいメリットをどういうふうに産み出そうかというように考えないと、今の時代は大変なんじゃないかな。むしろ変化を楽しみながら、前向きにその変化を自分自身または後輩たちにどう生かそうか考える。ピンチをチャンスに変えるようなエネルギーが今後も必要なんじゃないかと思うんです。結局「元気を出して頑張りましょう!」ということが大切ですよね。

能登原
先ほど、やってみないと見えてこないという話がありましたが、やってみることによって、何か見えてくるものがあり、それを新しいメリットに置き換えるチャンスにする。

細川
そうですね。ソフトウェア開発で最近よくアジャイルというアプローチが注目されています。これは俊敏にユーザーにとって価値の高いソフトウェアを開発すること等を目指したものなんです。
こうした、俊敏さはビジネスの世界でも大切ですよね。儲かる商売人は、状況判断や才覚とか。

能登原
それとも先ほどの先込め銃に固執するか。今は変化の早い時代だからこそ、アジャイルのほうにいかれる方と、先込め銃のほうにすがりついてしまう人と、二分化されていっている状態なのかもしれない。

細川
おっしゃる通り。逆に言うと、アジャイルが全ていいのかというと、そんなことはないと思うんですよね。例えばメインフレームのメンテナンスをする人がいなくなったら困りますよね。下手をすると、最近はCOBOLのほうが単価が高いと言いますからね(笑)。

能登原
間違いなく高いですね。探すのが大変ですから。また、2007年問題がありますし。

細川
そうそう。わざと変化についていかないで、昔ながらの技術に固執することも、実は変化を楽しんでいることになるかもしれません。

能登原
なるほどね。

(次回に続く)

構成 萩谷美也子

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