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2006年9月 4日

細川 努さん(4)
株式会社日本総合研究所 次世代カードシステム事業本部

細川努さん細川 努さん
株式会社日本総合研究所
次世代カードシステム事業本部
1964年中央大学法学部法律学科卒業(株)日本総合研究所において流通系・金融系システムの構築に携わる傍ら、現場においてもオブジェクト指向、データモデリング等の開発手法の普及や、アーキテクチャ設計等の確立に努めてきた。
最近は、稚内北星学園大学東京サテライト校にて客員教授として、学生にシステムアーキテクチャ論を教えている。技術士(情報工学)、システムアナリスト、システム監査技術者。

Web2.0が変えてゆくマーケティング環境とシステム

細川努さん

細川
アーキテクトって、どうも誤解されている傾向がありますよね。インフラ寄りの仕事だと言われていたりとか。

能登原
そうなんです。僕はこの前マイクロソフトのフォーラムでアーキテクトをどうやって育てるかというラウンドテーブルに参加したんです。そのときにアーキテクトのありかたについていろいろ考えました。僕が考えるに、細川さんや細川さんの部下の優秀な若手は、本当のアーキテクトなんですよ。モデルもきちんと押さえているし。

細川
確かに業務・システム機能・インフラを含めて全体像をモデリングするスキルはアーキテクトにとって重要ですね。個人的にはこういったことが大好きなので(笑)。

能登原
ERモデルもできるしオブジェクト指向のモデルもできる、インフラも強いし、ツールについても強いし。しかも、いろいろなタイプの人がいる。みんなモデリングが好きで、果敢に新しいことをしていますよね。ああいう世界をもっと盛り上げていってもらえるといいですね。

細川
とはいえ、一般的には全体像をモデリングすること自体、あまり注目されなくなってきていると思います、どちらかというと、ERPのようなパッケージとか、新技術を導入することがここ10年くらい、どこの企業でも多かったと思います。でも、企業の業務やビジネス環境をしっかり分析して、適切な情報化をすることも大切ではないでしょうか。

能登原
その時はスペシャリスト系の人たちが絶対必要ですよね。

細川
ええ、今までは、どこの企業も、ERP等を入れることによって業務の効率化に取り組んできましたが、最近は効率化だけでは限界が来ているのではないかと思うのです。
つまり、今後はビジネス環境の変化に対応して、攻めの情報化企画が必要になってきています。
例えば、今年は、Web2.0の話題がとても注目されていますが、これは単なる流行語ではなく、これから多くの企業のマーケティング戦略に影響を及ぼす流れになると見ています。
例えば、今、アメリカではインターネットの普及によって従来のマスメディアの影響力が低下して、ラジオ、そしてこれからはテレビ局の再編や売却の話が出始めているようです。つまり、企業としても、こうしたマスメディアを通じたコマーシャルにお金をかけるよりも、ネットの世界でマーケティングすることのほうが重要課題になってきているのです。Web2.0はこうした新しい時代に対応したマーケティングにとって、とても重要なのですが、こうした詳しい話については、雑誌の記事としてまとめようとしています。
で、考えてみると、こうした問題には、ERPなどのパッケージだけでは対応は難しいですよね。

能登原
それはぜひ書いてください、楽しみにしています(笑)。ERPではできないわけは、どの辺にあるとお思いですか?

細川
一つには、変化に対応するためには、パッケージの提供してくれる機能だけでは不十分だと思うのです。
例えば、今までのマーケティングは固定顧客に対してロイヤリティを高めるという話が中心でした。こうした従来型マーケティングにはCRMなどのパッケージが有効だったのです。しかしながら、先ほど説明したような、新しい時代のマーケティングではインターネット上の見えない潜在顧客に対して、どのようにしたらうまく惹きこむことができるかが課題になります。
つまり、旧世代のマーケティングは、パンフレットを配布するとか、テレビコマーシャルを流すとかに、ものすごいコストをかけていたのです。しかしながら、今後はインターネット上の新しい仕組みをいろいろ作って、新しい形でのマーケティング手段を確立するほうが効果的になりつつあるのです。例えばブログとかソーシャルネットワーク、ソーシャルディレクトリなどが現在での手段になります。

能登原
SNSですね、GREEとかMIXIとか。

細川
ええ、一見すると、こうしたものはビジネスとどうつながるのだろうと思われるかもしれませんが、インターネット上のコミュニティ手段を提供し、多くの人を惹き付けることによる威力は無視できません。
従来型のマーケティングと違って、このようなネットコミュニティへのマーケティングはとても効率的ですし、マーケティングを仕掛けた効果などを有効に分析することが可能になります。
このように、マーケティングや販売のコスト効率を向上させることによって、販売さらには製造のセオリーも大きく変わってきます。その代表例が、「ロングテール」(※今まで少数しか売れなかった商品でも、品揃えを広げれば、総量ではヒット商品の売上を上回るようになる現象のこと。)です。顧客のニーズが多様化している時代にはまさしくぴったりだと思いません?

能登原
例えば、今のお話であれば、アマゾンみたいに分かりきった商品であるとか、価格帯が比較的低い商品を売っていたのが、web2.0になることによって、もうちょっとセールスの難易度が高い商品、金額が高い商品が売れるようになるとかですか。

細川
そうですね。これからの時代は売り方が難しい商品を売る工夫も大事になってくると思います。例えば、これまでのネット販売の中心だった、書籍や音楽などは、わりと売りやすい商品でした。これからは、簡単には売れない商品をネット上でマーケティングすることも重要になってきます。例えばDIY商品は、単にインターネット上で商品をPRしても売れないと思います。例えばレンガを商品として売るのであれば、レンガを使っての花壇の作り方とか、フェンスの作り方、モルタルを使ってレンガを組みあげていくノウハウとかいろいろな情報が必要になってきます。こうした話題をガーデニングのコミュニティや専門家のコミュニティなどと共有して、そのニーズに合わせた商品を提供するのです。
こうしたマーケティングアプローチが出てくると、今のいわば卸とか小売りそれぞれの役割にもう一度見直しが入るかもしれません。例えば、卸も、単に商品流通を提供するだけでなく、商品のマーケティングに積極的に関与していくこともありうるのではないでしょうか。そういう、夢のある、日本の流通業の再生とか、考えてみたいですね。

能登原
メーカーは自社の商品しかリコメンドできなくても、卸は「これはこういう特徴があります」と第三者的に言えるわけですよね。

細川
ええ、メーカー・卸・小売が連携して、新しいアプローチのマーケティングを仕掛けていくんです。今までのような、モノと金の流れだけでなく、消費者と連携したコミュニケーションの中で商品を売るための動きです。
こうしたことは、ビジネスを知っているだけでなく、ITも熟知していないとできないでしょうね。

能登原
できないと思います。それから、前提となる枠組みそのものがグローバルになると思いますよ。例えば、開発だって中国かインドにアウトソースしていますからね。そうすると、それ用の支援システムが必要です。そうなると全然違ってきますよね。弊社のお客様も、グローバルな仕組みを日本で全部英語で作っています。それはもう手作りするしかない。

細川
そうですね。これからの時代はビジネスとITとが一体になって、知恵と工夫をこらしていくことが重要だと思うのです。ありきたりなシステム機能を提供するパッケージも確かに必要なのですが、有難みは今後は薄れていくのではないでしょうか。半分冗談ですが、そのうち、今まで数億したパッケージ商品も、そのうちパソコンショップなんかで箱売りされているかもしれませんよ(笑)。

能登原
それはありえますね。店頭に積んである(笑)

細川
ハードが高性能になり、価格も安くなってくると、ITのサービスとしての「価格」ももっと変わってくると思います。

能登原
これからだいぶ世の中変わるんじゃないですか。ASPになったり、ネットで全部できるようになったりするかも知れないですね。

細川
ええ、そういなってくると、どんどんシステムやソフトの値段は下がるかもしれません。
でも、知恵と工夫を提供するのサービスはかえってニーズが高まるかもしれません。
これから、ビジネスとITをうまく組み合わせることによっていろいろな可能性が開けてくると思うんです。
もちろん、これは簡単なことではないです。例えば、小売業はとても苦労をされていると思います。今までは「売れる商品」を店頭に揃えたら儲かった時代が続きましたが、今はそうではないですよね。スーパーなんかでも定番商品がどんどん減って、いわゆる特売商品の品揃えが増えていると聞きます。こうして、小売業の業態が変化したり、業界再編が発生したり、ITが変化するよりも、ビジネス環境の変化のほうが劇的になっているのではないでしょうか。

能登原
そうですね、そう思いますね。

細川
戦後世代の僕が言うのもなんですが、ありがたいことに、今の日本って、戦中・戦後と比べれば、夢のような豊かさですし、多くの人が一定レベルの生活ができる社会ですけれども、楽して生活できるほど甘くはありませんよね。変化の中で生き抜いていかないと。

能登原
そうなんですよ。あまり楽じゃないですよね。まあ、覚悟を決めてでも楽に生きようと思えば生きられる。300万円で生きる方法とかある。

細川
森永卓郎さん(笑)。

能登原
そうそう。彼は賢いから、どこかにしっかり資産を蓄えていそうだけど(笑)。それでもいいという人も日本には出て来ているかも知れないですね。飢えはしない。少なくともデフレであれば。

細川
こうした変化の激しさを、あまり悲観する必要はないと思います。でも従来の環境に固執するのでなく、もっと柔軟な対応をしていくほうがいいのではないでしょうか。

能登原
今、大変だ思うのは、企業にいるとどうしてもパイが広がらないという現状がある。全体のパイが大きくなっていっていると3番手、4番手でも生きていけたのが、今はパイがどんどん小さくなっているから、1番手か2番手じゃないと勝てない。生き残るために1番になろう、せめて2番になろうとするから、企業にいると大変なんだと僕は思うんです。
だけど個人から見ると、あまり競争しなくても自分の趣味で生きられるという面も一方にはある。そういう人たちは年収が300万、あるいは100万、200万でいいと思っているから、あまりがんばらないと思うんですよ。でも企業にいると、どうしても勝たないと生き残っていけない現実がある。月並みな言葉かも知れませんけども、生き方というところでも二極分化が進んでいる。

細川
なるほど。

能登原
またプロジェクトマネジメントの話に戻りますが、やっぱり昔より大変ですよね。昔、僕が情報システムに入った頃には、「7時か、じゃあ、晩飯でも食べに行くか」と言って、みんなで飯食って来てから、また会社に戻って仕事を9時、10時までして帰っていた。今は食事せずに11時、12時までやっちゃうのが当たり前になっているでしょ。これは15年前、80年代はなかった現象だなと思ったんですよ。あの頃は忙しい忙しいと言いながらもまだ余裕があったし、そんなに朝無茶苦茶早く出て来てやる必要もなかったし。時間の経過はゆっくりでしたよね。

細川
それはあると思いますよ。今の情報システム部門の方々はとても大変だと思います。
最近は、なにかとシステムの修正や新システムのリリースが多くなり、ユーザー部門との調整や説明マニュアルの作成、運用など、本来の開発以外の作業が山のように発生しています。

能登原
また、メールが出てきたということもありますね。メールでまた調整が早くなったりすると、夜中にも仕事しなければならない。昔はそんなことなかったですね。会議でちゃんと決めるから。個人の扱う仕事量ってむしろ増えているじゃないですか。web2.0の世界も良さそうな感じがするんだけど、「きっと大変だな…」と思ったりして。

細川
それは言えますよね。

能登原
プロマネは、そういう人たちも全部管理しないといけなからすごく大変ですよ。
僕は何とかして、世の中におけるエンジニアの価値を上げたいなとずっと思っているんですけど、幸いプロマネってわりと切り出してそういうのができる。すごく難しいことをしているわけですから、その人たちの仕事の価値をどうやって認知させるか。「あ、こうなりたいな」と新人や若い人を思わせるように。こういう大変な時代こそ、それが必要だと思うんですよ。

ユーザーもベンダーも幸せになるシステム開発とは

細川努さん

能登原
ここまでお話をうかがっていて、細川さんはプロジェクトの現場での視点に加えて、もともと法学部出身だからなのか、マーケティングに絡んで経営的な視点もお持ちで、そこら辺の切り替えができるタイプですよね。

細川
いえいえ、単にふらふらしているだけです(笑)。

能登原
変に狭いところにはまらないですよね。いろいろなビジョンをもたれている。

細川
単にやってみたいことがいっぱいあるだけなんで。

能登原
それも一つのポイントですね。僕はこれはたぶん、そんな細川さんの性格に影響されてのことだと思うんですけれど、細川さんが本社部門にいた時のメンバは、若手も含めて、新しいもの好きだし、しかもオープンです。あまり日本総研の中に固まってなくて、外にもみんな出て行っていろいろやっている。お話しても、わりと皆さんフランクですよね。

細川
確かに、立場をわきまえないかも(苦笑)。

能登原
いやいや、ベンダーさんの中には、あまり外に出てきてくださらない方も多いし。

細川
うちには、もう横に座っていたら、口をふさいでもしゃべりまくるようなのがいますから(笑)。

能登原
見ていて「楽しそうだな」と思っていたんですよ。

細川
ありがとうございます。いや、実は、僕って恵まれていたんですね(笑)。

能登原
対談でお相手をしてくださった方、なぜかみんな楽しそうなんですよね。

細川
ええ、そうですね。前回の中山さんも、ご苦労されているはずなのに楽しそうですよね。

能登原
細川さんもそういう感じですよね。

細川
すみません。その通りです(笑)。好きにやっていますから。

能登原
最後にお決まりの質問なんですが、細川さんがプロマネとして大切に思われていることはなんでしょうか。

細川
やはり表面的な目的じゃなくて、根本的な目的を見失わないことですね。お客様に言われたままじゃなくて、やっぱり頑固一徹、信念を持ってやるみたいなところは大事なんじゃないのかな。

能登原
仕事をやる時の信念ということで、細川さんがいつも考えていることがあるんですか。

細川
そうですね。われわれはシステムが動けばいいと思うじゃないですか。でも、システム作らないほうがいい場合もあるんですよね。電卓を叩いて入力をすればいいようなことなんて、別にロジックに埋め込む必要なんてないですしね。あとは、何が何でもコンピュータ化してユーザーが幸せになるかというとそうでもないと思います。

能登原
そのとおりです。オペレーションでカバーしたほうがいいこともありますね。

細川
僕としての理想を言えば、過剰な情報システム化でなく、人を生かせるシステム構築ができればうれしいですね。でも、現実は、あまり使わない機能まで作りたがるケースって多いですよね。

能登原
そうなんですね。つい作りがちになりますね。

細川
必要以上にシステムを作ると、あとのメンテナンスも大変です。そういうのって、高速道路の建設と一緒ですよね。高速道路造ったのはいいけど、毎年膨大なメンテナンス費が必要になるけど、結局あまり交通量がなくて、熊やイノシシしか通らないとかね。

能登原
ベンダーはどうしてもそうなりがちですよね。あまり生産性のいいものは、ベンダーにとっての採算性がよくないから(笑)。あまりにもデータベースがきれいすぎてコードの量が少ないと儲からないんですよね。ぐちゃぐちゃの設計のほうが、コードをいっぱい作って、お金が請求できる。困ったことですが、そういう構造的な問題がこの業界にはあるんです。

細川
もちろん、品質の高いソフトウェアを、低コストで作ることは大切です。しかしながら、結局はそれがユーザーのためどれだけ有効なのかという視点を忘れてはいけないと思います。
従来、システム構築の現場は、大量のシステム機能を、無理なスケジュールで毎日残業しながら、納期を守って作り上げる仕事が多かったのですが、それだけでは、ユーザーのためにも、システム技術者にとってもあまり良くないのではないでしょうか。

能登原
なるほど。細川さんの話を聞いているといつも刺激されます。

細川
いや、そうは言ってもこうした現状を変えるのは大変ですよね。決してキレイ事だけでは、物事は変わらない。でも理想を失うと、これからはもっと厳しい現実があるのではないでしょうか。

能登原
僕はずっと細川さんは横串の技術よりのアーキテクトの部分がメインでやられているのかと思っていたんですけど、その前にやはり現場をやられていたんですね。現在手がけられているのは大変なプロジェクトだと思いますけど、今もまた開発の現場でいろいろお考えになっている。そのお話を聞けてとてもうれしかったです。

細川
いや、現場でも好き放題やっているんで。

能登原
やっぱり楽しそうじゃないですか(笑)。本日はお忙しいところありがとうございました。

(おわり)

構成 萩谷美也子

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