プロジェクトマネジメント、プロジェクト管理におけるポータルサイト

HOME > プロマネへの道 > 塚田 雅一さん(4) 株式会社キリンビジネスシステム

2007年1月26日

塚田 雅一さん(4)
株式会社キリンビジネスシステム 経営企画部

塚田雅一さん塚田 雅一(つかだ まさかず)さん
株式会社キリンビジネスシステム
経営企画部 担当部長
キリンビール株式会社入社後、システム開発部(当時)に配属。
ビール製造計画システムの開発・運用を担当。
RADツール導入においては、開発標準化、運用ルールの整備を担当。
1998年株式会社キリンビジネスシステムに出向。
主にグループ外(外販)のシステム開発プロジェクトに従事。
2003年より経営企画部門を兼務し、プロジェクト品質向上活動、SE教育企画・実施などを担当。

最重要視するのは良質のコミュニケーション

塚田雅一さん

能登原
ところで、塚田さんには、挫折の経験や失敗体験はありますか。以前どこかにも書きましたが、実は私がDOAを始めたきっかけというのは、失敗体験なのですよ。DOAでやらなかったがために、パフォーマンスが全く出なかったプロジェクトがあったのです。「自分の失敗で、会社に損害を与えてしまった」と後悔し、それからDOAを勉強して取り入れて、プロジェクトが成功するようになりました。そのときに「やはり、失敗は成功の母なのだな」と強く思ったのです。塚田さんは最初からDOAでやられているので、そういう失敗はなかったかもしれないですが。

塚田
いえ、挫折や失敗はしょっちゅうしていますよ。幸い大失敗はないですが、こまごましたところでは日々、反省です。プロジェクトが立ち上がってから「失敗した…」と思うことも多かったですね。その失敗を次にどう生かすか、常に反省し、「次ではこうやろう」と改善策を取り入れました。それによって少しずつプロジェクトがブラッシュアップされていった感じです。最初のお客様には申し訳ないのですが、だんだんレベルが上がっていきました。
どういう失敗かといいますと、例えば、後々になって「言った、言わない」という食い違いが出てくることがよくありますよね。私も一度、合意の仕方が甘くて、やはり「言った、言わない」の話になってしまったのです。そうならないために、「どこが悪かったからそうなったのか」を考えて、対策を立てることにしました。しっかり対話をすべきだったポイントを洗い出して、「議事録を作ったら、次の回でそれをレビューして、合意を取ってから打ち合わせに入る」とか、「仕様書で差し替えるだけではなくて、日付をつけて記録すれば、どう変わっていったかという経緯が見える」という手を打つことにしたのです。小さな改善ですが、けっこう「言った、言わない」を抑えることができるし、私もメンバーも、過去の経緯を思い出せるようになりました。このような小さなことでも、なおざりにしていると、積もり積もって大きな失敗になります。そういうところを少しずつ改善していきました。

能登原
おそらく皆さんリーダーを任せられたあたりから、プロジェクトマネジメントについて真剣に考え始めると思うのです。リーダーとなると、PIMBOKに書かれているような、品質、時間、調達、コストなど、いろいろなことを考えないといけなくなります。その中で、自分で勉強していくポイントはここだと思って気をつけている点はありますか。

塚田
私がリーダーとしてプロジェクトに参画したのはKBSに移ってからですが、その中では、品質に一番注意していたかもしれないですね。でも、体系だってPIMBOKを読んで、次のプロジェクトに適用しようということは、基本的にはなかったです。あとで読み返して、「自分が今まで頭の中で考えていたことが、PIMBOKにはきれいに書かれているものだな」と感じたというのが正直なところです。「ああ、そうそう、これは大事だよな」とか、「これはやっていたけれど、こっちはちょっと抜けていたな」とか、あとから読んで確認する感じでした。

能登原
なるほど、実践が先だったわけですね。今までやられてきた中で、先ほど伺った段取り以外では、人間系も含めて「プロジェクトマネジメントでここが大事だ」というポイントは何だとお考えですか。

塚田
コミュニケーションですね。そこが一番重要だと思います。プロジェクトがどんなメンバー構成になるのか、ふたを開けてみるまではわかりません。特に体制面で初めてのプロジェクトだと、ユーザーの担当者も、協力会社の担当者も、どんな方が参画するかわかりませんし、その方々と、どうお互いを理解し合い一つの目標に向かっていくかという部分がとても大事ですね。何か困難な局面が発生したときに、一緒に乗り越えていけるような気持ちができるかどうかが、プロジェクトの成功には非常に大きなポイントです。そこが分断されると、必ず失敗の道へとひた走っていきます。

能登原
そのとおりだと思います。コミュニケーションは仕事の場だけに限ったものではありませんけれど、いわゆる「飲みニケーション」は、塚田さんも得意なほうですか。もともとはキリン本社にいらしたわけですし。

塚田
ええ、プロジェクトの立ち上げのときには、必ず「飲みニケーション」で親睦を図ります。それがキリングループの強いところかもしれないですね。

能登原
私も以前にお仕事をさせていただいたときに、お話を聞いたのですけど、皆さんとにかくビールをものすごく飲みますよね。びっくりしました。正直言って、量が半端ではないです(笑)。しかも、別のお酒に替えずに、ひたすらビールを飲んでいらっしゃる。

塚田
そうです。あまり浮気せず、ビールをひたすら飲みます(笑)。

能登原
だいたい皆さんそうなのですか。

塚田
ええ、もう刷り込まれた感じです(笑)。これも最初が肝心で、ずっと飲み続けていると、違和感なく、おなかも別に満たされることなく、飲み続けられます。慣れですね。

能登原
すごいですね。それも含めて、外から拝見していると、上司の方と現場の方との距離感が近いような印象を受けました。

塚田
そうですね。そこはすごくよい社風というか、よい関係が保たれていると思います。

能登原
そのことは、私も社長さん以下、皆さんにお会いして思いますね。

塚田
トップ側からも近づきやすいようにしてくれて、何でも相談しやすいです。トップもいろいろな情報がすぐに入って来るので、対策をとるのが早いという利点もあると思います。

能登原
コミュニケーションがよいと、生産性が上がります。問題が起きてもすぐに解決できるし、常に連絡を取り合っているので、本来なら一週間後の会議で話すことが今日話せる。それで生産性が変わるのでしょうね。

塚田
それに、プロジェクトの中に、どれだけ笑い声や笑顔があるかということで、雰囲気を測るというのも、けっこう重要です。プロジェクトが危なくなってくると、笑顔が消えていきますからね。

能登原
笑顔が多いかどうかは、プロジェクトの状態もありますし、そのチームの文化のようなところもあるようです。トップや上の方が、コミュニケーションがうまくて明るい方だと、そのプロジェクト自体に、なんとなくその明るい性格が移るということもありますし。

塚田
そうですね、それもありますね。

能登原
プロジェクトは技術も大切ですけど、やはりそういう雰囲気も大切ですよね。

塚田
やはり人が作るものですから、結局は、その両輪がうまく回っていくことが大切なのだと思います。

「まず相手の立場から考える」という基本を大切に

能登原

能登原
私がもう一つお聞きしたかったのが、仕事をする上での信念です。私なども、だんだん歳を取ってくると、「自分は何のために仕事をしているのだろう」とか、「どういう信念でやっているのだろうか」と振り返って思ったりするのですけど、塚田さんはいかがですか。

塚田
信念といえるのかどうか分かりませんが、自分よりも、まず相手のことを考えることが多いですね。

能登原
自分よりまず相手を優先する?

塚田
いえ、優先というか、まず相手にとって最もよい回答の仕方とか、仕事の仕方を考えて、そのために自分は何ができるかを考えていくことが大事かなと思います。私も100%できているとは限らないのですけども。

能登原
それはどなたかお身内の方か、学校の先生に教わったのですか。

塚田
主に祖父に教わったことかと思います。小さいころから「まず人の気持ちを考えなさい」ということを、祖父に学びました。なにかのときに、ちらっと頭に浮かんだり、「いや、これでは相手のことを考えていないから、まずいな」と思ったりします。とくにリーダーになると、常にメンバーのことを考える必要がありますから、その気持ちはさらに強くなってきました。メンバーの健康管理にも気を使います。「ちょっと顔色がすぐれないけれど、どうしたんだろう」「それを緩和するためには、自分は何ができるんだろうか」とか。実際にはたいしたことはできないのですが、「何かやってあげないと」と思うことはありますね。

能登原
そういう気持ちがないと、本当のコミュニケーションは成り立たないですよね。
それが自然にできるかというと、なかなか、できそうでできないことなのですが。

塚田
難しいとは思いますが、これもひとつの勉強ですね。今回はやり方がまずかったかなと思ったら、次はこうやってみようとか、工夫が必要です。

能登原
塚田さんのお祖父さまは教育者でいらしたんですか。

塚田
いえ、ずっと一緒に住んでいたので、言葉だけではなくて、祖父の姿というか、言動から教えられた部分があります。ですから印象が強いし、頭の中に自然に入っていったのですね。

能登原
そうですね。言葉で「ああしろ、こうしろ」と言われるより、実際の言動から教えられるほうが強いですね。コミュニケーションはすべての基本ですし、そのためには相手のことを考えていかないとうまくいきません。そういうことは非常に大切です。

塚田
私が祖父から教わったことが、これからもいろいろな仕事の中に生かされていけばと思います。

能登原
今おっしゃったことはコミュニケーションの基本ですから、地味なことの積み重ねですが、それが5年、10年と経ったときに、大きな差になるのでしょうね。

塚田
5年、10年というのは、けっこう長いですからね。細かいことでも積み重ねれば、かなり大きな力に変わると思います。

能登原
最近私が非常に気になっていて、やはり重要だと改めて思っているのは、「基礎」や「基本」、「原理原則」という言葉です。例えばDOAも、システムを作るとき、特に業務アプリケーションの場合は、基本はデータですし、そこが一番大切です。それからPIMBOKには、プロジェクトマネジメントについての基本や原則しか書いてないですよね。先ほどの塚田さんのお話の「人のことを思いやる」というのも、やはり基本です。そこが最も大事だと思います。

塚田
そうですね。そのベースがしっかりしてないと、なにか上に積み上げても崩れてしまいますから。

能登原
そういう面では、塚田さんは非常にしっかり基本を積み上げられていると思います。お話されていることは非常にシンプルなのですけど。シンプルだからこそ強いのだという気がしますね。
ITの世界も、うわべの技術はいろいろと変化が激しいし、このところの景気の変動で波風もありますから、どうしてもみんな卑近な変化に一喜一憂してしまうところがあります。でも、本当はそこではない、原理原則のところで、きちんとやらないといけませんね。

塚田
まさにそうですね。ベースは変わらないということに気付いて、しっかりとやっていくということが、今最も重要かと思います。

能登原
私は今日初めて塚田さんとお会いしたのに、こんなに話し込むことができて、本当によかったです。ありがとうございました。

塚田
こちらこそ、ありがとうございました。

(了)

構成:萩谷美也子

↑ このページの先頭へ