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2007年6月 8日

木村 勝さん(4)
住友化学システムサービス株式会社 技術部 部長

木村 勝さん木村 勝(きむら まさる)さん
住友化学システムサービス株式会社
技術部 部長
1985年、法政大学電気工学科卒。同年4月 沖電気工業(株)に入社。
都銀/地銀の営業店システムの開発に従事。
1991年住化インフォテック(現 住友化学システムサービス(株))に入社。
工場システムの開発/運用に従事。
1996年より住友化学様R/3導入に従事(サプライチェーンを担当)
2001年よりR/3インフラ構築に従事。
2004年より技術部にて、ネットワーク再構築、セキュリティ基準/IT標準の策定などを担当。

R/3の部分導入から全社展開へ

木村勝さん

能登原
私は以前、協和発酵の情報システム部の方と対談させていただいた時に、「実はパッケージが、一番イテレーション開発に向いている」と言われました。パッケージなら、すでにシステムができているので、それをユーザー側にぱっと見せて感覚をつかんでもらって、どんどん直していけばよいから、イテレーション開発向きだと言われたのです。木村さんも当時は、そういうやり方をされたのですか。

木村
ええ、同じことをしましたよ。カスタマイズしたシステムを「こういう感じでやるのですよ」と、どんどん見せながら、「じゃあ、どうする?」というのを決めながら進めました。

能登原
見せた中で何か変更があれば、次の時に直して、それがまたマスターになったり何かの設定になるわけですね。「じゃあ、今はこのバージョンいくつね」という感じで(笑)。

木村
パッケージを導入するというのは、そういうことだと思います。ERPとなると規模が大きいので、大変ですが。

能登原
2000年で一応一区切りがついたそのあとも、ずっとR/3にかかわられたのですか。それとも、また別の開発に行かれたのでしょうか。

木村
いや、そのあともR/3でしたね。2000年にいったんプロジェクトが終了したので、次に住友化学全社に展開するというプロジェクトに入りました。私は大阪工場サプライチェーンの担当ということで、大阪工場で同様のやり方をしました。それを2001年の4月までやっていました。
最終的には住友化学と三井化学が統合するということで、そのプロジェクトはそれで一旦終結し、2001年5月から三井さんとの統合システムの構築プロジェクトに入って、そこでは僕はインフラの担当になり、サーバー等の環境構築を担当しました。

能登原
ああ、そこからインフラのご担当になったのですか。統合ですから向こうの会社のインフラ担当と話し合いをされるのですよね。ワーキンググループを作って、という感じになるのですか。

木村
そうです。住友化学と三井化学さんのインフラ担当責任者の方がリーダーになって、両方の人たちが検討して決めるという形です。でも、残念でしたが最終的に、2003年3月には、両社の統合の話は白紙に戻りました。

能登原
1年くらい検討されていたのですね。

木村
ええ、システムの苦労といいますか、会社を一つにするというのは、なかなか大変だなと思いました。
2003年4月からあらためて住友化学の全社の展開が始まり、2004年4月にカットオーバーしました。

能登原
それまでは、ずっとSAP、R/3をやられていたのですか。

木村
そうです。

能登原
もうSAPに関してはスペシャリストですね。エキスパートというか。

木村
どうでしょう(笑)。一応、管理はしましたが、もとからインフラをやっていなかったために、よく分かっていない部分がありますけれどね。まあ、「何となくこうやるのかな」というのは分かりました。

能登原
全社展開はどんな感じでしたか? 私のイメージでは、まず会計をやったあとに、先ほどおっしゃっていたサプライチェーンであるとか、その周辺の部分をやるというものなのですが、全社展開というと、どこまでが含まれるのでしょうか。

木村
経理と生産、販売も購買も含めて全部です。

能登原
それはすごいですね。一度にリプレースできるのですか。

木村
一度にしました。もう、95、6年からずーっとやってきましたから、7年位かけてやっと完了できました。

能登原
今回弊社が標準化のお手伝いをして、プロジェクトマネジメント標準を作りましたが、そこで「けっこう運用業務ではいろいろ手直しがでますよ」とおっしゃっていましたよね。それはR/3のことですか。

木村
いや、他も含めてです。基幹はR/3ですが、他に動いているシステムもありますから。

能登原
周辺にも、まだスクラッチで作らないといけないところもあるのですか?

木村
生産系のシステムなどに、まだありますね。

新しく作られた技術部へ異動

木村勝さん

木村
2004年に全社展開がカットオーバーして、2005年くらいから今の技術部というところで仕事を始めました。

能登原
「そろそろ新居浜に帰れるかな」という感じはあったのですか。

木村
残念ながら、そんなことはありませんでした。R/3の全社展開が終わったときに、会社全体の技術を見る部署として新しく技術部を作ったのです。ですから、これからということで、とても帰れません(笑)。

能登原
でも今もまだ、向こうにも工場系のシステムの面倒を見ている方がいらっしゃるのでしょう?

木村
それはいます。昔はそこにメインフレームがあっていろいろやっていましたが、でも、もうR/3をやって全社で統合してしまいましたから、そこで面倒をみることも少なくなりました。

能登原
R/3なら端末だけとか、そういうことになるのですね。

木村
あとは生産関係の小さいシステムですね。

能登原
それでは人数がだいぶ違ってきますね。
今は技術部の中で、どういうものを中心にやられているのですか。標準化もひとつの大きなテーマであると思いますけれど。

木村
今はセキュリティーと標準ですね。やはりグローバル展開ということで、海外の関係会社も含めて、また、SOX法の内部統制がキーワードとしてあって、それらを含めて標準を展開するというのがメインの仕事です。去年は当社の業務の標準化をするということで、ITIさんにもお手伝いいただいて、プロジェクト管理などを整備しましたが、今まではいろいろな案件があって、管理自身もごたごたしていました。
今はちょっと落ち着いて、整理をきちんとした上で、みんな同じ手順の下で、確実に仕事をして品質を担保できるような仕組みを、4月から運用をスタートさせるところです。それができると、さきほど言った技術を見る部分の話になります。
僕はまず「情報」と言っているのですけども、仕事を進める上で必要な情報にはいろいろあると思います。技術的な情報もあるでしょうし、過去にやったプロジェクトの経験を次に生かすための情報もあります。そういったものをうまく次に伝えるような仕組みを作ろうとしています。われわれの部の中期計画が3年スパンであるのですけど、それがひとつの課題ですね。

能登原
私もグローバル展開のお話は、教育の関係で耳には入るのですけど、親会社さんは、今後相当海外展開をされていくのでしょうか。例えば、何年後かには海外の比率を50%にするとか、工場もこのくらい増やすとか、何か具体的な計画があるのですか。

木村
現状、売り上げでいくとほぼ半分くらいは海外になっていますし、人的構成もそれくらいになってきていると思います。
これからそうなるから対応するというのではなくて、もう今そうなってしまっているのです。だから早くやらないと(笑)

能登原
「早くしなさい」というプレッシャーもあるわけですね。

木村
ええ。一昨年くらいまでは、うちの会社でも海外出張は非常に珍しいことだったのですけど、去年くらいからは、ごく普通の感覚になっています。特に中国、シンガポールは近いですから、よく行ったりしていますね。

能登原
工場も営業所も中国をはじめとして、海外にたくさん展開されているのですね。
今後システム化する場合、それはもう現地で作るのですか。それとも日本で作ってメンテナンスも日本なのでしょうか。

木村
今までは、現地でいろいろ作っている形でした。でも、そうなると統制もとれないので、ひな形となるような標準はきちんとこちらで作って、「現地でやる時は、これを守ってやりましょう」ということを展開しようとしているというのが、まさに今ということになります。

能登原
それでは標準を英語に直して、さらに中国では中国語に直さなないといけないですね。

木村
そうです。

能登原
なるほど。グローバル人材が必要になりますね。

木村
ですから、今回インドに研修生として社員を派遣したわけです。

能登原
案件としては、すでにある海外拠点のシステムの強化もあれば、運用のクオリティー向上も必要でしょうし、また新しい拠点を広げていくケースもおありでしょう。

木村
ありますね。海外に新しい会社を作ろうとした時に、必要なものをすべて、インフラのネットワークからメールの環境から全部そろえていかないといけないですから。

能登原
それに伴って、セキュリティーの問題もあります。やることはいくらでもありますね。

木村
そうですね。できるかどうかは別なのですけど(笑)。

能登原
しかもシステム回りで、現地の方々との調整もありますし。

木村
その辺がまだよく分からないというか。日本のようにはいかないでしょうから。

能登原
今後、木村さんも海外出張の期間が増してくる感じなのでしょうか。

木村
どうでしょう。英語はあまり得意ではなくて。去年は、他に適当な人間がいなくて、僕が、中国や台湾等に行かせてもらいました。今後はインド研修のメンバーに、どんどん海外に行ってもらうつもりです。

能登原
そうですね。語学の問題だけではなく、違う文化を背負った者同士で話をしていくとか、確認しあうとか、研修生の皆さんはその辺りのスキルも含めてのコミュニケーション能力を身につけて帰ってきていると思います。

木村
グローバル人材には語学スキルだけではなくて、そういった意味での向き不向きがあるでしょうしね。研修生の今後に期待しています。

能登原
本当に、木村さんの部署が扱われているものが、どんどんどんどん大きくなっていくというか、目配りしないといけない範囲がここ数年でとんでもなく拡大しているようですね。

木村
ええ、急激に広がった感じがします。

能登原
技術部としての課題は、今のところそれだということですね。さらに技術的な課題として、今後、これをやっていかないといけないということは何かありますか。

木村
やはり繰り返しですがセキュリティーでしょう。範囲が拡大していくということは、その分、リスクも高まっていくということです。リスクをヘッジしないと拡大できないということになります。両方合わせ持ってこそ技術的な対策も打てるし、組織や教育も含めてちゃんとできる体制にしないといけないです。事故があると怖いですよね。

能登原
最近は一瞬にして企業の信用が失われますから。何百万件の個人情報漏洩とか、最近もありました。

木村
結局は、社員の誰かが悪人になりきって、「何としてでも情報を持ち出してやろう」と思えば防ぎようがありませんね。

能登原
それはもう技術だけでできる世界ではないですね。

木村
そう、だからこそ大変ですよ。

立場の違い、時代の要請によって変わってくる「仕事のテーマ」

木村勝さん

能登原
でも、こうして改めて伺ってみると、木村さんもいろいろなことをやられていますね。私が今回お聞きしてビックリしたのは、最初、金融系をやられて、そのあと工場の仕組み、そのあといきなりR/3の世界。そのあと、ネットワークも一部やられたでしょうし、今度技術部に来られたわけで、経験としては偏っていなくて、非常にバランスがよいことでした。

木村
自分でも深堀りはしていないような気がするのですけど、バランスはいいのかなと思います。

能登原
スキルもいろいろ経験できるし、プロジェクトに入っている各担当者の気持ちがけっこう分かりますよね。

木村
分かりますね。実はインフラをやる前は、「インフラって楽でいいな」と思っていたのですが、違いました(笑)。

能登原
この間、お客様とお会いしているときに話題になったのですが、インフラはかつて他の技術者から「お客に文句を言われないところだからいいよね」(笑)と言われていたらしいです。でも最近インフラの範囲も広がってきて、みんなからいろいろ文句を言われるようになってしまい、今インフラは大変なのだそうです。

木村
大変ですよね。インフラは変わりますし。でも、再構築のときにも止めることはできず、普通に動いて当たり前とされます。あまりほめられる場面がないですね。
でも担当している人たちは、やはりインフラが好きで一所懸命やっているので、その辺は、ちゃんと評価してあげないといけないと思います。「動いて当たり前」でやられると、なかなか厳しいですよ。

能登原
木村さんは、かつてメーカー側のお立場でしたから、メーカーの気持ちもわかると思います。今は発注側に近いじゃないですか。ユーザー企業の情報システム部的なお仕事だと思いますが、メーカーとはどの辺が違いますか。

木村
仕事として共通しているのは、お客さんの要求に応えることです。メーカーの時は、「こんなシステムはこんな仕組みで、こんな設計書の通りに作る」というのが仕事でした。でも、こちら側に来ると、お客さんの要求は「業績を上げるために」とか、大元はそういうところになります。

能登原
ああ、漠然としているわけですか。

木村
投資対効果を求められるというのが根底にあって、それを実現するためにどう考えるかが問題ですから、難しい世界にきたなと思いましたね。「言った通りのことを作りました」ではもうダメで、逆に提案していく必要があります。今はおそらくメーカーさんもそうだと思いますけど、「これをやることでコストメリットがあると思われます。その根拠は…」と提案していくようなことが今は主になりました。

能登原
それはある面でいうと、より上流の仕事をするということですね。

木村
そうですね。メーカーも今は、同じことを要求されるようになりつつあると思いますけれど。

能登原
ええ、メーカーも徐々にそうなってきています。

木村
でも、われわれはよりお客さん側に近いので、業務をよく知っているのだから、よりよい提案にならないといけないはずです。

能登原
それは当然言われるでしょうね。

木村
以前に比べると、ITが経営の中でもコアな部分にだんだんなりつつあるので、そこにどう応えていくかというのが大変です。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

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