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2007年6月26日

木村 勝さん(5)
住友化学システムサービス株式会社 技術部 部長

木村 勝さん木村 勝(きむら まさる)さん
住友化学システムサービス株式会社
技術部 部長
1985年、法政大学電気工学科卒。同年4月 沖電気工業(株)に入社。
都銀/地銀の営業店システムの開発に従事。
1991年住化インフォテック(現 住友化学システムサービス(株))に入社。
工場システムの開発/運用に従事。
1996年より住友化学様R/3導入に従事(サプライチェーンを担当)
2001年よりR/3インフラ構築に従事。
2004年より技術部にて、ネットワーク再構築、セキュリティ基準/IT標準の策定などを担当。

仕事の流儀、マネジメントの勘所

木村勝さん

能登原
技術部のミッションそのものもたいへんですし、部長というお立場ともなれば、責任も重いですね。それを遂行していく上で、あるいは、これまでの仕事を通じて、これは絶対にはずせないという仕事のやり方とか、木村さんなりの信念はなにかおありですか。

木村
まず「やる」ことです。

能登原
まず「やる」?

木村
とにかく、やってみる。やらないと分からないことはたくさんありますから。やらないうちに、ああだ、こうだと悩みすぎずに、とりあえずやって、それから考えることです。さらに、仕事は自分のところで完結するのではなく流れるものですから、次にそれを受け取る人がどんな仕事をするのかを知った上で、自分の仕事をするということです。それが僕の仕事に対する考え方かもしれないですね。

能登原
理論にこだわりすぎて机上の空論になるのではなく、とりあえず、なんらかのやり方でやってみようということですか。

木村
そうです。今は、システムそのものや、それをめぐる状況が非常に複雑なので、考えても仕方がない部分もあるのです。ある程度まで考えたら、あとはやってみるしかないと思います。

能登原
そうですね、ある程度まで考えたら、そこで決断する。

木村
どのレベルで行動に移すのかは重要ですが、スピードも重要ですので、あまり考えている時間はないかもしれないですね。

能登原
もうひとつの、次の仕事をする人のことを知るということは?

木村
次を知るというのは、仕事の全体の流れを頭に入れた上で、「自分たちがこれをやったあと、この仕事はどう転がっていくか」というのを考え、次の人がやりやすい形にして仕事を持っていくということです。それをやれば、仕事がスムーズにうまく転がるのではないかと思っています。だんだん仕事が細分化する方向にありますから、担当者が「私の範囲はここまで」と勝手に決める傾向があって、仕事に隙間ができて滞ることが多いのです。それがないように、次を知るということが大事なのではないでしょうか。
技術部は間接部門として、部員には「現場を支援する立場として、相手(性格、業務)をよく知った上でやるように」と言っています。

能登原
今おっしゃったことは、かなりマネジメントの核心をついたお話ですね。木村さんが今、プロジェクトマネジメントについて考えられていることは、そのほかにどのようなことがありますか。

木村
プロジェクトに参画しているのはどんなメンバで、それぞれ何を考えているのかというのは、いつも気にするようにしています。「やる気をそがないようにどうすればいいのか」を考えていることが多いですね。

能登原
メンバ一人一人が何を望んでいて、何をやりたがっているのかを、よく聞いて捉えるということでしょうか。

木村
そうですね。みんながやりやすいように持っていきたいです。最初のほうでもお話しましたが、メンバに「やらされ感」を持たれてしまうとだめなので、「これをやることで次にこうつながる」といった目的意識をなるべく持たせたいと思っています。

能登原
それは職人気質というか、「自分で考えてそれをやるように仕向ける」ということに通じますね。

木村
そうかもしれないですね。

能登原
私もよく考えるのですが、その人のやりたいこと、好きなことをなるべく優先すると、どうしてもみんな好きなことがあるので、その余白というか、隙間の部分が余ったりしますね。誰もやりたがらない、でも、それもやってもらわないといけない、という仕事が残ります。そういう仕事へのモチベーションはどうやって高めますか?

木村
ひとつには、「ほめる」ことでしょうね。

能登原
その人をよく見ていると、自然にほめるところが浮かび上がってくるのでしょうか。

木村
と言いますか、ほめて伸びそうな人とそうでない人は、だいたい分かります。それで使い分けていますね。

能登原
確かに、ほめようがほめまいが勝手にやる人間と、ほめるとよくやってくれる人と、ほめても変わらない人がいますね。

木村
このごろは、厳しく言って伸びるタイプは少ないです。

能登原
最近は、子どもたちもそうですね。ますます、ほめることが大事になってくるかもしれません。

きつい状況でも、優先事項を見失わない

木村勝さん

能登原
お話をうかがっていると、木村さんは非常に淡々と、物事に動じなさそうなイメージですけれども、もう一歩でパニックになりそうだったとか、そういうご経験は?

木村
最初にメーカーにいたころにはありますよ。ずっと設計して作っていたのですが、どうしてもパフォーマンスが出なくて…ある期日までにパフォーマンスを出さないといけなくなったことがありました。でも、そういう急いでいる時の仕事というのは、品質がよろしくないのです。どうしても間に合わなくて、申し訳ないですけど期日を延ばしてもらいました。あの時が一番、大変だったというか、失敗したときでしたね。

能登原
お気持ちとしては焦りがあると思いますが、木村さんはそのようなときにも、あまりバタバタしたり、アタフタしたりなさらない感じです。

木村
傍から見てどうかは分からないですが、そのときには、僕はとにかくずっと仕事をしていました。延ばしてもらった以上、やるしかないので。

能登原
どうしたら、そのように落ち着いて対処できるのでしょうか。

木村
直前になるとどうしてもアタフタするので、直前より前に、これはだめだと思ったら切り替えます。あきらめが早いのかもしれません。

能登原
早めに見通しを立てて、計画を変えるわけですね。プロジェクトリーダーやPMにとって、見通しを立てるのは大事です。早め早めに見通しを立てる。「このままいったらまずいから、ここで手を打っておこう」という判断が、PLやPMの奥義でしょう。

木村
こういうIT関係の仕事だと、最初はやるべきことが曖昧なまま始まりますから、始まったとたんに、やるべきこと/やりたいこと混在で手いっぱいになります。ですから始まったら、今度は何を捨てていくか考えることだと思います。一番守るべきものはスケジュールだとしたら、とにかくいらないものを切っていきます。
でも自分では、けっこうアタフタしながらやっているつもりなのですけど(笑)。

能登原
見えないですね(笑)。

木村
そうやって切っていったとしても、納期が近づいてくると、やっぱりアタフタとしている時はありますよ。

能登原
最後までやりきるというのは、この業界にいると当たり前です。絶対やりきって、それを積み上げないと信頼に結びつかない世界です。どんなレベルであろうと、やりきったことにしなければならないという難しさはありますね。

木村
そうですね。この業界は納期が非常に重要です。納期を延ばすにしても、「ここまで終わりました。あとの残りはこれです」と、うまく話しながらやることを心がけています。

能登原
途中で話す、交渉するというのは大切ですね。

木村
先方が納得できればいいわけなので。そのときの言い方がかなり重要ですけど。

能登原
そういうことを自然にやってこられたのは、すばらしいですね。

若いときに自分で考え、実行したことが糧になる

木村勝さんと能登原

能登原
木村さんはこの業界に入られて、何年目になりますか。

木村
22年です。

能登原
今までのご経験から、若手の30歳くらいの人に、何か「こうやったほうがいいよ」というメッセージが何かありましたら。

木村
さきほどの言葉につきます。「とにかく、やってみて下さい」。特に20代は、あまり考えなくても、まずやったほうがいいかもしれないですね。

能登原
最近20代後半くらいで、文句が多い人間が多いですが、あれは何なのでしょうね。
理屈が多くて、守りに入りがちなタイプが以前に比べて増えたように感じるのです。「四の五の言わずにやってみろ!」といいたくなる(笑)。

木村
それはあるかもしれません。それについては、人事評価制度も関係しているかもしれないと思います。個人の仕事の範囲を明確に定義し、その中で評価をするというシステムを導入しているところもたくさんありますからね。そうするとどうしても、守りに入りたくなりますから。

能登原
そうですね。評価制度のせいもあるかもしれません。それから、ちょっと情報過多になっていて、自分が経験もしていないのに分かった気になっているのかもしれないと思います。

木村
今の世の中、そうなりがちですね。逆に、だからこそ今は、文句を言うより早く、どんどんいろいろなことをやったほうがいい時代ですよ。やることの範囲が広いですし、経験が重要なので、若い時は、とにかくやらないと。

能登原
そうですね。経験せずに年をとってから苦労するよりも、若いうちに経験して苦労しておいたほうが絶対にいいです。それが一番の財産になります。

木村
そうですよ。そのときにも、上から言われてやるだけでは「やらされ感」があったら、プロジェクトがちゃんと終わっても、何となくこうしっくりこない。やっぱり、自分がやろうと思ってやって、それなりに成果が出たら、自分の考えにも自信が持てると思うのです。だんだん年をとっていくと、考えることの比率が上がってきます。自分で考えた上で何かをやって、「成功したか失敗したか、今回はどうだった?」と、また考える。そうして積み重ねていけば、必ず糧になると思います。

能登原
自分がやろうと思ったことなら、その過程も自分で考えるわけですから、いわば数学の問題を解くときに計算式が残っているようなもので、失敗してもどこでつまずいたかがだいたい分かる。でも、やらされると、その途中がなくて回答例があるだけだから、失敗してもどこでつまずいたか実感がない、という感じなのでしょうか。

木村
ええ。「言われた通りにやったけど、失敗でした」というのでは、自分の力を評価しづらいでしょうね。

能登原
自分で考えていないということは、つまり計画を立てていないということですからね。自分で計画を立ててやると、計画と実績の差の分が経験となって蓄積されます。でも、言われた計画を、いいのか悪いのか分からないままやっていると、あまり伸びないです。

木村
若い時は、どうしても上が考えて「こうやりなさい」と決めた指示を受けてやることから始まるとは思うのですけど、その中で、ちょっとだけ自分の仕事を横に広げるとか、自分なりにやり方を変えてやってみるとか、いろいろ工夫しながらやってみたらどうでしょう。そう難しく考えなくても、楽しくなるように自分で考えてやったらいいと思います。

能登原
それはすごくいいですね。やはりシンプルに「まず、やる」のがいいかもしれません。われわれもコンサルをしていますから、いろいろ理屈をこねますし、ある程度、理屈をこねないといけないこともあるのですけど。

木村
今の部署の関係で、僕たちも半分コンサルのような仕事もやっていますので、能登原さんや他のコンサルの方々とお話していると、お客さんが何をどう考えているか聞き出すにはどうすればよいかとか、また、お客さんとどんな関係を作るのかというところで、とても勉強になりますね。コミュニケーションがうまく取れるかどうかは、ものの言い方次第というか…能登原さんを見ていて、「こういう話し方がいいのだろうな」とか(笑)。

能登原
僕は、まずお客さんと仲良くならないとだめだと思っているのです。でも最初に仲良くなるまでが難しいのですよ。1週間で仲良くなれる人もいれば、地道に仕事をやって、その結果、1年後にやっと仲良くなれる人もいますし、いつ仲良くなれるかはわからないのです。たぶん仲良くなれる前提に、ある程度の信頼感とか、何かがあるのだと思いますが。

木村
それは、積み重ねでしょうね。

能登原
そうでしょうね。お客さんが本当に話を聞いてくれるのは、仲良くなってからです。

木村
そもそも、そういう観点を持って話すというのも、重要なコミュニケーション・スキルだと思うのです。今までもそうですが、これからはそういう部分がますます重要ですね。仮に、出てきた結果は同じだとしても、人の気持ちが次につながるということですから、全然違うと思います。

能登原
本当にそうですね。仕事をしていると、ヒューマンな部分を考えるよりも、どうしてもテクニカルなところに行きがちになってしまうので、気をつけなければと思っています。私も元は技術者で、昔はテクニカルに細かい部分に走っていましたが、やはりそれだけだと限界があるということがわかりました。技術だけでは、まず上手くいかないです。人を動かせないですから。

木村
うちの会社は今、お客さんの話をよく聞いて「それでは、こんなものを作りましょう」とソリューションを提案する仕事が増えてきています。それだけに、最初にちょっとした掛け違いがあると、直すのがたいへんです。そういう意味でも、ものの言い方とか、コミュニケーションの部分には、いっそう配慮していく必要があると思っています。

能登原
確かに。でも、私は一度、懇親会の席にお邪魔しましたが、コミュニケーションという意味でも、御社はとてもよい風土をお持ちです。皆さん、工場勤務を経験されて、工場と本社を行き来している方も多いので、経験の幅が広く、率直に話しやすい文化があると思います。現場のこともある程度分かっているし、本社のほうの事情も分かっている。そういう経験があるのは非常によいですよね。

木村
確かに、それが強みでもあります。

能登原
いい意味で、日本企業の家庭的な「絆」を感じます。

木村
やはり母体は製造業ですからね。

能登原
国内ではいろいろな拠点に行っているから、グローバルで行くときにも、そういう面での行きやすさとか、一種の現場感というのはお持ちだと思います。風土も違うし文化も違う、コミュニケーションの仕方も違うという中でも、チームを組んでやってきた経験もお持ちでしょうし、そもそも違って当たり前なのだと、違いを許容しやすいような気がしますね。

木村
確かに、ある程度の年齢以上の社員はそういうところがあるのですが、今の若い人たちは基本的に本社での経験しかなくて、工場をあまり知らないところがあります。そのギャップは少しあると思うのですけど、でも、そこは若いので、いざとなればちゃんと適応してやれると思います。

能登原
私の受けた印象では、若い人たちにもその風土は伝わっているように感じます。新旧の文化がうまく融合して、グローバル化の中でも強みを生かしていければよいですね。
今日は、いつもクールな木村さんが、これまでにどういう経験をされて、どういう思いを持っていらっしゃるのか、知ることができてとてもよかったです。これをお読みになると、部下の方々も「おおっ! こんな意外な面が」と思われるのではないでしょうか(笑)。

木村
部下は二人しかいないですし、まあ、分かっているとは思いますけど(笑)。

能登原
本日は、お忙しいところをありがとうございました。

(終わり)

構成:萩谷美也子

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