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2007年11月 9日

宮本 文宏さん(5)
日本ユニシス株式会社 人材育成部 HR変革コンピテンスセンター チーフ・スペシャリスト

宮本 文宏さん宮本 文宏(みやもと ふみひろ)さん
日本ユニシス株式会社
人材育成部 HR変革コンピテンスセンター チーフ・スペシャリスト
1989年3月 岡山大学文学部哲学科卒業 同年4月 日本ユニシス株式会社入社。UNIXによる開発を多数手がける。
2000年からP2/M等、上流工程からのITコンサルティングに従事。
2002年からソリューション開発領域システム構築PMとしてプロジェクトを担当。
2006年から人材育成部に。

PMが与える影響は、想像以上に大きい

能登原
プロジェクトマネジメントの話が出たので、対談のときにいつもお聞きする質問をさせていただきます。今までのご経験から、プロジェクトマネジメントでは何が一番大切だと思われますか。

宮本
最近はコミュニケーションが大切だと思っています。それは、今まで充分にできなかった反省点でもあります。メンバーときちんと話ができていたか。「腹を割って話す」ことが出来ていたか。数値データの取り纏めや報告に追われて、後回しになっていなかったか。そう考えると、もっと意識してコミュニケーションをとる必要があったのではないか、と思いますね。
他に何が大切かと考えると、今まで意識してきた点は、QCDも含めて約束事というか到達すべき目標にこだわるということです。約束したものについては実現が必須ですし、成果に対する説明も必要です。約束事は何か、それを実現する為に自分たちで何をすべきか、本当の目的は何か、徹底して約束にこだわり、共有化し、実現する。それを常に意識してきました。

能登原
この質問は皆さんに必ず聞いていますが、それぞれお答えがちょっとずつ違って、そこが面白いです。

宮本
プロジェクトでは少なくとも目的と目標はみんなで共有しようと思いました。うまく伝わったかどうかは分からないですけど、「これは何のためにやっているのか」というメッセージだけはなるべく繰り返し発信していましたね。特に大規模プロジェクトでは人が多いだけに、どの方向に向かおうとしているのかといった座標軸がないと、みんながばらばらの方向を向いてしまいます。完全に一緒の方向を向くのは無理にしても、少なくともPMとして「こっちのほうに向かいたい」と言わない限りは、みんなどうしていいのか分からない。方向性をしっかり出すのは大切だと思いました。今はそれに加えて、コミュニケーションが重要なのかなと思っています。

能登原
基盤としてコミュニケーションが大事なのでしょうね。その上でいろいろ、目標を立てるとか、約束を守るということがある。それでも「結果的にうまくいって良かった」という話で、どんなにちゃんとやっても、うまくいかないときもありますから。

宮本
逆に、私からの質問ですが、能登原さんは何が大切だと思いますか。

能登原
私は、プロジェクトマネジャはコミットメントが一番大切だと思っています。

宮本
なるほど。

能登原
約束を守るのは大切だと思うのですけど、まず正しい考え方が基本にないと困ります。最近のホリエモンの事件とかミートホープの事件について思うのですが、彼らはたぶん能力もあるし努力もしている、熱意もある。でも考え方が間違っているのです。
正しい考え方が基本にないと、プロジェクトはPMに影響されますから、変な方向へ行ってしまいます。やはりPMが全てなのですよ。私も大規模プロジェクトをたくさん見ていますが、プロジェクトがうまくいかないときに、PMが変わっただけで、下にいる100人のメンバーの顔が変わるのを見たことがあります。PMの人格や考え方が正しい方向を向いていると、発言一つ一つがその考え方に基づいていますから、だんだんメンバーみんなの顔色が変わってくるのですよ。そうすると「苦しい中でもみんなで頑張ろう」という意欲が湧いてくるのです。でも、誰かに言われたからしかたなくやっているようなPMの下では、みんながしらけている。PMの影響力というのは、実は思ったよりあると思います。

宮本
技術的な面ではなくて、その人のキャラクターや、向いている方向ということですか。

能登原
もっと言うと人格になるのかもしれないですね。人柄とか人格とか、年を取ってくると、そういうところで勝負せざるを得なくなるのかもしれない。要するに「この人のためならやってやろう」と思わせられるかどうかではないでしょうか。
あるプロジェクトで、現場の外注さんのすごく優秀な人と話していたら、「いや、上の元請けのこの人がリーダーになってくれたので、参加したいと思った」と言うのですよ。「この人じゃなかったら断っていた」と。それくらい違うんです。

宮本
人の魅力ですよね。でもそれはなかなか教えられないし、自分自身も持っているかと言われると(笑)…難しいですね。

能登原
ただ言えるのは、正しい考え方や誠実さ、約束を守る、みんなを平等に扱う、情報をオープンにするといった正しい行動をとることです。その上で、もうちょっと技術的なノウハウ、コミュニケーション力、リーダーシップとかいろいろ必要なのだと思いますけれど、まず正しい行動が大事なのかなと、最近は思っています。

宮本
おっしゃる通りですね。間違った方向でやろうとすると、みんながついてこないし、社会的に受容されない志向を持ってやっていくと、ついていこうとしても周りも辛いでしょうね。

能登原
そういうとき一緒にやっている人は、どこかで「おかしいな」と思いながらもとりあえずついていくのだと思います。だから何かあったときに、みんなバッと離れてしまう。

宮本
ずっとその人が正しい方向を向いてやっているとすれば、何かあったとしても、どこかでまたうまくいく。プロジェクトにも波がありますからね。どんなにうまくやろうとしてもうまくいかないケースもあるし、そもそも無理なプロジェクトだったということもあるかもしれない。その中でも方向性の軸がぶれていなくて、きちんとコミュニケーションして、不当に人を貶めたりとか、間違った行動をしなければ、どこかで人はついて来ると思います。カリスマ性を持っている人は、また別なのかもしれないですけど。

能登原
そうですね。さきほどの正しい考え方とか熱意について、私は京セラの稲盛さんが書かれた本で読んで「ああ、その通りだな」と思ったのです。ああいう人がいると組織が強くなりますよね。ある人に聞いたら、そういう人がいる組織はやはり逆境に強いらしいです。苦しいときにみんなが一緒にその人について、何とか耐えきるらしいのですよ。そうじゃないと、苦しいときにつぶれてしまう。

宮本
苦しいとき、どれだけ人がついて来るかということですね。

能登原
それは大変なことだなと、最近思いましたね。正しい考え方できちんとコミットしてやっている人は、信頼も厚いと思いますし。

宮本
信用は失うのは一瞬ですよね。不二家の事件もそうですし。

能登原
あっという間ですから、怖いですよ。

宮本
信用をいかに積み重ねていくかでしょうね。

能登原
逆境になることもありますから。いいときばかりじゃないですよ。それに、大きいプロジェクトやっていると、苦しいことだらけですよね。

宮本
「絶対無理だろうな」と思うときもあります。でもPMがネガティブな言葉を言ってしまうと、みんなそこで崩れてしまうから、それは言ってはダメですよね。

能登原
そのきつさを超えると、また別の世界が見えてくるのでしょうね。

宮本
そういう期待はあります。「ここを乗り越えれば何か違った風景が広がるんじゃないか」と。それがモチベーションになっているような気がします。

能登原
よくうちの社長の林が「終わらないプロジェクトはないからね」と言うのですが、終わりますよね。どんな感じであっても、とりあえずは。

宮本
さすが林さん(笑)。あと、「どんなに失敗しても殺されないから」ともおっしゃる。

能登原
そうですよ。国によっては、サッカーに負けたら殺されちゃったりしますから(笑)。

宮本
命がけですよね。プロジェクトは失敗したら、お客さんに怒鳴られて殴られそうになるかもしれないですけど、殺されないですからね。でも思いこむとなかなかね…ほんとうにきついときはありますよね。

能登原
いやあ、きついですよ。

宮本
やっぱりメンタル面でもグッとプレッシャーが来ますから。

難しいチャレンジの先にこそ、新しい風景が広がる

宮本文宏さん

能登原
御社のようにSIをやっている会社さんが一番大変だと思います。

宮本
SIというと何でもありですから。

能登原
下のほうの小さいところのタスクは、言われたことを「これだけやったんでお金下さい」で済むけど、SIerさんはそういうわけにはいかないですよね。

宮本
全体の取りまとめと、その責任がありますので。そこに踏み込んでいかない限りは企業としての成長もないですし、難しくて複雑なところにチャレンジしていって、その中で成果を上げていくかということが大事です。そこへいくとまた風景が変わってくる。会社も人も、そうして成長していかないと。

能登原
そうですね。

宮本
ちょっと話が変わりますが、この前インドへ行っただけでも、「風景が違うな」と思いました。

能登原
やっぱり考え方が違いますよね。私もインドに行って、まず考え方や発想の違いを感じたのはお墓がないことでした。ヒンドゥ教徒は、火葬後、遺骨を川に流してしまうから。

宮本
貧富の差がものすごく激しいし、階級社会ですしね。われわれの今いる日本という国から見たときには、文化的ギャップがあります。でも、今もインドからたくさんの方が日本に来られていますし、プロジェクトも、これからもっと多国籍になってくるでしょうから、その中でどうやってプロジェクトをマネジメントしていくのかという話になりますね。

能登原
御社でももうインドや中国に仕事を出されていますね。

宮本
中国へのオフショアは以前より実施していますし、ベトナムには100%子会社があります。プログラミング工程は積極的にオフショアを活用しています。
プロジェクトの場合、まだ日本はユーザーとの関係や言語の特質性で守られている部分があります。非常に曖昧な要件をいかにベンダーが聞き取ってシステムにするかという部分は、インドやアメリカの会社が入りづらいために障壁になっていると思うのですけど、どんどんそこも変わって来るでしょうね。昔は製造系でも「日本は特殊なんだ」と言っていたのが、今はもうほとんど工場や拠点が外国に移っているように、IT系もやっぱり移っていくと思いますよ。今回、インドに行って特にそう思いました。

能登原
私もそう思います。インドにはとにかく人がいますしね。

宮本
インドの方々は非常に優秀な技術を持っていますし、人的ボリュームもポテンシャルも違いますから、急速に展開していくと思いますね。製造業では、工場の国内から海外への移転は、急激でダイナミックに行われて、今はほとんど外に出ているという現実を見ると。

能登原
ですから製造業の人は、平気で海外に行っていますものね。ITもそうなるかもしれません。

宮本
ITもそうなると思いますよ。逆にそうなったら、自分たちがどうなっていくのか、PMは何を売り物にするのか、スタイルをどう変えていくのか、今から考えないといけないでしょうね。

能登原
まあ、PMは必要だと思います。でも、そのときは英語でやらないといけないのかもしれないですね。

宮本
インドでのIT研修を見学したときに、英語がベースで最新の教材を取り入れているのはいいなと思いましたね。日本ではなかなか新人に「英語のテキスト使ってやります」と言えませんが、インドでは先月出た新しい英語のテキストをそのまま使える。タイムラグのなさはうらやましいですね。

能登原
日本はそういうところはまだまだです。

宮本
PMの研修体系もまた、日本でやっている研修体系とは違っていて面白いなと思いました。技術に対して非常に高い目線を持っているというか、技術を大切にしますよね。もともとアメリカの開発を技術者として請け負っているという背景もあるんでしょうね。PMのコースでもオブジェクト指向の部分をやったり、プログラミングをやったり、短期コースだからなのかもしれませんけど、PMBOKとかプロジェクトのフレームワークの以前にそういった開発の素養を非常に重要視しています。ドキュメントでも設計書を書く能力とか。そういったところが、われわれが今やっているPMの育成とはまた違った観点で面白かったです。

能登原
技術者にコンピューターサイエンスをきちんと教えるという発想ですよね。日本のエンジニアはちゃんと体系だってやらずに、いきなり実践現場でというのが多いですから。

宮本
そうですね。まだ「現場で叩かれて」みたいな世界です。インドでは体系的に技術を学んで、それが逆にコミュニケーションのツールになるのだなと思いました。
あとは受ける方の熱意が違います。

能登原
もう全然違います。日本では昔あったハングリー精神が、だいぶなくなったのではないでしょうか。昔に比べたら、ガツガツしなくても生活できますからね。

宮本
彼らは、そこで知識を得ることが明日の自分たちの生活に密接に結びついているのでしょうね。

能登原
宮本さんは、いつごろインドに行かれたのですか。

宮本
ちょうど雨期に入る前です。わりとすごしやすいいい時期だったと思います。

能登原
私は一年前の雨期に行きました。道がデコボコで、それが池になっていました。
交通事故にも2回遭いました。最初は、乗っている車が人にボンとぶつかって、そのまま通り過ぎました。もう一回はきれいな新車のシビックとぶつかって、怒鳴り合って運転手がそのまま行きました(笑)。

宮本
だいたい交通ルールというか、車線がないですしね。道を渡っていてぶつかっても、止まってくれないでしょうね。

能登原
道を渡るのも命がけですよね。そういう、普段の常識が覆るような世界を見ると、プロジェクトのつらさもなんとなく相対化されるような気がします。

宮本
つらいと言っても、こういう世界もあるんだと(笑)。

能登原
それでは、最後にオチがついたところで(笑)。長いお時間をどうもありがとうございました。

(終わり)

構成;萩谷美也子

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