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2008年1月 7日

川島 信幸さん(3)
株式会社豊通シスコム GIT事業本部 企画総括室

川島 信幸さん川島 信幸(かわしま のぶゆき)さん
株式会社豊通シスコム
GIT事業本部 企画総括室
ソフトハウス、NEC販売特約店でアセンブラやOSのEDITION、ボードの開発を経験後
1997年 豊通テレコム(現豊通シスコム)入社、福利厚生サービス開発後
2002年に現在の部署(GIT事業本部)へ異動、PM品質向上活動に従事
2007年10月より企画総括室のメンバーとして、人材育成、品質向上活動等を担当

ピンチから生まれたカフェテリアシステムへの挑戦

川島信幸さん

川島
MC-NET(福利厚生サービス)が発展して、「福利厚生のカフェテリアプランをやろう」ということになったのです。

能登原
福利厚生のカフェテリアプランとはどういったサービスでしょうか?

川島
企業が、福利厚生すべての面倒を見るのではなく、メニューを提示して、従業員がその中から好きなものを選ぶようにするのです。

能登原
ああ、好きな食べ物や飲み物を選んで、最後にお金を払うカフェテリアと同じ感覚ですね。

川島
はい。そのとき、まだ日本にはなかったシステムです。99年頃でしたが、日本でカフェテリアプランを導入している企業がなくて、カフェテリアプランの資料を探そうとアマゾンで検索をしても、3冊ぐらいしか出てきませんでした。

能登原
ああ、ほんとうに最初だったのですね。

川島
たまたま福利厚生サービスのノウハウはカフェテリアプランに応用できるだろうと活動していたところ、トヨタ自動車様でカフェテリアプランを導入するということで、システムを受注したのです。

能登原
なるほど。

川島
そこでトヨタ自動車様のカフェテリアシステムを2年ぐらいで作り、この事業を行うための組織が、今の豊通シスコムのEサービス部です。ここはトヨタグループ何社かの福利厚生カフェテリアプランを運営している部署です。また、東急と豊通シスコムで、企業の福利厚生サービスを支援する「ウェルボックス」という会社もMC-NETから生まれました。

能登原
MC-NETをきっかけに、新しいビジネスが一つ生まれたのですね。それに川島さんはちょうどいいときに入られて、共に作っていく時代を一緒に経験できた。

川島
もともとMC-NETをやっていたのが5、6人しかいなくて、みんな「もう先行きがないから止めよう」と言っていたところでした。私と企画営業的な仕事をしている人間と二人で「どうする。このまま止める? 何か他に転換できるものはないのだろうか」というのを話していて、本を読んで「カフェテリアプランって道があるよ。だから二人でちょっとやってみよう。他の人は止めてもいいや」ということにしたのです。
もう一人が営業と企画をやって、私が実際にシステムをつくっていくという役割で動いていたのです。ですからカフェを想定して、ACCESSで動く簡単なデモシステムを作って、トヨタ自動車様に置かせてもらいました。それもあって、受注できたとのかなと思っています。

能登原
素晴らしいですね。カフェテリアプランというアイディアそのものも親会社のほうから来たわけではなくて、デモを置いて向こうに提案した形だったのですね。

川島
そうです。「カフェテリアプランをやります」、「それはこういうものです」といった感じで。
トヨタ自動車様側のシステム設計はほとんど私がやりました。人が全然いなかったのもあって。
事業としては最終的には成功しているのですが、プロジェクトという意味からすると、反省点がものすごくありました。

能登原
そうですか。例えばどのようなことでしょう。

川島
今では絶対許されないことですが、プロジェクトメンバの残業時間がものすごく多くなってしまいました。

能登原
何人ぐらいのチームだったのですか。

川島
全部で2、30人だったと思います。トヨタ自動車様の開発をしているときのピーク時には、30人以上いました。

能登原
それはウェブで作られたのですか。

川島
はい。最初に提案したときに、I社さんと競合していたようですが、I社さんはクライアントサーバ型でした。それではメンテナンス性が悪いです。ですから、「うちはウェブで全部やります」「クライアントはもういりません」と(笑)。

能登原
ブラウザさえあれば(笑)。

川島
ええ、「ブラウザさえあればいいです」と。でもけっこう大変でした。まだネットスケープ主流だったころなので、ネットスケープとIEと両方動かさないといけない。あの二つは表示の仕方から何から、かなり違うのです。バージョンもいろいろなバージョンが出てきていました。

能登原
何年ぐらいのことですか。

川島
1999年ぐらいから2001年、2年くらいです。

能登原
早いですよね、このころウェブでこれだけ本格的なプロジェクトをやったというのは。

川島
もともとMC-NETがウェブ系で、まだIDCとHTXで作っていて、IISも2.0でした。トヨタ自動車様のときはASPで組んでいました。IISも4か5ぐらいに上がっていたと思います。

能登原
楽しそうですが、大変だったのですね。

川島
このときが一番大変でした。過去の開発の中で一番大変でした。

能登原
このころプロジェクトマネジメントはされていましたか。

川島
いえ、もう人の努力に全部おんぶに抱っこ状態でしたね。

能登原
でも、「どうしようか、止めようか」という状態から、ここまで立ち上げたというのはすごいですよ。

川島
トヨタ自動車様が協力してくれたのが大きかったですね。
本来ならマネジメントの視点から標準化をしたり、基準をつくったりして、管理して行かなければいけなかったと反省しています。

能登原
でもコアの部分を優秀な人間でやっているから、逆にいいんじゃないでしょうか。

川島
全体の仕組みとしてデータが流れなくなるとか、仕組み自身が立ち行かなくなるということはなかったです。

能登原
パフォーマンスはどうでしたか。どのくらいの人が使うシステムなのでしょう。

川島
トヨタ自動車様の全従業員様です。ある時期に全従業員様が一斉に使うときがあります。そのときはウェブサーバーもかなり悲鳴をあげています。

能登原
すごいですね。それでちゃんと動くのですね。これを作り終えたのはいつごろですか。

川島
全部終わったのが2001年ぐらいですね。

能登原
全部やり切ってうまく動いたときは、自信になったのではないでしょうか。

川島
私は反省のほうが多かったです。今思うと標準化ができていなかったですから。そもそもPMの役割がそのときはっきり分かっていたわけではないので、マネジメントの視点が全然なかったなと。

能登原
このときにはPMとかPLという概念はなかったかもしれませんが、リーダーは川島さんだったのですか。

川島
そうですね、開発リーダーと言っていました。あともう一人、一緒にやってもらっていた人がいます。上との話し合いはその人。仕様とか実際の進め方は僕に来ていましたね。トヨタ自動車様がそのように使い分けていました。

能登原
アーキテクトは川島さんで。お金の話とかちょっと泥臭いところは、そちらの方に。

川島
はい。お金の話は僕には振らないようにして(笑)。

能登原
「とにかく作ってくれ」と(笑)。そんな感じですか。

川島
そうです。

能登原
これをやり遂げられて川島さんご自分は、何か変わりましたか。

川島
どうなんだろう…とにかく僕は楽しかったですよ。大変ではありましたが。初めて画面を見ていて視界がなくなるという経験をしました。急に視界が狭くなって砂の嵐が周りから攻めて来て(笑)。

能登原
倒れたりしたのですか。

川島
いや、倒れなかったです。アッと思ったら元に戻りました。「あ、すごい。こういうことがあるんだ」と思って。

能登原
脳の情報処理か何かがもう限界以上になって、そこで一瞬気絶していたのでしょうね、きっと。

川島
かもしれないですね。そのあと、また同じような何か新しい立ち上げをやりたいと思っていましたけど。なかなか機会がなく。4年前に今の部に異動になりました。もうやっていることは全然違いますので、このときにも社内で転職しているようなものですね。

カフェテリアの本質とその波及効果

川島信幸さん

能登原
川島さんの今日のお話を聞くと、挑戦的でベンチャー的ですよね。

川島
ええ、ベンチャーですね。

能登原
新しいところに挑戦して行く感じがします。MC-NETはすごい事業になりましたね。

川島
たまたまなんですよね。

能登原
なかなかそこまで挑戦できないですよ。

川島
ほんとにラッキーだったのです。たまたま自分たちで「やりたい」と言ってデモをつくったのもそうですし、トヨタ自動車様からそういう引き合いがぶつかって来たというのもあると思います。それに会社としても新しいことをやらせてもらえる環境でした。

能登原
そうですね。ちょうどウェブの勉強をして、勉強していたことがきっかけで転職されて。しかもそれで作った仕組みが今度は事業化されて、非常にいい流れになっていますよね。

川島
はい、たまたま。何か野生の勘でも働くのでしょうか(笑)。

能登原
いや、一つ一つきちんと成果を出しているからじゃないですか、それを見て人が「じゃあ、やって!」と声をかける。成果をうまく出してないとチャンスにつながらないと思うのですよ。
私はカフェテリアプランについてぜんぜん知らなかったのですが、概念としてはどうなのですか。福利厚生のいろんなサービスを並べているだけということではないのですか。

川島
ええ。もともとカフェテリアはアメリカの401Kの対応がベースなのです。

能登原
ああ、なるほど。

川島
今、日本でやっていることの多くは、福利厚生のカフェテリアプランでしかなくて、ほんとうは401Kを狙っていくべきだと思いますが、そこまでいっていないと思います。

能登原
本来は資産形成のために寄与するものなのですね。

川島
会社が福利厚生を広く薄く行うのではなくて、「あなたにはこれだけのポイントをあげます。好きなメニューを選べますよ」ということです。

能登原
ああ、そうなんですか。

川島
はい。MC-NETでポイント利用の選択肢を広げて、好きなメニューを使ってくださいということにしています。

能登原
トヨタさんでは、みんなが福利厚生のメニューを選べるのですね。

川島
選べます。年に1回の申請をするとき、全従業員様が一斉にこのシステムを使います。

能登原
これはほんとうにすごい仕組みですね。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

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