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2008年4月 7日

坂入 啓一さん(3)
関電システムソリューションズ株式会社 技術サポート本部 技術部 プロジェクトマネジメント室 システム技術支援グループ

坂入 啓一さん坂入 啓一(さかいり けいいち)さん
関電システムソリューションズ株式会社
技術サポート本部 技術部 プロジェクトマネジメント室 システム技術支援グループ
和歌山大学卒業後、1995年に関電情報システム(株)入社。
同年10月 技術開発室に配属。関西電力様からの受託研究、開発業務を担当。1999~2000年に関西電力様システム開発プロジェクトに参画した後、2001年より技術開発部にて再び研究、開発業務に携わる。
2005年、社内研究企画/統括業務に従事しつつ、社内プロジェクトマネジメント標準の策定に携わり、2006年よりシステム技術支援グループの統括業務を担当。

システム技術支援グループの仕事の中身

坂入啓一さん

能登原
そのころ技術部では、関西電力さんの委託研究を中心にいろいろな仕事をされていたのですね。御社では、今、関西電力さん以外の外向けの仕事も多く行われているのですか。

坂入
そうですね。今は関西電力さんや関電グループ以外の企業向けの仕事にも力をいれて取り組んでいます。

能登原
坂入さんが所属しているのはシステム技術支援グループでしたね。それはどういう役割を担っているグループなんでしょう。

坂入
名前の通り、社内で技術的に困っているところがあったら支援します。他の部門から「こういうのを教えて」と言われたら答えますし、現場に行って支援することもあります。中心はミドルウエアですね。データベースやアプリケーションサーバのあたりで、困っているところがあれば助けるという仕事です。あとは、今アイ・ティ・イノベーションさんにお願いしているような、標準類を作ったりする基盤整備業務、つまりプロジェクトを間接的に支援する仕事です。主な役割はその二つですね。その他にも社員の育成目的で立ち上げたプロジェクトをこのグループの中で進めていたり、関西電力さんからの研究受託の仕事も少し行ったりしていますけれど。

能登原
なるほど。技術支援業務では、例えば「外販のプロジェクトで、カットオーバーはしたものの、一部パフォーマンスが悪くてお客さまから不満が出た」というようなことがありますよね。そういうときには全面的に入っていってチューニングしたりとか、作り方が悪ければその作り方を直したりということもされるのですか。

坂入
あるにはありますが、それほど多くはありませんね。まだこのグループができて2年あまりということもあって、社内での認知度が低いというか、呼んでもらえる場面がまだそれほど多くないんです。技術的に分からないところは委託さんやベンダーに頼ってしまうことが多いようで。しかし、我々に頼ってくるケースも少しずつは増えてきています。まあせっかく頼ってもらっても「こちらではわかりません。」では話にならないので、みんな一所懸命スキルアップに努めています。

能登原
実際に現地で手を動かせて作業する形での支援になるんですか?

坂入
いえ。基本的には、そのプロジェクトの担当の方にお教えするという形をとっています。必要なら手順書とかを作ってあげて、それに従って作業をプロジェクトのメンバーの方に行ってもらったりとか。現場で立ち会ったりはもちろんありますけどね。

能登原
そうですよね。そうしないと現場にそのノウハウや技術が残らない。

坂入
そうなんですよ。我々のグループメンバーだけがスキルを持っていても仕方ない。その場しのぎではプロジェクトが終わった後の維持運用フェーズや、また次のプロジェクトでも、また同じようなことで現場が困ることになる。我々の重要なミッションは、全社スキルの底上げでもあるんです。

能登原
でも現場からは実際に手を動かしてほしいという声があがりませんか。

坂入
ええ。そんな声ばかりです。それだったらスキルのある委託さんを呼んできて作業ごと頼んだほうがいい、とか。それだと永遠に当社のスキルは上がっていかない。そのことを理解してもらうのにすごく苦労しています。
あと、実際に支援する対象のプロジェクトメンバーに会ったら、それが委託さんだったりというケースも結構あって。 委託さんは入れ替わるので、ノウハウやスキルは残らないし、だいたい当社がお金を払って来てもらって、その委託さんに技術指導をしてあげる。これほどおかしなことはないですよね。だからそんな場合はできるだけ当社の社員をあてるようにお願いはしています。まあどのプロジェクトも要員不足の中でがんばっているわけで、気持ちは十分わかりますし、仕方なくそういった形の支援になることもあるにはあるんですけど。

能登原
それは悩みますね。今、システム技術支援グループがそのあたりの技術的なところで、スペシャリストあるいはITアーキテクト的な支援をしていると思いますが、プロジェクトマネジメントのPMO的なところも一部やられているのですか。

坂入
実は最近になって当社にもPMO組織ができて、システム技術支援グループもその一員になっています。プロジェクトマネジメント支援等の業務は、既に行っているケースもありますが、本格的にはこれからです。以前からそこまでやらなければと思っていたんですが、とりあえずはルール作り(標準)から先に整備する必要があって、そこから取り組んできましたから。ルールがないと、支援するにしても、その内容がその個人の経験に基づいたスキルだけに拠ってしまいますから。そうではなくて、まずルールを提供して、「それに従ってやってください。分からなければ教えに行きますよ」というスタイルを考えました。ルールはあっても、プロジェクトごとにいろんな特性があって、全部を書ききることはできませんから、やっぱり支援も必要になります。

能登原
そうですね。技術的な支援からマネジメントの支援までやろうとすると、範囲も広いですし数も大きいですから。大変なチャレンジだと思います。

坂入
本当にメンバーの頭数からして全然足りない。

能登原
去年から弊社でも、プロジェクトマネジメントにプラスしてITアーキテクトがIT業界では必要じゃないかという話をしています。ITの技術の進歩が早いし、難しくなってきました。マルチベンダーで、要するにポイントポイントは知っているのだけれど、横串でだいたいの全体像を分かっている技術者が減ってきています。最初のプロジェクトの計画のときから、どういうアーキテクチャにするか細かいところまで含めて目配りして決めていく能力のある人は、人材不足になっているじゃないですか。

坂入
本当にそうですね。

能登原
逆に言うと、技術部なりシステム技術支援グループでそれができる人が増えたら、すごい価値になって、他社と比べても強みになるような気がします。

坂入
現場からはそういったニーズはやはりありますね。でも十分な対応ができているとはまだ言えない。本当にそういった人材をどんどん育てて行きたいと思いますよ。

能登原
私は御社の何人かの方とお会いして、みんな素養もあるし、たぶんそれはできると思いますよ。

坂入
そうですね。一定規模のシステムであればアーキテクトできる人間は既にいると思うし、これから経験を積めばいくらでも伸びそうな人間もいると思いますね。
できればそういった人達を一箇所に集めて、経験を集中的に積ませることで、個々のスキルを伸ばしつつ、全社横断的に活躍してもらいたいなあと思っています。
各プロジェクトに分散すると、アーキテクト同士が切磋琢磨するような機会もないし、なによりマネジメントから開発から何でも担当して、アーキテクト的な仕事だけに集中できない。それじゃあ伸びないですよね。なかなか。
でも現実問題、なかなか現場はそういった有能な人材を離さないし、私が現場の立場なら同じように離さないかも。(笑)

能登原
私は、システム技術支援グループにそこまで期待していますから。個人的に(笑)。

坂入
ぜひそうなりたいですね。

能登原
業界全体でそういう人たちを増やして、やはり日本人がPMやITアーキテクトの部分は担っていたいですね。プログラミングはオフシェアに出してもいいですけれど。

坂入
でもプログラミングにもアーキテクト的な要素はありますから、完全にオフショアというのもどうかとは思いますね。

能登原
本来、プログラマはコーダと全然レベルが違うものですから、本当のプログラマはもちろん日本にいてもらう(笑)。

坂入
そういったことができるとベストかもしれませんね。

能登原
そうですね。

オフショアとの関連

坂入啓一さん

能登原
今度中国へいらっしゃるというお話が出ましたけど、オフショアのほうも担当されているのですか。

坂入
いえ、別に担当しているわけではありません。オフショア先で当社専属の部隊を確保してもらっているんですが、その部隊に当社の標準類のレクチャーに行くんです。

能登原
なるほど。日本と中国の役割を決めて、「ここまでは日本で作るからこれ以降はこうやってください」ということも含めて、全部説明するのですか。

坂入
今はまだそこまでの明確な決まりはありません。でも、実態としては中国で行っているのは、下流工程までというケースがまだまだ多いようです。それを徐々に上流工程から参画してもらおうという動きはあります。下流工程だけだと、仕様の認識が甘くて、その分不具合が増えます。仕様誤りではなくて、仕様を勘違いするんですね。やっぱりコミュニケーションの問題は多い。ブリッジSEを置いても完全に解消されることはなくて、中国側のSEを上流工程から参画させて、仕様を理解してもらうことで、下流工程の不具合を減らすことができると考えています。
中には、上流もオフショアできるならその方が安くできるという考えもあるかもしれませんが、これはあくまで個人的な考えですが、やっぱり上流は日本でしっかりと行うべきでしょうね。

能登原
なるほど。でもオフショアについては一気に加速しそうな気もします。日本の製造業がみんな海外で造り始めましたよね。もしかしたらソフトウエアの世界も、何らかをきっかけに、一気に海外に行く可能性もあるかもしれません。

坂入
まあそういう会社は既に増えつつあるし、当社だってある日急にトップがそういう方針を出す可能性も0ではないかもしれない。個人的にはそうなってほしくないですけどね。

能登原
製造業の部品などは、ものが見えるのでオフショアに出しやすかったのでしょうが、ソフトウエアはものが見えないから非常に難しい面もありますよね。

坂入
そうですね。それに、まったく同じプログラム、ソフトウェアなんかないわけですから、製造業のそれとは違いますよね。

マネジメントの立場へとシフトして

能登原伸二

能登原
今はグループ全体の面倒をみられるというお立場なんですよね。

坂入
私は入社してしばらくは「技術で生きる!」という気持ちでした。管理はあまり好きじゃなかったんです。一人でガーっとやっているほうが性に合っていて、できるならずっと技術でやっていきたいと思っていました。でも、当社の特性で、やはりプライムになるじゃないですか。委託さんを使い出したらマネジメントの比率がだんだん多くなってきて、いつの間にか管理する立場に追いやられたみたいな感じで(笑)。 まあそれだけではありませんよ。自分の将来の目標のためというのもあるし、一人でできる仕事は小さくても何人か集まると大きい仕事ができるので、それをマネジメントする楽しさを覚えたと言うこともあります。まあいろんな要因があって今の立場にいます。

能登原
今の立場になられて、これまでと何か発想が変わられたことはありますか。

坂入
年々変わっていきますよ。先ほど言いましたコスト意識もそうです。最初は作ることにだけ喜びがあって、「これができればお客さんも喜ぶやろ」くらいにしか考えていなかったのが、コストのことを従来よりも考えるようになりました。そもそも自分の給料はどこから出ているか。赤字を出した分、自分の給料やボーナスがそのまま減るとしたら、いくらお客さまが喜んでも、躊躇しますよね。誰でも。
まあ一定規模以上の会社であればこんな極端な考えはいらないのでしょうけど、ある程度のバランス感覚は必要ですよね。いかにお客さまに喜んでもらい、かつ、自分たちも喜べるか。
今のように、いろいろなプロジェクトを管理側の立場でみるようになると、それこそコストばかりが気になってくることもありますが、でもそれだけじゃ自分の中での満足感も得られないし、昔の「お客さんが喜んでくれるなら・・・」みたいな感覚も忘れたくはないですよね。基本はお客さま第一主義であるべきで。

能登原
他に何か立場が変わって変化したことはありますか。

坂入
そうですね。少し質問の趣旨とは異なるかもしれませんが、今我々はシステム開発についての標準類の整備の仕事を行っています。この仕事なんかは日々葛藤ですよ。
例えば、本当にできる人は放っておいて、自分の能力だけでやらせたらいいのではと思ったり、「いや、それじゃダメだ」と思い直したり。標準化で全社的に同じようなやり方をすることによって、組織としてのパフォーマンスが上がるということを、昔は考えていませんでした。そのプロジェクトが成功したらいいとしか思っていなかった。

能登原
なるほど。

坂入
標準というのはよく勘違いされるんです。「標準はスキルある人には必要ない」と思っている人がけっこういるんですよね。標準を教科書のように思っている人も多くて、「こんなの見なくてもできる」って感じで、独自の方法でやったりする。
もちろんそういう側面もあるし、場合によっては間違った考えではないケースもあると思いますが、基本的にはみんなが同じ物差しで、同じ方法をとるからこそ、良いところも悪いところも見えてくるし、改善だって標準さえ直せば効果はより広く現れる。各プロジェクトバラバラだったら大変ですよね。それぞれで悪いところを探して、それぞれで改善して。標準にはいろんな効果がある。
まあプロジェクトはそれぞれ違うからこそプロジェクトと呼ばれるんですが、そんな違う特性を持つプロジェクトに共通の厳格な標準というのは作れないし、作っても悪い面しか現れませんが、かと言って何もないよりは絶対いい。本質は定義して、ちゃんと守ってもらわないと。それ以外の部分はそれぞれでカスタマイズしてくれて構わないですけどね。
でも現場の人達の意見なんかを聞いてると、本当に自分は正しいのかどうかっていう葛藤が止まらない。
こういう悩みを抱えて考え出したのは、言ってみれば私の中での大きな発想の変化ですかね。管理者になったからではありませんが。

能登原
なるほど。
うちの会社のマネジャクラスでは、「もともとの資質はスペシャリストとかアーキテクトかな」という人もいます。弊社のスキル診断の担当者も、プログラミングが好きだし、技術的なところが非常に好きで、今でも追求していますね。坂入さんは今でも技術に対する志向性があるのでしょうか。それとも、やってみたら意外にマネジメントのほうが向いているとお思いになっているのでしょうか。

坂入
もともとは技術的なことをやっているほうが好きだったし、プログラミングなんか楽しんでやってました。今考えると、私は没頭し過ぎるほうなので、好きではあっても実は向いてないとも言えたかもしれません。
あと、アーキテクチャを考えるのはすごく好きでした。
マネジメントは・・・向いてないんじゃないですか(笑)。

能登原
なるほど。昔のことはわからないのですが、今私が拝見しているところでは、坂入さんには、どちらかと言うとマネジメントの素養があると見ていますけれどね。

坂入
ほんとですか。

能登原
坂入さんとはプロジェクトマネジメントの話をする機会が多いですが、そういうふうに感じます。

坂入
お世辞でも能登原さんにそう言っていただくと正直嬉しいですね。昔はそんなことできるとは思っていなかったし、今も「何とかやっているかな」くらいの感じですから。

能登原
先日すごいアーキテクトに会って話をしていたときに、標準やソフトウエアの自動化の話になりました。たぶん標準化が進めば、自動化で仕様書からソフトウエアが自動生成するような時代が来るでしょう。「でも、チューニングが必要なポイントは残るのじゃないですか」と質問したら「それはスペシャリストのために残しておかないといけない分野です」という答えが返ってきました。能力の高いエンジニアとかアーキテクトを必要とする分野はずっと残りますね。単純な仕事は標準化して自動生成にでもしてしまえばいい。でもチューニングポイントでは、人間の出番はなくならないのではないかという話になったのです。

坂入
人の出番がなくなることはないでしょう。どんな業界でも、どんなに自動化されても、まったく人間がはいらない仕事はないですしね。結局わざと残さなくても、必然的に残るはず。

能登原
たぶんそういうことなのですね。だから逆に言うと、標準化で何とかなるようなところは、この業界ももうちょっと効率化しないといけないということだと思います。

坂入
今3Kと言われて、IT業界はあまり好まれた業界ではなくなってきてますが、それを改善するには何かが必要になるんでしょうけど、もしかしたらそのキーワードは自動化にある可能性もありますね。単純な時間だけ要するような仕事を自動化して、人間ならではの知恵を要する部分にだけ注力できれば、一つのシステムを作る時間も短縮されてみんな残業がなくなって、仕事内容も面白いものになって、やりがいも生まれてくるかもしれませんよね。

能登原
技術部の皆さんの中で、ソフトウエアの自動化まで含めて、「将来、技術的にはこうしていこうよ」ということを、何か考えられたりしているんですか。

坂入
考えないといけないし、個人的には時折考えることもありますが、いいアイデアはなかなか出ない。技術部で研究として考えてもいいかもしれませんね。今はそこまでの余力はありませんけど(笑)

能登原
どうしても、今現実に直面している問題の方に向いてしまいますよね。

坂入
そうですね。でも考えてみたいテーマですね。

能登原
最近はユーザー系の企業は、あまりそこまで考えてはいないのではないでしょうか。すごいことを考えている人は、最近ベンチャーにいるのかなと私は思っています。そういうのはアメリカのほうが強いですよね。マイクロソフトとかも研究していますからね。

坂入
なかなか日本人は新しい発想ができないんですかね。

能登原
日本人は現実の問題に没頭しすぎて、全然違う発想というのが出てきにくいですよね。

坂入
やっぱりそのあたりは私のいる技術部のような部門が考えていかないといけないんだろうし、当社にはその土台があるということだから、まだマシなんですかね。土台だけでは何にもなりませんけど(笑)。
でも、ちょっと話が逸れるかもしれませんが、我々技術部のような組織があるというのは、すごく大事なことだと思うんです。どちらかというと、今より将来をみているところがあるし、直接収入を得るわけではない後方支援の仕事だし、会社のトップ次第ではもっと今を、もっと目の前の仕事を、っていう考え方もあると思うんですけど、それだけじゃいつか行き詰ると思うんですよ。
でも、そういった部署で仕事をさせてもらっている分、プレッシャーはあります。端から見るより大変なんですよ(笑)。

能登原
例えば御社が先ほどの自動化の仕組みをつくって、それをどんどん拡張して、開発の生産性を上げていくとか、そういうところまでいけるようになるといいですね。

坂入
まあ、自動化はよく考えないといけないと思いますが、ホント、やりたいことは、いっぱいあるんです。

能登原
坂入さんと話していたら、私も楽しくなってきました。やることがいっぱいあるから。

坂入
こう言うことをいっていると、上が「じゃあお前、それもやれ、あれもやれ」って言いそうで怖いですけれど(笑)。

能登原
少しでも実現できるよう、頑張ってください。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

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