2010年1月 4日
森川 富昭さん
徳島大学医学部・歯学部附属病院 病院情報センター
センター部長 病院教授
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森川 富昭さん(もりかわ とみあき)さん
徳島大学医学部・歯学部附属病院 - 病院情報センター
センター部長 病院教授 - マサチューセッツ工科大学とハーバード大学でMOT(技術経営)を受講し、神戸大学でMBA(経営学修士)を取得。2009年、徳島大学病院 病院教授。
- 現在、病院情報センター部長として大学病院のIT化を担当。 電子カルテの構築や医療経営に携わる。専門は医療情報学と医療経営学。40歳。徳島 市在住。
企業との関係は大事
能登原
先生は、ベンチャー事業を起業されないのですか。
森川
ベンチャーを私がやるというのは、レベル的にも出来ません。おそらく、業務も経営もいやでもずっとやらなければならないので、私には向いていないと思っています。技術とかいいモデルを企業と共同研究をし、権利は企業に渡す代わりに、共同研究費を提供してもらう形をとってもらう方がいいと思っています。そのような形で医療に関わる企業、例えばジャストシステムの医療辞書とかPSCの電子ペンの仕組みとか我々と共同研究して、これらの会社は儲かっています。
能登原
大学にとってもWinですし、企業にとってもWinですね、Win-Winの関係を作っていっている。世の中に貢献してますね。
森川
私が言っているのは、企業をベンチャーと思ってはいけない。つまり、パートナーだということです。普通、大学の人って企業に対して偉そうです。何様やと私はよく言いますが、企業を、ひとつのモデルを一緒に考えるパートナーとして考えるべきです。だから、企業を待たしてはいけない。企業が来てくれたらコーヒーをちゃんといれなさい。ちゃんとあいさつをしなさい。まずは、そこから変えましょう、という働きかけをずっとやってきました。しかし、事務方は、中々変りません。変らないことには、知恵が出なくなり、コストだけを考えるようになってしまいます。
能登原
森川先生のような考えで企業に接しないと企業側のモチベーションは、下がりますね。
森川
そうですね。当然、企業のモチベーションは、下がりますし、がんばってくれません。だから、メインのベンダーはNECですからNECにも感謝しろと言っています。我々は、どのようなニーズがあるのかまず病院内ですべて考えて、ある程度絵が出来た時点で企業を呼んでこれで出来ますかという話をするべきです。何でも呼ぶと全部企業の営業費になってしまいます。また、よくうちの部員に言うことは、企業は“お客さん”ということで我々でも先生、先生と言われますが皆この椅子に頭を下げているのであって、人が変ってもこの椅子にいくらでも頭をさげることができると。だから、私が来月から花屋を開業した場合、今付き合ってもらっているパートナーが何人買いに来てくれるかが本当の信頼関係であって、そのようにがんばってくださいととにかく言っています。
能登原
それは、大切ですよね。最後は、人と人との関係ですからね。
森川
絶対そうだと思いますね。信頼関係を配慮すると一生懸命に皆様考えてくれます。もっとこうしたほうがいいとか、ああしたほうがいいとか言っていただけます。うちとのお付き合いのある企業は、ありがたいことに本当に皆様よくやってくれています。また。教えてもくれます。そういう意味では、本当にありがたいぐらい企業にはお世話になっています。そういう大学は、まず珍しいと思います。
目標とする次のテーマは?
能登原
PDCAサイクルというか、毎年いろんなことをやり続けながら改善をされているのですか。
森川
はい。目標管理ではないですが年初に5つぐらい目標を立てます。研究的なこともありますし、現場のことで何をするとか、どういう改革をするのかなどがあります。実行しないと他の大学人と一緒になってしまうので必ず実行します。そして、実務家になれと皆にも言っています。
能登原
次のテーマは、なんでしょうか。
森川
研究者を支援するための仕組みを事務方に作ろうと考えています。アメリカでは、研究者が研究に専念できるように外部資金獲得のための企画書作成とか、機関、企業とのマッチングを支援する仕組みがあります。日本の場合は、探してはきてくれるのですが企画段階では全部教授とかが、企画書を書かなければなりません。
能登原
先生とか教授とかですか。
森川
はい。国に提出する資料などは、非常に大変です。いわゆる仕様書ですね。そういうのを何でサポートできないのかがわかりません。だから、医療の世界で医者をサポートするための仕組み、つまりESをあげるための仕組みがいると思っています。今後は、このような研究者へのサポートをやりたいとうちの教授とも話しています。これはどこの大学にいっても売れると思いますよ。
能登原
そうなると事務方の人もやっぱり能力が必要ですね。中々システム化だけでは、対応しきれないでしょう。
森川
やはり事務の人は、公務員なのでキャリアアップの仕組みがありません。それに、インセンティブもない。企業みたいにがんばったらインセンティブで出世したり、お金をくれたりとかないので、公務員にとってのインセンティブは何であるかを考えるのは非常に重要です。私はよく「何で森川君はそんなにがんばるんだ」と言われます。収益をあげたって私の成果になりませんし、むしろ論文を書いた方が私の成果につながります。普通に考えたって評価の仕組み、評価の指標はちょっとおかしいと思います。ただ、私の周りには見てくれている人もいるので助手から教授にしてもらいました。私は、5年目で教授になりましたが通常国立大学で5年では、教授には中々してもらえません。そういう見てくれる周りの人がでてきたということは、時代は変ってきたと思います。私にとっては、ありがたいことです。
能登原
優秀な方がやめて企業に移られるのは、大学にとっても損失ですよね。目標管理などはMBA取得時に勉強されたのでしょうか。
森川
目標管理は、全くしてないですね。MBAに行って良かったのは、色んな戦略とか会社の経営のケーススタディ、フレームワークなどを学んだことです。私は、SWOTなんかも知りませんでした。そのようなツール使ってどのようにして相手を納得させる企画書を作るかなどを勉強しました。それを自分なりに解釈して、自己流ですけれども現場とやるときは、こうしなさいという仕組み作ってきました。また、うちもホワイトボードとかを置いていますが、ここに書いて見える化をした後にパワーポイントに落として資料作りをして相手に伝えましょうとずっと言い続けてきて、大分周りはできるようになってきました。ただ、目標管理は、経営企画会議に提出するのですがいつまでに何をしますということしか書いていません。あとは、日々えいやーでやっています。あと、私は病院だけにいません。企業のコンサルティングをやらせてもらったりとか、新聞社のコンサルティングをやったりしています。それらの現場で見聞きしたことを病院にどのようにマッチングさせるかとかを考えることが、知恵になりますね。
能登原
大学は、意外と自由なんですか。
森川
病院以外の仕事を行う場合は、兼業申請を出して、自分の専門性、利益相反などを全部クリアしていれば学長のOKが出ます。例えば、私立の先生とか国立の先生とかテレビに出演していますよね。あれは、全部兼業申請を出しています。病院以外の私の報酬は、無茶苦茶安いんです。企業が月50万円出しますよと言っても我々は、大学の本給を超えてはいけない規則になっています。つまり、本給を超えるということは、違う仕事をしなさいということになるのです。でも、これしか払えない大学が悪いんだと私は言っています。だけどそんな論理は、通りません。我々は、企業に一生懸命色んな提案して、いいモデルを結構作って、なおかつ安いので喜ばれます。
能登原
一緒に仕事がしたいですね。
森川
はい。一緒に組みましょう。大学以上の報酬は、もらえませんがそれでも好きなことができるので大学にいるという感じです。好きなことが出来なくなったら、大学にはいません。外に飛び出して勝負したほうがいいと思っています。
能登原
現在、大分充実した医療におけるITの仕組みを作られていますが今後の予定とかあるのでしょうか。
森川
実は、ニーズ、ウオンツなど大分わかっていて作らないといけないものは、たくさんあります。そのためには、組織をもう少し強くしないといけないと思っています。また企業とは、共同研究において色々と進めています。プロジェクト管理は、ある程度可能ならば企業にやってもらうとも考えています。我々が担当したら適当にやってしまいますので。
(次回に続く)
