2010年1月18日
森川 富昭さん
徳島大学医学部・歯学部附属病院 病院情報センター
センター部長 病院教授
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森川 富昭さん(もりかわ とみあき)さん
徳島大学医学部・歯学部附属病院 - 病院情報センター
センター部長 病院教授 - マサチューセッツ工科大学とハーバード大学でMOT(技術経営)を受講し、神戸大学でMBA(経営学修士)を取得。2009年、徳島大学病院 病院教授。
- 現在、病院情報センター部長として大学病院のIT化を担当。 電子カルテの構築や医療経営に携わる。専門は医療情報学と医療経営学。40歳。徳島 市在住。
病院CIOって?
能登原
森川先生の活動の中で、病院CIOがありますが、実を言うと私初めてそのような活動があることを聞きました。病院CIOというのは、あまり耳慣れない言葉でして、導入しているのは相当早い方だと思いますが、導入の経緯とかお聞かせ願いますか。
森川
導入は、していません。私が勝手に言っているだけなんです。8月から病院CIO研究会を立ち上げました。実は、そこに協賛してくれている企業は、元々共同研究とかでお付き合いのあった企業を呼んでいます。あと、外資系の企業も入れています。なぜかというと外資系はフレームワークを持っているのが理由です。CIOと言うとどうしてもITと思われがちですが、やはりITではなくて情報戦略部隊であり、組織のNo.2として病院長とタイアップし、経営戦略、情報活用を考えるべきだと思っています。研究会では、論文を出すとかそういうのではなくて、経営に貢献するための見える化とITによって、業務効率が本当に良くなるかがテーマです。
能登原
ということは、研究会でやった成果を実践でやっていこうことですね。
森川
はい。普通、学会だと研究が主なので宇宙の話とかいっぱいでてきますが、そうではなくて、完全に実践型で行いたいと思います。リーダ教育とか、リーダはどういう人がなるかとか、院長とのコミュニケーション、理事長とのコミュニケーションは、ちゃんとできているか とかIT用語を使わずにどのようにして、経営と運用とITをミックスして経営者はわかってくれるのだろうかとか、そういうのを皆で話し合うことを考えています。「森川君の経験をしゃべれ。」とよく言われますがまずは、それを話すことで広めていこうと思っています。なぜならば、我々が作ってきた医療におけるITというのが東京大学でもこの4月に入り、また全国の数大学に入りました。だから実績があるので、その仕組みはどうなっているのかとか、病院長とのやりとりの仕方とか、医事改革というのを皆が聞きたいようです。そのような事をどんな戦略でやっていくかとかの話をしながら、また私だけでない事例を持っている方もたくさんいらっしゃるはずなので、そういう人たちを講師にして一緒に勉強会していってよくしていこうと思っています。そこで生まれてくる色んな仕事は、メーカーさんと病院は勝手にやっていただいて結構だと思っています。
能登原
色んな情報が集まりますね。
森川
私が一番嫌いなのは、メーカー批判、メーカーたたきをすることです。講演の際に壇上で「NECさんありがとうございます。」と言ったのは、おそらく私だけだと思います。参加者からは、ブーイングですよ。他の大学の先生からあいつは誰だとか、何でNECに感謝しなければいけないんだとか色々言われます。私は、それ自体がもうおかしいと思っています。だからこそ、発展しづらくなってしまう。メーカーなりの考えもあるし、ずるいとこもありますし、我々もずるいところが当然あるわけですが、そこは、やはり一緒に作っていく仕方のないパートナーであり、結婚したのと一緒だからあきらめろとは言っています。
能登原
結婚しないまでも友情関係にはしたいですね。
森川
そうですね。そうしたらお互いに知恵がでてきます。ですから先ほどの病院CIO研究会の話に戻りますが一緒に考えるパートナー会をメーカー、病院、ユーザが集まって作りたいと思っているわけです。
IT化って本当に効率化?
能登原
先ほどおっしゃられたITを効率化に使うというのは、人手不足と言われている医療においては、その品質を上げることになりますね。
森川
そうですね。医療システムで、非常にレベルが低いとと思うのは、入力の仕組みです。仕組みは、たくさん作るのですが、しかし、どのようなものを出力するかを考えていない。普通は、こういうデータの集計が欲しいから、このようなデータを入力すると決めますが、そんなの全く考えてなくてとにかく入れる。それがまずまちがいであって、普通ITというのはマスターデータをちゃんとすればきれいにデータが流れるのに、マスターデータが医事システム、オーダリングシステム、電子カルテなどばらばらにあり、またそれらマスターデータをつなぐ仕組みとかが必要となります。非常におかしいですね。
能登原
全部のデータをうまく整理するということを考えてやれば全く効率が違いますね。
森川
そうですね。ちょっと前まではデータやシステム間連携の標準化が出来ていなかったですが、今ではデータの整理とか出来ます。でも、まだやろうとしていない。私は、そこがおかしいと思っていて、そういうことを透明化して病院長に教えてあげないといけません。「なぜ、ITで人が余計に必要なんだ」、「何でお金がかかるんだ」、「IT化って本当に効率化か?」という疑問に答えなければなりません。「先生違うんです。こういうことでこうなってきたんですよ。それをご理解ください。」というようなことを言える人が今までいなかったのだと思います。
能登原
そうですね。メーカー側もそれをうまく説明出来てなかった面もありますね。
森川
その通りです。メーカー側は、買ってくれるからどんどん入れていくし、買ってくれても最初は、マスターデータをメーカーが入れてくれますが、その後我々が使うとなると我々自身で独自のマスターデータを入れなければいけない。独自のマスターデータって非常に危険でして、担当者がいなくなったらマスター管理が出来なくなる。そこを私はマニュアル化をして、担当者がやめてもできるような仕組みを作ろうということをずっと言い続けています。
能登原
企業の中においてもデータベースの設計とかデータの品質とかは、本当に重要であり、その部分が上手くいっていないところが多いです。
森川
そうですね。だから以前、能登原さんからプロジェクトマネジメントに関する資料を頂いて、私はプロジェクトマネジメントが成功しないところが本当に多いこと、要求定義もちゃんとできていないと納期も遅れることなどの説明に活用させていただいています。そんなこと当たり前ですよね。うちも売上の5%もIT関係に使っているので、こんなに遅れていいのかとかいうことを、ちゃんと考えないといけないんですよ。但し、機械買うのと、仕様書作るのとでは全く違うので、そういうことを経営者は理解し、最終的にコミットしてくれないと出来ないという話をずっと言い続けてきて、最近ようやく皆さんが理解してくれるようになってきたかなと思います。やはり、理解してもらうには、コミュニケーションを上手にもたないといけません。そうしないと、経営者からみたら「何でお前らは意味の分からん言葉をしゃべって・・・・」という結果になってしまいます。
能登原
そうですね。3文字英語など多いですから外から見たらわかりにくいですね。
森川
結局、ITを導入するとお金は増え続け、人件費も増え続け、意味がわからないとよく言われます。ですので、私は担当者に悲しくなりませんかといいます。そして、ちゃんと透明化して伝えて、改革しましょうと言っています。今まで、自分がやってきたことを私の部下にも分かって欲しいです。実は、今の仕組みにももう飽きています。
能登原
今まで一つずつ積み上げてきて、そして経営とかマネジメントの方に入ってきたら、もうちょっと新しいことに挑戦したくなりましたか。
森川
そうなんですよ。全く新しいことをやりたいです。今度手がけるのは、デジタルサイネージです。徳島県の阿波踊りの時にサイネージ機を設置して、フェリカでピッとやると阿波踊り情報が取れる。でも、私は医療の人間ですからこんなことをやるとおかしいと言われるので、ケーブルテレビに糖尿病のコンテンツを作って流すということもしています。また、 新聞で番組宣伝やってケーブルテレビに流して、今度はそれを1ヵ月後にネットでも流しています。大学のこれからの価値は、全部コンテンツであるわけですからそれをいかにオープンにして、資金を入れるかにかかっています。ですから、デジタルサイネージ機というのを徳島県内の10箇所に入れています。例えば、空港、車が集まるところ、観光施設などです。そこで流すのは、健康と観光と防災です。そして、デジタルサイネージ機の下でピッとやると情報が取り込める。例えば、すだちが売っていたらEコマースで販売する。そうすれば、県内が活性化する。せっかく徳島に来てくれたお客さんにもう一回買ってもらうような仕組みとか、徳島にまた来てもらうような仕組みとかが出来ると思います。そういった企画を県とか新聞社と話をして、今回実験的に阿波踊りの期間にやってみるつもりです。まず、サイネージ機の横に着物を着た女性を立たせて、「携帯でこうやってもらうと無料で情報がとれますのでどうぞ」とやって、携帯電話でピッとやると阿波踊りのお囃子の着うたとかダウンロードできるんですよ。そういう臨場感と現場のリアルとネットをつないでの仕組みを携帯電話でやってしまう。また、有名連がどこにいるかとかを携帯電話でチェックできるようにします。このような企画を作って、お金をとってきて実施する。そして、実験成果がでたら県の予算をつける。
ただ、私は医療の人間ですからそこに健康番組を流す必要がある。例えば、メタボに関する情報も携帯電話で読めるようにして、サイネージ機を病院に置いておけば、待ち時間にピッと携帯電話でやったら読めます。まあ、病院の外でもそういうのをちょっと仕掛けたりとか、変ったことをかなりやっています。私は、じっとしていたら死んでしまいそうになります。
今日、伊豆で公立病院協会の8病院が集まって講演会をしました。事務の若手に対する教育とか医事改革はどうすべきであるかとか、どうやって組織と闘うかなどを話しをしましたが、そこでも変ったことをずっとやっていますねと言われます。また、あなたのキャリアは、どういうところにもっていきたいんですかとよく聞かれます。究極は、自分の趣味だけで生きていってアーティストになりたい。家族も私も好きなことをして生きたい。息子たちが私立のどっかの学校に行きたいというときにお金がないからやめときなさいという親には、ならないようにしたいと思います。
(次回に続く)
