2012年2月21日
設計品質の向上は、日本語の文章力向上が大切
某製造業のシステム子会社における、品質や人材教育を担当している部長と、品質向上に関する意見交換をする場がありました。
その部門が担っている品質とは、プロジェクトの成功要素と同じQ(品質)、C(コスト)、D(納期)です。
その品質を担保するため、社内においては、仕事をするために必要な各種標準類を制定し、また開発の作業効率や作業品質を高めるために、様々なツールを活用しながら、国内外でITの仕事を展開しています。
さらにその仕事の成熟状態を見える化し、維持し続けるために、CMMIレベル5にも取り組まれており、効果も表れてきていると伺いました。
そのように様々な取り組みをされている会社であれば、例えば社員教育として取り組まれていることも、さぞや高度なことなのかと思い、さらにお伺いしました。
すると
「日本語の文書力向上のための取り組みを実施している」
とのお答え。
なるほど、ロジカルシンキングを根付かせるために文書力向上に取り組まれているのだと思い、理由を伺いました。すると、違った意図で取り組まれているのだとのことでした。
<文書力向上に取り組まれた意図>
・システム開発の仕事は、人と人とがコミュニケーションをしながら進める。
・そのため、相手の立場や作成する資料の位置づけに応じた、適切で読みやすい表現で文書を書くことで、伝えたいことが相手に伝わり易くなる。
・論理的に文書を書くことは重要。しかし単に論理的な文書表現だけでは、読み手に取って、読みにくい文書となる。やはり伝える相手を意識した読みやすい文書を書くことを意識することで、相手の意図を考え、考えられた文書でかつ表現も洗練される。
・そのような取り組みをすることで、システム開発で作成する各種資料の作成品質も向上する。
このことは、「国語力は人間力向上につながる」というタイトルで、昨年10月11日付で配信したメルマガにて、私がお伝えしたかったことに近いと思いました。
http://www.promane.jp/master/takeuchi/2011/10/000968.html
この中では、次のようなことを書いておりました。
京都女子大付属小学校では「国語力は人間力向上につながる」という考えで、次のような取り組みをしている。
「国語力」、つまり
・読む力
・書く力
・話す、聞く力
・言語の力
を基礎とし、かつこのことの実行に徹底的にこだわっている。例えば、子供たちが、中途半端な日本語で会話をした場合には、正しく適切な日本語に言い直させるまで教師は繰り返し訂正を求めることをしている。
この日本語、正しく適切に話すためには、相手にこちらが伝えたいことを5W1Hなどの要素を正確に盛り込んで伝える必要がある。
さらに“正しく適切な”日本語を使う際に最も重要だと思ったことは、「相手に伝えようとする意識を持つ」ということ。
相手に自分の考えを伝えたいと思えば、仮に5W1Hの文書構成になっていたとしても、自分都合で話しをしたのでは伝わらない。相手の性格や年齢(≒スキル)、場合によっては文化を踏まえた表現で話さなければならない。
そのためこの学校では、「丁寧語」を使うことも徹底して行っている。
人と人とがコミュニケーションするための基礎である「文書力向上」の大切さを、改めて感じさせられた意見交換の場でした。
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このページへのコメント一覧
「設計品質の向上は、日本語の文章力向上が大切」には賛成ですが、もう少し突っ込んで言うならば、「会話能力向上が大切」ということではないかと思います。
設計品質の向上は、お客様の要求をできる限り正確に理解し、理解したことを要件定義として文書に表現することから始まると思います。要件定義自身が設計行為ですから、プロジェクトの目的、目標、期間や予算に適合する要件定義に追い込んでいく過程でお互いの意思を正しく伝え合うことが非常に重要であると考えています。文章力は意思を文章という形で相手に正確に表現する会話能力です。会話を成り立たせるためには、相手の表現を理解する力、特に字面だけではなく、その背景を理解し、字間、行間を理解する能力も非常に重要です。理解力と文章力が高くなって、高度な会話力が生まれると考えています。
ワープロがなかった駆け出しエンジニアの時代に先輩エンジニアから何度も報告書の駄目出しをされ、書き直しをしました。こうした過程で文章力は鍛えられてきたと感じていますが、今の職場では時間に追われて、部下が作成した文書を先輩や上司が読んで何度も推敲させるということはありません。
また、いろいろな場面でPowerPointが使われることが多く、フルに文章で表現するのではなく、プレゼンテーション風の表現と口頭説明で済ませるという風潮も文章力低下の一因となっているように感じます。
やはり、しっかりとした文章を作成する能力、文章を理解する能力を高めることは、基本中の基本としてとても重要と思います。
投稿者:keith 2012年02月28日 08:37
ご丁寧な返信、誠にありがとうございます。
コメントいただいた「会話能力向上が大切」には、私も強く共感いたします。
会話力向上は、理屈だけでは身に着けることは出来ないスキルであると感じております。
人は必ずしも、自分の思いを正確に相手に伝えているわけではありませんので、コメントいただいた
「その背景を理解し、字間、行間を理解する能力も非常に重要です。理解力と文章力が高くなって、高度な会話力が生まれる」
は、本当にそのように思います。
またそのようなスキルを身に着けるためにコメントに書かれ、また私も経験しました
「先輩エンジニアから何度も報告書の駄目出しをされ、書き直しをしました」
が、今から考えてもとても重要なことであったと痛感しております。
さて先日、次の本を読みました。
遠藤 功,山本 孝昭 (著):「「IT断食」のすすめ」日本経済新聞出版社 (2011/11/10)
この本の中にも、IT依存症による弊害が書かれています。
その中でも、安易なメール処理による読み手の負担や、人と人とが直接会話をしなくなったことによる相手の気持ちを理解する能力の低下などが書かれています。
非IT化の時代とIT化の時代の両方を知っている我々だからこそ判る、双方の利点を生かした適切なコミュニケーション方法を自ら実践し、IT化時代しか知らない人たちに啓蒙してゆくことが使命として求められているのではないか、そのようなことを最近強く感じている次第です。
投稿者:竹内 博樹 2012年02月28日 10:57
