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2006年9月22日

【林衛の業界探求シリーズ】ユーザ企業のシステム部門がITを変える~依存状態→主体的(利己)→相互依存(利他)という進化過程~

繁野高仁さん

繁野高仁氏プロフィール
1953年生まれ。1977年 北海道大学工学部電気工学科卒業し、日本NCR入社。1985年 DDI(現KDDI)に入社。DDIとDDIポケット(現ウイルコム)の創業に参画し、情報システム部門の責任者として社内システム全般を統括。2000年からは、DDIとKDD、IDOの合併に伴うシステム構造改革を推進し、昨年度の日経コンピュータ誌「情報システム大賞」グランプリを受賞。情報処理学会、経営情報学会会員。

開発終了はあくまで通過点 システムを使う側の文化が大切

繁野高仁さん


私は情報産業のトップの方々にインタビューをする機会が多いのですが、マネジャ層の育成について非常に問題意識を持っておられると感じます。すでに、繁野さんのところでは次の世代の人材が育っているということですね。

繁野
さまざまな分野で私にない強みや優れたものを持っている人たちがいるわけですから、その良いところを結集することが大事だと思います。優れた組織ってそういうものじゃないですか。だから、私はどこか「とんがった」人が好きです。DDIやポケットの創業に参画して、ものすごくとんがった人をたくさん見てきましたからね。そういった視点で見れば人材はたくさんいるわけです。


つまり社員の皆さんには、かなりとんがった方がいらっしゃる。

繁野
組織が大きくなると、創業期に活躍したようなとんでもなく「とんがった」人は出にくくなって来たとは思いますが、人間誰しも個性がある訳ですから、どこか「とんがった」ところをもっているはずです。ただ、とんがっているということは、山が高ければ谷も深いので、全体をまとめるというのはなかなかたいへんな面もあるんですけれどね。今後KDDIが成長するためには、とんがった人材がますます必要だと思いますし、彼らをうまくまとめることが出来るタイプの人材もいります。そういう人たちが仕事をしながらどんどん成長してくれて、私がいなくてもいい状態にするのが最終目標ですね。それで初めて私の仕事が完成すると考えています。

システムは開発それ自体で終わらず、保守したり運用したり、さらにはそれを使う人たちと組織があって成り立っている。ですから、システムを使う人や組織の文化が大切なんです。良い文化がきちんと定着すれば、簡単には変わらない強固なものになります。そういう文化をきちんと残すことが一番大事で、創業期にそれがきちんとできれば良い文化を持った企業として長続きする。創業期にそれがないと、ふらふらしてどこかでダメになったりするんだと思います。だから少なくとも私がやっている情報システムに関しては、情報システムに関する基本的な考え方を根付かせたい。そこが最後に仕上げなければいけない一番肝心の部分だと思っています。


その文化を根付かせるために、いろいろな活動が必要かと思いますけど、そこはどういうふうになさっていますか。

繁野
それは日頃の仕事を通じてですね。


居酒屋で腹を割ってということはないんですか。

繁野
私はアフターファイブは苦手で、ほとんど付き合わないんです。だから仕事を通じて、さまざまな案件に対して自分の判断を示す時に、ミッションステートメントや考え方を提示して「それについて具体的にはこういうふうに判断するんだ」とかいう話をしています。結局、組織文化はそういう日頃の言動を通じて形になっていくものだろうと考えています。そういうふうに自分の身近にいて、影響を受けて変わった人間から徐々に広がって組織全体に浸透していくのだと思います。最終的にはベンダーさんを含めて変わってもらわなきゃいけないんで、ベンダーさんに対しても同じように働きかけています。

成功への最短距離を行くための目標設定&情報共有と構造化

繁野高仁さん


社員の数よりベンダーの数のほうが多いんじゃないですか。

繁野
うちの本部は合併したこともあって社員数は400人近くに増えましたけど、外部は2千数百名ですね。


そうするとベンダーを含めて変えるというのはなかなかたいへんなことですね。お付き合いの長いベンダーさんが多いのですか。

繁野
多いですね。それがないと少数の社員だけで全体をコントロールするのは難しいので、それぞれ位置づけを決めながら、信頼関係を結びながらやっています。単に契約で縛るという話では全然上手くいかないです。


そうすると社内ではベンダーさんも社員の方もワンチームなんですね。

繁野
ええ、その中でそれぞれの最適な役割分担を考えて欲しいと言っています。ただ放っておくと、うちの目標とベンダーさんの目標がずれてきますよね。


それはもともとの目標が違いますからね。

繁野
同じ事業をやる仲間として、共通の目標を上手く設定して、それに向かってそれぞれのポジションで責任を果たしていきましょうということにつきると思います。


全くその通りだと思います。

繁野
私は特にDDIポケットにいた時にそれを痛感したんですよ。何人か若いのを連れていっただけで、ほとんど単身で乗り込んで、立ち上げのためのシステムを作らなければいけない。でも社内には人がいないわけです。それでもやる気さえあれば何とかなるもので、たまたま知り合った大和総研と波長が合って全面的に協力してもらえました。仕事だから協力するのがあたり前と思うかもしれませんが、そんなもんじゃありません。いつまでにどんなシステムを作れば良いのかまったく分からない中で、簡単な契約だけで引き受けざるを得ない。大和総研にとってもたいへんなリスクがあるわけで、企業としてリスクを負う姿勢と人間的な信頼関係がないとできません。事業を立ち上げるという共通の目標に向かって一緒にリスクを負うのであれば、外部だからと言ってそこで垣根を作ってもしようがないんですよ。したがって、大和総研が私にとっては情報子会社みたいなものになりました。


最初から一緒に考えようと。

繁野
そうです。最初から一緒に事業を考えてくれというかたちで入ってもらいました。システムが出来ても事業が立ち上がらなかったら、ベンダーにとって結局何をやったか分からない。成功させるためにどうするかを考える。そのためには「言った。言わない」みたいな低レベルの話はどうでもいいんです。仕様書だって必要最低限にすればいいし。たとえ大和総研がミスってトラブルを出したところで、私はそれをペナルティーだと騒ぎ立てるつもりは毛頭ない。自分たちでやったってミスはあるし。逆にそんなことで相手を責めると「ペナルティーが怖いから何でもかんでも仕様書に書いておく」とか、「テストいっぱいしました」というようなエクスキューズで肥大化しちゃう。


無駄な部分でエネルギーを使い、時間もどんどん過ぎていく。

繁野
「最短距離をいけばいいですよ」ということでやってきて、何も問題ないし、いまだに「情報の壁を作らない」という考え方でやっています。自分たちの目標をしっかりベンダーさんにも伝えて、本心から「それに参画して成功させるんだ」という思いや考え方を持ってもらうように努力する。それと同時に、DDIポケットではなるべく小チームを作って、システム仕様の作成からコーディング、テストまでなるべく同じチームの中でやっていくような体制に切り替えたんです。そうするとコーディングする人まで自分がやっていることが分かる。通常のように工程別にしてしまうと、プログラムを書いている人は何をやっているか全然分からない。

なるべく全体のアーキテクチャをきちんとした上で、それぞれのパーツでは一気通貫で分かるようなかたちで仕事をしてもらうことが大事だと思います。そのためにはぐちゃぐちゃなシステムじゃダメなんですよ。みんな独立して仕事が出来るようなかたちに、上手く構造化しないとできない。私がいろいろなところで「構造化しましょう」と言っている背景にはそういうこともあるんです。

ユーザー、ベンダー、教育機関の三者に今こそ変化が求められている

繁野高仁さん


繁野さんのお考え、よく分かりました。繁野さん個人としては、将来はどういうことをやっていきたいですか。

繁野
なにしろ行き当たりばったりですから(笑)。ただ、日本の情報システムを取り巻く状況は非常に問題が多いと思っています。個別企業ごとに受託開発をして来た結果、ソフトウェア工学を無視した場当たり的なソフトウェア開発が横行しています。その結果、システムが無秩序に肥大化し、大企業ほど巨大なソフトウェアの呪縛に苦しんでいます。私は16年前に手島さんと出会って以来、手島さんに教えてもらいながら、そのようにはならないシステム作りに挑戦して来ました。その結果、自分なりに納得できる実績ができたと思っています。この貴重な経験を、何らかの形で社会に還元できればと考えています。情報システムの高度化・大規模化は、今後益々加速して行くと思います。日本の企業が今のようなソフトウェアの作り方をしていては、今後欧米の企業に伍して闘っていくのは難しいのではないでしょうか。これは日本のITベンダーさんだけで解決できる問題ではなく、基本的に発注側である情報システム部門がしっかりしないといけないと思っています。


私はユーザ系企業の成功というか自信というのがベンダーや世の中を変えると思っているんです。

繁野
本当におっしゃる通りで、ベンダーさんに意識のある方は結構いらっしゃるんですよ。結局、そういう人たちがいいシステムを作るためにいろいろなことをやろうとしても、金を出す人たちが理解出来ない。「そんな面倒なことをやらなくてもいいから、さっさと言ったものを作れ!」という話になるわけですよ。だから発注側がもっと育たないと良くならないですね。私はそういう立場にたまたまいるので、なんとかできることはやりたいと思っているんですけど。


ぜひその辺りを期待しています。私が会社を作ったとき「アイ・ティ・イノベーション」という名前は「改革を支援する、改革を一緒に考える」という気持ちでつけたんですが、ユーザーの方がどんどんそういう活動をして頂けるのが一番ありがたいし、世の中を変えると思っています。

繁野
うーん…そうですね、でも情報システム部門の立場って非常に微妙ですよね。


微妙ですね。会社によって違いますけど。

繁野
私みたいにはっきり言わなくても、日本流のやり方を変えなければいけないと思っている方は多いと思うんです。だけど、日本の社会的な背景として、欧米よりも就社意識が強い中で、ユーザー企業内で情報システムの専門家が育ち難い面があります。どのユーザー企業でも同じですが、情報システム部門の社員には本業とは違う専門性が要求されるわけです。それも、ユーザー側の価値観を貫くためには、ベンダー側に対して相当なリーダーシップを持てるだけの能力が必要です。発注者としての権限に依存しているだけでは、どうしようもないんです。しかも、経営に役立つ情報システムを作るためには、ITに詳しいだけではだめで、経営的な観点から全体最適を追求する必要があります。全体最適と言うと聞こえはいいですが、要するにいかに切り捨てるかと言うことですから、もともと現場主導でやって来た日本企業には難しいことです。したがって、情報システム部門が真面目にやればやるほど、社内中からの不満の声を受けることにもなりかねません。最後は社長のリーダーシップしかない訳ですが、ここにものすごくギャップがあると思います。欧米では、CEOがCIOを全面的にバックアップするのは常識だと聞いていますが、日本では社長が個別最適の代弁者になってしまう。システム開発についても、自分たちの能力を考えながら、機能、納期、品質、コストなどについて、経営的な観点からのバランスをどう取るのかが難しいわけですが、日本では現場の声を良く聞きなさいとしか言わない社長が多いわけです。結局、何のバックアップもなしで、CIOが全責任を背負わざるを得ないことになる。


繁野さんのような上司がいる会社の社員は幸せだと思います。

繁野
それはどうだか分かりませんが、リスクを部下に転嫁するような生き方だけはしたくないですね。

少子化時代にありがちなリスク回避のし過ぎはかえって危険

繁野
しかし、私もちょっと反省しているんです。社員と個人的に親しく付き合うタイプではないので。年代とか権限が違うと興味の持ち方とか随分違いますから、なかなかそういう距離感って難しいですよね。昔、先輩に「お前はもっとバカになれ!」(笑)と怒られましたけど、なれないんですよ。


型破りで枠から外れた人っていうのは、ちょっと減りましたよね。

繁野
むしろ逆の意味で何か危ないのが最近多くて。情報システム関係でも、昔より精神を病む人が増えたんじゃないかという話を聞きます。デスクワーク中心の頭でっかちの仕事をしていると、そういうふうになりやすいのかもしれない。私も昔SEとして開発に没頭していたときに、買い物に行っても店員さんとうまく話ができなかった覚えがあります。そのときの人間関係が上手くできなくなるような妙な感覚を覚えていますけど。まあ、いろいろな考え方の人が適度にミックスされている状態がよいのかな。組織が大きくなると何事もコントロールする方向に行きがちですが、人間を育てると言う面ではあまりよくないですよね。


今のように少子化の時代ですと、親が子どもに対して必要以上に面倒をみすぎなんですよ。子どもは良い子で「はいはい」と言うことを聞いていますけど、危ないですね。もっとほったらかして育てたほうがいいかもしれない。確かにリスクはありますけど、そのリスクを恐れていたら、皆が変になってきちゃう。

繁野
そこまで温室育ちでね、いきなり社会の厳しい風に当てたってみんなとまどいますよね。だから新入社員を見ていても、本当に真面目でみんな優秀だと思うんですけど…でも目立たないですね。親には子供の行動が危なっかしく見えて「なるべく危ないところに近寄るな」と先回りしてガードしてしまうから、失敗の経験が積めないみたいなところがあるのかな。


繁野さんの場合は、北海道大学に入った時に、ご実家から遠く離れて全く異質な環境で揉まれたわけですよね。

繁野
私は親から離れてよかったと思っているんです。親は都会育ちだし、きめ細かく子どものことを管理するようなタイプで、それがすごく嫌でね。
家内は北海道の開拓農家に育ったので、私と正反対なんですよ。北海道で子どもが生まれてヨチヨチ歩きの時に、まわりに柵も作らずにストーブを家の真ん中にどんと置いていたんです。私が冷や冷やして「やけどするじゃないか」って言ったら、家内は「そんなもの、一度熱い思いをしたら二度としないから大丈夫なの」と言うわけですよ。そういう感じ。うちの家内は面白いですよ。開放的で、どこへ行ってもすぐ友だちを作っちゃってね。だんだん私も向こうに同化させられて(笑)。本当に「ああ、これでいいんだ」と随分勉強になりました。


それは、それは(笑)。自分と異質のものを面白がって受け入れられるというところも繁野さんの懐の深さだと思いますが、北海道に行ったのは繁野さんにとって本当に大きなターニングポイントだったんですね。
まだこれから、新たなターニングポイントが3つ4つ起こりそうですけれど。

オープンソース・ソフトウェアにみる利己から利他への社会進化の息吹

繁野高仁さん

繁野
今私が関心を持っているのは、オープンソース・ソフトウェアです。これは非常に可能性があるのかなと考えています。この前の講演会でも富士通総研の前川さんに話をしてもらったんですけど、ニュートーキョーさんが自社用に2千万円くらいかけて開発したEDIのソフトを無償で公開されて、同業他社さんがそれを改造して使っている事例でした。ニュートーキョーさんにとっても、改造して機能アップされたソフトウェアを無償で使えるメリットがある。ユーザー企業にとっては、これまで別々に同じようなソフトウェアを開発して来たわけですから、これが上手くいけば非常に大きなメリットがある。こういうものが上手くいくようなスキームというか、前提はどういうものなのか。当然、相当にハードルが高いものと思ってはいるんですけども。


そうですね。どういうビジネスモデルが成り立つのか。

繁野
システムのアーキテクチャ自体を、うちがやっているようにみんなが整備していけば、有効に活用出来る分野が徐々にできてくると思っているんです。それができると、われわれもソフトウエアの再利用ということでコストが安くなるし、ソリューションベンダーさんもそれを使ってどんどんいいソリューションが出来る。面白い可能性があると思います。だから経営情報学会の研究会ではそれを一つのテーマにして、みんなで考えてみたいと思うんです。

私は最近思うんですけど、オープンソース・ソフトウェアの本質って、「他人のために」という利他の精神じゃないですか。実は昔から稲盛さんがそういうことをおっしゃっていた。だいぶ昔に聞いた話に、天国と地獄の違いという話があります。大きな鍋があってグツグツ旨そうなうどんを煮ている周りに、何十人もの飢えた人々が集まっている。でも、そこには長い箸しかないんです。地獄の人たちは、その箸を取り合って我先に食おうとするんだけど、あんまり長い箸だから口にいれることができない。ところが、天国では長い箸を使って向かいの相手に食べさせてあげるから、みんなが満腹する。まさに利己と利他の違いですよね。考え方一つで同じシチュエーションでも天国になったり地獄になったりする。オープンソース・ソフトウェアの話を聞いてそれを思い出したんですよ。


ああ、なるほど。

繁野
自分がお金を出して自分に権利があるソフトエアを無償で相手に提供するというのは、まさに利他の精神ですよ。それを利用した会社がそのソフトウェアを改造して、さらにいいものにしたら「どうぞ」と返すわけじゃないですか。そうするとこれは稲盛さんが言っていた天国と地獄の天国だと、そういう気がしてね。これは正しい道なんじゃないかと。


ちゃんと心がきれいな人がリードしないと、すぐ地獄の者が出て来そうです(笑)。そのあたりのメカニズムが問題かもしれませんね。

繁野
私は『七つの習慣』っていう本が好きなんです。あれは基本的に、依存、自立、相互依存の三段階に分けられている。利他は相互依存の世界です。そこに至る以前は利己の世界で、これは自立して主体性を発揮するレベルですよね。だから利己から利他に進化する。一方、利己のさらに前段階として、赤ちゃんのように全く主体性がない依存状態がある。赤ちゃんのときは全部おまかせだったのが、自立して利己のレベルになり、もっと成長すると利他のレベルになって、相互依存による理想的な世界ができる。他力本願とは他人任せにすることではなく、他人のために尽くす相互依存のことを言っているんですね。

たぶん社会も同じようなもので、みんながその時の為政者に対して依存して口を開けて食べ物を与えてくれるのを待っているような状態があります。それに対して、個人個人が主体性を発揮して、まさに小泉さんの構造改革ように「もっとみんな主体的に生きろ」「自己責任だ」という状態。これは利己の世界になろうとしていると思うんですね。でも、さらにその先があって、相互依存の世界というのは、利己の集団がさらにその上のレベルに行かなければいけない。


そうですね。精神レベルが違いますね。明らかにひとつ上の段階に進化する。

繁野
そう。たぶんそういう発展段階が、人間にも社会にもあるんです。日本の社会は今、依存状態から少し利己的で主体性を発揮するような社会に移り変わろうとしている。そこに問題があるからと言って元の依存状態に戻るのではなく、今度はもっと上のレベル、利他の世界、相互依存の世界にもって行かなければいけないんだろうと思います。たぶん、それには相当な時間がかかるでしょうけど。


利他の世界、相互依存というのは、自立性というか、自分自身の生き方がはっきりしていないとそれが成り立たない。

繁野
だから自分を持った個がなければ相互依存の世界に行けないんですね。


そこをみんな勘違いするんですね。

繁野
そういうことを考えると、われわれのように相対的に力のある企業は、まさに次のレベルのところを具現化して行かなければいけないんですよ。


そうですね。そう思います。

繁野
どんどん社会還元して、相互扶助の力が増すように動かなければいけない。逆に力のある企業が利己的に振る舞っていたら、社会全体が利己的な世界、地獄の世界になる。
ただ、まずは自分から提供しますという話は、余裕がなければできないです。みんなが他人任せな世界で「どうぞあげます」って言っていたら、自分は何も食えなくなっちゃう(笑)。


自分がちゃんと食っていて、というのが前提にありますね。

繁野
自分が利己的に生きられるという前提があっての利他でしょうから。


そう、利他の世界を求めながらも、一見逆に振る舞わないとそれが実現されないという部分があります。でも、おそらく日本の場合は、普及し始めると一気に行くでしょう。それまでは、膠着状態が続きますけれど。

繁野
そうでしょうね。だからこそ、地獄と天国の話を念頭に置いて、自分たちがやってきて効果的だと思ったことは社会に公開して「どうぞ使って下さい」とやっていくつもりです。だから頼まれればいろいろな企業で話をしたり、できる限り協力をしますと言っているんです。そうすることによって、日本の情報システムを取り巻く困難な状況が、少しずつでも改善して行けば良いなと思っています。最近、大学でも情報関係は全然人気がないと聞いていますが、情報システムの本質を考えると、これからの日本にとって本当に大事な分野だと思いますし、日本人の気質にも向いた仕事ではないでしょうか。この分野の仕事が、日本の社会でもっと理解され、正当な評価を受けられるように頑張りたいと思います。


そこまでいくと、ITだけに限らず、社会全体の状況もだいぶ変わってくるでしょうね。
今日は本当に、繁野さんのお考えをじっくり聞けてよかったです。非常に濃い話になりました。ありがとうございました。

(終わり)

構成;萩谷美也子

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