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2006年12月22日

【林衛の業界探求シリーズ】第一回 プロジェクトの成功の鍵は業種を超えたチームワークにあり!

佐藤成徳さん

佐藤成徳氏プロフィール
日本ヒューレット・パッカード株式会社
執行役員 通信・メディア営業統括本部長
1984年日本 ディジタル イクイップメント(現日本ヒューレット・パッカード)入社以来、一貫して大手通信事業者向けにシステム営業を担当してきた。止めて はいけないシステム、大型のシステムなど通信事業者の基幹システムを数多く手がけてきた経験を持つ。

プロジェクトに対して担当営業が果たすべき役割とは:

佐藤成徳さん


御社のインダストリマーケティング部から、「営業のリーダー、マネジャ向けにPM研修をしてほしい」というお話をいただいた時、驚いたと同時に非常にうれしかったですね。その発案者が佐藤さんだということで、今日は直接お話をお伺いするのを非常に楽しみにしていたのです。

佐藤
確かに私が言い出しましたのが始まりですね(笑)


当社のPM研修は1999年に私が開発し、7、8年にわたって改善してきました。このPM研修を実施するときに、受講者の皆さんから「営業段階」がいつも必ず話題に出てくるわけです。そのため、技術者がきちんと体系化されたものを覚えても、営業の方々に考え方が共有されないとなかなか上手くいかないという問題意識を私も持っていました。それでこの度、日本ヒューレット・パッカード(以下「HP」)さんのほうで非常にいいところに着眼点を置いていただいた。ご依頼になった当時の問題意識をお聞かせいただければと思います。

佐藤
日本HPという会社は、もともとの日本HPとコンパック・コンピュータが合併した会社です。研修をお願いした時はまだ合併して2年目でした。両社の社員は育ってきた文化が違いますし、同時にそれぞれの強みがありました。例えばコンパックは、多様なサーバ製品を揃えると同時に、豊富な経験に基づくSIビジネスのボリュームも大きい会社でした。かたやそれを合併したHP側は、ITインフラ分野に強みを持っており、その分野のエンジニアは豊富だったけれども、いわゆるアプリケーションのソリューション開発、つまりSIの分野はまだまだ発展途上の段階でした。
これから更に積極的にSIプロジェクトを狙いにいくということで、合併の中で開発部隊をもう一度再編し、両社の強みを合わせた新生HPの戦略的組織として再建しなくてはいけないという課題が一つありました。もう一つ、営業の観点から言えば、たまたま私の組織の半分がHP出身、半分がコンパック出身という比率だったのですが、HP出身者には大規模なSIプロジェクトの経験がそう多くなく、プロジェクトをやっていく上で営業がどう支えていったらいいか、理解が不足している面があったのです。プロジェクトを担当しているといっても基本的には営業ですから、プロジェクトマネジャとは役割は違うのですけども、少なくともプロマネと近いくらいの感覚は担当の営業として持っていることが望ましい。そういう意識を持ってもらうために無理を言って研修プログラムを作っていただいたというのがもともとの経緯です。


合併されたということは、言い換えればいろいろな遺伝子の方々が集まっているということで、それは大きな長所につながっていくことでもあります。今回PM研修で実証をしてみて、どういう変化がありましたか。

佐藤
あまりプロジェクト、いわゆるSI技術の経験がない営業というのは、受注をしに行くところまでは、それなりにアクティブによくこなします。ところが、プロジェクトが実際にスタートしてしまうと、「ここからはプロマネの仕事で、自分は中心ではない」というモードに入りやすいんです。それが研修後に変わりました。そのメリットはものすごくあったと考えています。


その、営業が引いてしまうというのは、何が原因でそういう状況が起こっていたのでしょうか。

佐藤
特に外資系でありがちなのかなと思うんですけども、「自分の責任範囲はこれ」と比較的明確に決まっている傾向にあります。そのため「受注したあとプロジェクトをどうやるかというのはプロジェクトマネジャの仕事で営業の仕事ではありません」と、自分の責任範囲について妙な解釈をしているケースが時折あるのです。


ミッションが明確ということが裏目に出るケースもあると。

佐藤
そうですね。プロジェクトがよれてしまった時に、プロジェクトマネジャなりプロジェクトスタッフだけで立て直せるならよいのですが、営業が入らなければどうしても立て直せなくなってしまうケースもあり得ますので、その時に営業がプロジェクトマネジャをサポートできるようにしたかったのです。


いま佐藤さんがおっしゃったことは非常によく分かります。日本のメーカーで優秀だと言われている営業の人は、上手くいっている時は前面に出ないのです。でもトラブルが起こったり、お客様のマネジャクラスが怒ってしまった時に非常にうまく対応しますね。

佐藤
はい。営業はプロジェクトマネジャの前に立つ必要はないのですけども、やはりプロジェクトマネジャをどうやってサポートするかというのは非常に大事です。 トレーニングをやっていただいたおかげで、その部分はかなり変わりました。例えば、プロジェクトを進めて行く中で、お客様との進捗会議なり工程会議なりが当然あるわけですけど、そのミーティングに営業が出ないというケースが結構あった。ところが研修が終わってみると、プロジェクトを担当していた営業は、そのあとは継続的にきちんと出ています。プロジェクトマネジャほど詳しくはないにしても、「少なくともプロジェクトの進捗の概要だけは掴んでいて、何か起こったらすぐ動けるようにしておこう」という発想に変わったと感じています。

営業と開発担当者の視点の違い

佐藤成徳さん


少し具体的な話になりますけれど、研修の大きなテーマがプロジェクト活動の理解、つまりリスクをどう感じ取るか、リスクをどう取り扱うかですが、それについてはいかがですか。リスクという言葉はいろんな解釈ができますよね。

佐藤
ええ。プロジェクトをやっている人たちの使っているリスクという言葉と、営業から見るリスクはだいぶかけ離れているところがあります。おそらくどこの会社も同じだと思いますけれども、開発に携わっている人間の考えるリスクというのは、プロジェクトマネジャなりリーダークラスが病気になったり、お客様との仕様打ち合わせの中でどうしても呑まなければいけない困難な条件が出てきてしまったり、そういったリスクを指していると思います。ところが営業から見たリスクは、プロジェクトがきちんとできないために起こるリスク、言い方は悪いですが、プロジェクトマネジャの能力がないために起きてしまうようなビジネスリスクのことです。


それは納得できますね。

佐藤
例えば、見積もりをお客様のところにお出しする時に、「自分たちの能力に合わせてリスクを積むから、見積もりが非常に大きな金額になってしまう」というふうに営業は感じているわけです。こういうケースもゼロではないと思います。ところが開発の人間から見れば意味合いが異なる。仕様がどこまで固まっているかにもよると思いますけど、プロジェクトの中で生じるリスクについて考える。営業側と開発側と、同じ言葉なのですけれども、指している意味が違うということがあります。


営業の方々のほうがもっとビジネスレベルで、要するに自分たちの仲間としてのチームのリスクを見ているし、お客様との関係も当然もう少し高い次元で見られていますよね。

佐藤
特に営業ですと「受注してなんぼ」という感覚があるんですけども、プロジェクトマネジャからしますと、受注するのは別にしても、「消化してデリバリしてなおかつ食わすことができてなんぼ」という仕事ですから。そこの感覚がやはり営業側とデリバリ側ではかなり違いますね。


私の考え方としましては、営業向けのPM研修を通してもう少し営業の方にもプロジェクトの難しさとマネジャやチームメンバの苦労をリアルに分かってもらいたいというのが一つあります。そのあたりは営業の方々にかなり理解していただけましたか。

佐藤
特にまだプロジェクト経験があまりなくて、プロジェクトに近いようなビジネスのスタイルでやっていた営業の連中からしますと、プロジェクトマネジャがどういうことに気をつけてやっていたのか、プロジェクトマネジャが何をしなければいけなくて、どういうことをやってきたのかということを初めて理解できたというコメントは結構あります。


基本的に営業の方はSEというかプロマネの方に比べて、コミュニケーション能力は高いと思うんです。筋のいい方が研修を受けると「プロマネにいろいろ手を出す、口を出す」レベルの人が出現してしまうんじゃないかなと考えてしまうのですが、その点はいかがですか。

佐藤
逆にそこまでの能力があって、きちんとプロジェクトマネジメントができるのであれば、別にそっちに行ってしまえばいいだけですから。それはそれで別に構わないと思います。


相互乗り入れですね。

「叱られ役」営業がお客様の声を開発につなぐ

佐藤成徳さん


ところで、変な言い方になりますが、営業と技術は仲がよいのですか。よく営業と生産、販売と生産というのは、あまり仲がよくないと聞くのですけど。

佐藤
今のHPはいろいろな業種別の組織がありますけど、通信はプロジェクトタイプのビジネスが非常に大きくて、それだけにリスクも大きいです。それもあってシステムインテグレーションの技術をやっている部隊とデリバリの部隊と営業の部隊とでは、おそらく全社の中でもコミュニケーションが一番いい部署だと思います。


他の会社でも同じ通信系の部隊は似た体質というか、わりと密にやっていますね。案件も大きいし、お客さんからも明らかに逃げられない(笑)。

佐藤
そうです。特にメーカーという立場でビジネスをやっていく上で、プラットホームだけ販売しているケースならそれをしなくてもできる可能性はあると思いますけれども、少なくともプロジェクトで契約をして全部を納品しないと駄目という契約が多いケースですと、やはり開発側と営業側とのコミュニケーションがよくないと絶対に上手くいかない。


大きな問題が起こりやすいですよね。ふたを開けてみたら怖いことになっていたというような話をよく耳にします。

佐藤
よくあります。だから起きてからでは遅いので、そうなる危険性を感じた時に、早く手を出せるかどうかにかかってきます。プロジェクトがよれだした瞬間に、コミュニケーションがよくできているケースであれば立て直しは当然早くなりますし。
特にそういう状況になってくると、お客様は当然お怒りの状態になっています。でも、お客様はエンジニアにはそれほど文句は言われないのですよ。


営業の方が打たれ役と言うか。

佐藤
そうですね。間違いなく打たれるのはプロジェクトマネジャと営業です。特に「デリバリの人間たちに文句を言って腐られたら困る」という気持ちがやはりお客様たちにもありますので。彼らにへそを曲げられて上手くやってくれなかったら自分が困るわけですから、そういう人たちにあまり文句を言わないですよ。ところが営業というのは叩いても製品には別に何の影響もない(笑)。文句が言いやすいわけです。


それに比較的、打たれ強そうですし(笑)。

佐藤
ただ、逆に営業にそういうパイプがあるからこそ、お客さんが本音で「このプロジェクトではどれをきちんとやってもらわなければ困るのか」という話をきちんとしていただけます。そういう話をプロジェクト側にフィードバックができるというのがすごく大きな役割です。


この研修はそういう打たれ強い営業をたくさん作ろうというのが目的ではありませんよね(笑)。

佐藤
それはないです(笑)。ただ多少、打たれ強くないとプロジェクトの営業が務まらないところは確かにありますけどね。

理想の営業・その3要素

佐藤成徳さん


HPの営業職の理想の姿というのはどういう感じになりますか。

佐藤
プロジェクトを進める上での営業ですか?


いやいや、一般的に「営業にはこういう奴がいいよ」というレベルで。

佐藤
まず「チャレンジ精神」がある。「誰かがやった経験がないとやらない」とかそういうことではなくて。営業ですと、気を付けないと新しい製品や新しいソリューションをやろうとした時に、「失敗した時にたいへんな思いをする」という気持ちが自分の中にあるわけです。ところが誰かがそれをやらないと次へは行けない。そこを打破して、突破してやっていくという意識がある人間が必要ですね。
あとは、ビジネスの「バランス感覚」が大切、プロジェクトの営業ならお客様からの要望をきちんと社内にフィードバックできるし、社内で起きたことをお客様にきちんと伝えることができることが大事です。お客様と社内の両方に対して信頼関係をきちんと持てる営業ですね。うそをつかないことは勿論のことですけど。


でも時には、「うそも方便」じゃないけど、ある程度コントロールしないといけないこともあるでしょう。真実を語るにしても語るタイミングがありますよね。

佐藤
ありますね。そこはバランス感覚と言いますか。あえて言わなくていいことを言う必要はないですしね。


そのへんの感覚が優れている方が望ましい。

佐藤
そうです。でも一番大事なのはお客様に対する「ヒアリング」の能力です。よくトップセールスマンといわれますと、説明するのが上手であったり、プレゼンテーションが抜群に上手かったりということを想像されがちですけれども、やはり私が見ている限り、トップセールスマンの一番重要な事項というのは、お客様からのヒアリング能力に長けていることです。


コンサルタントでもPMでも同じですよ。聞く能力がない人はほとんど失敗します。喋りっぱなしというタイプは、最初はいいですが短距離走者です。どこかでこけてしまって長くは走れないですよね。

佐藤
また、トップセールスマンは意外にも、説明するのはあまり上手くないのですよ。


でも内容はすごくよく分かっている。

佐藤
よく理解はしています。


それがお客様の信頼に繋がる部分ですね。

佐藤
そうでしょうね。一番、重要な要件だと思います。


その理想の営業マンの3点セットというのは、この十数年の間に変わっていないですか。

佐藤
変わっていないと思います。


じゃあ、この十数年で何が変わったのでしょう。営業職に限らず御社の営業スタイルというか、製品やサービスを提供する立場から見た変化で、最も大きいファクターはなんでしょうか。

構成;萩谷美也子
(次回に続く)

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