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2007年1月26日

【新春放談】第三回 プロとしての力量、そして「教養」が生き残りの条件に

まずはプロとしての力量、そして「教養」が生き残りの条件に

― 2006年に対しての振り返りということで、ここまでお話しいただきましたが、今度は2007年についてお聞きしたいと思います。昨今3KといわれているIT業界の人たちが幸せになり、ユーザーの方々も幸せになるために、2007年にはどのような戦略を立ててやっていけばよいのでしょうか


厳しいかもしれませんが、IT業界全員が幸せになれるかどうかは、分かりません。変われる人や改善した組織だけが生き残りますから。
私は最近「顧客の話をよく聞く」ということを、もう一度繰り返しています。「顧客の話を聞く」ということは単に「聞く」ということではありません。会社であれば、「ここは何をする会社なのか」を、はっきりさせ、「その中で自分が何やるべきか」そして、「自分たちの会社が、ほかの会社とどこが違うか」「何を強みとして生き抜いていくのか」を、再度認識する必要があります。また、お客様とのつながりや絆がなければ、会社の仕事は成立しないことも認識する必要があります。そのような事を踏まえた上で、お客様の要求、本質を理解し、聞き取ることが本当の「顧客の話を聞く」ということになります。

― 「聞くこと」の重要性は、繰り返し言われていますよね。


実は、お客様から出てくる言葉は、ほとんど間違っています。本当にやりたいことは語っていません。お客様はITのプロではないのですから、それは仕方がありません。その言葉の裏にある本当の要求を聞き取ることが、われわれプロに求められています。逆に言うと、それが出来ない会社や人はプロではありません。本質を理解すること、そして自分の提供できるものが何かを明らかにすることが重要です。そういうことを再度やらないといけないですよね。ところがSIerを見ても、「何でもやります」という会社が、いまだに多いし、A社、B社、C社と並べても、特徴が何もない金太郎飴になっています。私は欧米の会社が必ずしもいいとは思いませんが、日本との最大の違いはそこにあります。彼らは得意分野を持って、他者と差別化しようという意識が強いでしょう。

― 差別化した上でプロに徹するということですね。


これからは、美しいものを目指すという感覚的な部分を、この業界の中に取り込んでいく必要があり、そのような要素が組み込まれないと、IT業界は一人前の業界になれません。人間的な要素や精神性のない中で、個人や組織がいくら努力して積み上げようとしても、人間系の世界は生まれてこないのです。芸術はもちろんですが、それに限らず、別の業界で作られたすばらしい仕事、美しいもの、本物をたくさん見ていないと、自分たちの仕事に関して、到達すべきなのはどこか、高度なレベルのものが想像できないと、私は思っています。
2年ぐらい前にアメリカに行ったときに、IT業界における日本の経営者と欧米の経営者とでは、どこが最も違うかという話が出ました。その結論は、日本の経営者や幹部社員も含めて、教養が欠如しているということです。だから、一つのことしかできないということでした。もちろん、ひとつのことを突き詰めて行って、本当に美しいものを見出す人はいます。一万人に一人くらいは、悟りの境地にまで到達する人がいます。でも、それは全員がやれることではありません。他の業界で成功した仕事を見て、自分の仕事と照らし合わせることができないと、よい仕事は絶対できないと思います。
IT業界というのは、お客様がみな違う業界ということもあるし、横断的な形をとっています。企業の中、組織の中にITという専門的な領域があって、それが業界を横断しています。従って、お客様の側がITをどうやってポジショニングしているか、自分の会社をどうしたいと考えているか等々、お客様に学ぶことが圧倒的に多い状況でここまで来た、という歴史があるのです。お客様と同じ視点で仕事をする人が増えないといけません。そのためには、中堅の社員ぐらいから「教養」を身につける必要があります。

― 「教養」ですか。


日本では「教養」という言葉が誤解されがちですが、教養とは「違う視点から、自分の言葉で何かを位置づけられる力」ということなのです。「自分の言葉」「違う視点」の二つがキーワードとなります。

― 教養は「応用力の基礎」という感じですね。


そうです。それから教養の世界では、非常に上質なものを直接体験することが大事になります。見たり触ったり、その場に行くことが必要となります。だから部屋の中で教養は身につきませんし、教養を持った人と接するということも、非常に重要です。残念ながら、ITの会社を構成している人は、社長まで含めて、そういうことが全く足りない気がしますね。

能登原
その話を突き詰めると、要するに会社は何のためにあって、経営者が「自分の会社の社員にどうやって幸せになってもらおうか」とか、「会社を運営することによって社会にどう貢献できるか」という崇高な目標、理念があるかどうかだと思います。その様な目標や理念があるから、次に「そのためには、どうしたらよいか」ということを考えます。
僕は教養というのは結局、頭の中で何を思うかに尽きると思います。人間というのは「考える葦」といわれるくらいですから、その存在は考え方の如何にかかってくるのではないでしょうか。考えていることが本当にきれいか、正しいかに全て依存します。われわれは企業人として、日々会社の中で自分の人生を生きているので、その中で本当に正しいことを考えていくことが大切です。


一番長い時間会社にいますからね。基本的には会社も教育の場ですし、いろいろな体験によって人を磨く場ですが、会社が個人に与えられるものには限界があります。会社がなくなったら、何者でもなくなってしまう人は、世の中にはたくさんいるでしょう。それでは教養のある個人とは言えないと思います。

能登原
今、IT業界は人手不足です。これからますます少子高齢化は進むでしょうし、ある程度年齢が高くなってもまだまだやれる人、絶えず勉強して進化している人はたくさんいらっしゃいます。そういう人たちと連携して、いかによい仕事をしてもらうかが大切です。ただ、林社長のおっしゃるように、自立して教養もある人でないと、一緒に仕事ができません。これからは教養ある個人がもっと望まれる時代になっていくでしょうし、逆に言えば、そうならないと日本が立ち行かなくなってしまいます。


だた、シルバーで活躍する人は、全体の何割かに留まると思います。さらに、今後はグローバルな活動が必須です。これができないと企業は生き残れません。ITの事業で、ある程度普及させポジショニングが高いところまで持っていこうとしたら、グローバルな活動抜きでは無理です。2050年までに日本の人口は半分になりますから、就業人口の中に外国人を入れないと、もう成り立たないですよね。そのかわり、われわれもどんどん海外に出てっていいのです。それなのに、グローバル化に対して今のIT業界は非常に鈍感ですね。「まだ大丈夫」と思っているのかもしれないけれど、そうやって先送りしていると、年金問題のようなことが起きてしまうのです。会社の公用語を英語にせよとは言いませんが、同じ間違いを繰り返さないために、グローバル化は必要です。

能登原
そうしている会社もありますね。日産もそうですし。


しかし、公用語を英語にするだけでは表層だけの改革になってしまいます。手段に走ってしまうと魂が入りません。その様な手段の前に、どうやってグローバル化の基盤を作っていくかのほうが大切です。

能登原
やはりビジョナリー・カンパニーとなることが大事でしょうね。トヨタの「TOYOTA WAY」みたいに。


社員をインドに3年くらい行かせればいいですよ(笑)。「私、行きます」と。「3年でこのような会社にします」という人が出てくると、かなり変わるでしょうね。

意識改革はまず、自分を変えることから

― グローバル化が必須の流れとなっている一方で、人はなかなか変わりませんよね。IT業界内部の人の問題に関しては、具体的にどういうことから手を付けていけばよいのでしょうか。


それは意識改革をどうやればよいか、ということですね。「意識改革をしなければいけない」というのは誰だって分かっていますが、実はその様に言っている人自身が一番変わらないのです。だからまず、自分がどこまで変われるかということです。

能登原
さっき言ったことと一緒になりますが、基礎力をつける努力も必要だと思います。


そうですね。どうも表層をなぞりがちで、本当に芯まで分かっているという学び方をしていないということも問題です。
例えば私は、物理学がやりたかったのですが、大学に進学したら、自分は物理を芯まで理解できていないと気付きましたので、方向転換しました。物理の試験はできましたが、分かってないのに試験だけ通っても仕方がないでしょう。でもITはだいぶ芯から分かっています。どういう原理で成り立っているか分かっているから、ITの世界の問題が何に起因しているか分かるし、「人がそこにこう絡むから、こういう問題が起こりそうだ」とか、「どういう間違いを起こしやすいのか」とか、「それを回避するにはどういうことが必要か」が分かるので、確信を持って対策を提示できます。そういう感覚は、相当努力しないと身に付きませんが、それぞれの人が芯から分かる部分を持つように努力し、変化していくことが重要ではないでしょうか。それによって、去年と今年で変わった自分を実感することも大切ですね。私から見て能登原さんは、昨年を振り返ってみると相当変わっています。

能登原
そうですね、変わっていると思います。


私も、かなり変わっていますよ。いろいろな判断や決断している人ほど、変わります。でも、そのように変わっていくことこそが、当たり前の世界なのだと思います。だから会社は成長するわけですよ。「え? 何でそんなことやるんですか」と反論がボンボン出てくるくらいの施策を、経営者が自信を持って進めていかないと、会社は成長しません。もし、会社自体の教養というものがあるとしたら、会社そのものの体験が広がらないと、教養豊かな会社にならないと、私は思っています。ですから、私自身はある程度攻めの側の立場ですね。

能登原
林社長は一時期「これから社内に狂気の世界をつくる」と言っていましたね。


それが3年ぐらい前のことですね。「狂気の世界をつくるぞ」と言い始めてから、年商が3億円から4億円台に乗って、6億、8億と発展し始めました。やはり狂気は必要ですよ。

能登原
ええ、必要ですね。そのうちに、最初は「狂気」といっていた状態が、すっかり普通になってしまいましたね(笑)でも、日本全国の人の意識を変えていくというと、難しいですね。


それはもう学校や母親を変えないと無理でしょう。母親を変えるには、父親を変えないと無理だし。

― どこから変えればいいのでしょう。


全部つながっているのだから、どこから手を付けてもいいのですよ。

能登原
母親を変えないといけないという前に、女性が母親になりたがらないでしょう。

― でも最近、若い女性に「母親になりたい」という流れは少し出てきています。以前に、フランスでベビーブームが始まったようですが、日本でも子供を持ちたい気持ちが萎まないように、政府や自治体が上手に政策を打てれば、だいぶ変わるかもしれません。


その様なトレンドの変化は、初めて知りましたが、日本の社会は遅れ気味でも、変わるときは正しく変わる傾向がありますね。
大学も変わって来ています。たとえば、阪大を中心に関西の大学が連合を組んで、ソフトウェアエンジニアリングを教えるという話があります。そのきっかけは、公式の文書で「情報系の大学を出ても使いものにならない」と批判されたことらしいです。そこで文科省の予算がついて、大学連合軍でモデリングやソフトウェアエンジニアリングを教えるということになりました。しかも、ある一定の体験をするところまで教えると言っています。そこまでやると、随分違いますよね。海外と組んだりもしながら、産学という枠組みで大学を変えるという試みも始まっているのですよ。20いくつかの提案のうち採択されたのが6つで、阪大と名古屋大学もそのひとつです。

能登原
この前のPMIフォーラムでは、北海道大学の先生が元気に情報発信されていましたね。


本当に元気な人は元気ですよ。だから日本も徐々に変わり始めていますが、効果が出るまでは4~5年かかります。徐々には変わっていますが、もうちょっとドライブをかけないといけませんね。
それとSIerが変わる必要があります。大きいサイズで、ひたすら守りに入っている会社もたくさんあります。下手をすると、人材派遣会社のスタッフの方が、激しい競争にさらされているだけに質が上がってきています。この構図を変えないといけないですね。社員の中には変えたいという力があっても、どうも社長の頭が固いようです。

能登原
でも企業は、業績が悪くなると、経済原理が働いていつのまにか消えていきます。それが資本主義の一番よいところです。一方で、公務員が一番まずいですよね。経済原理では、なくならないですから。


公務員は人為的になくさないと、なくならないですよ。放っておくとサブタイプをいくらでも増殖させるという習性がありますからね(笑)。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

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