プロジェクトマネジメント、プロジェクト管理におけるポータルサイト

HOME > プロマネの勘所 > 【PM研修】第三回 研修で示された枠組みを、自らの血肉にするために

2007年8月10日

【PM研修】第三回 研修で示された枠組みを、自らの血肉にするために

上と下とに挟まれつつコミュニケーションを工夫

― 上司やお客様を巻き込むということについて言うと、私の知り合いのあるPMの方は、社内の役員の決済が必要な予算や納期に関しては、議事録も含め関連ドキュメントを整理して、分かりやすくサマライズして示すそうです。そのことを「戦いに向けて武器を揃える!」と言っています(笑)。結局、「何でこんなに忙しいのに議事録を書かなきゃいけないのだろう」と思いながらやっていたことが、そこで役に立つのですね。

松井
そうですね。面倒だと思っていたことほど、あとで役に立ちますね。やはりプロジェクトをうまく動かすには、決定権を持っている人間が大切です。それはユーザー側の部長であったりするので、その人に話を聞きに行く演習も今回の研修にはありました。実際の現場でPMにそれができるかというと、難しいとは思うのですが。

― たとえば、自社の事業部長にお願いして、ユーザー側の部長に話をしてもらうことにして、その材料を全部、PMが事業部長に上げるということはできるかもしれませんよ。「先方は多分こうくると思うので、そうしたらこう切り返してください」とか(笑)

松井
そうですね。PMがそれをできない場合、何が一番問題かというと、モチベーションの低下だと思いますね。プロジェクトをうまく進めるためには、モチベーションが大事です。モチベーションが下がると、生産性は下がる。で、雰囲気が悪くなる。さらに生産性が下がる・・・と悪循環にはまりやすい。

山口
逆に言えば、モチベーションが下がっているときは、プロジェクトがうまくいっていないのです。プロジェクトがうまくいっていないのは、問題があるからですよね。そういう、表面に上がってこない問題をうまくはき出してもらえないかなと、私もずっと考えています。
この研修を受けさせていただいた影響もあるし、私の学生時代のバックグラウンドも関係しているのですけど、最近よくやっているのは、まず書かせることです。言いたくても口に出しては言えないので、付箋紙に書かせます。書かせると、みんなものすごい勢いで書きますよ。
書いたらその場で発表しないといけない。その代わり、誰も内容に文句は言わないということにします。それをたまにやるのですが、「こういうことが問題だと思う」「こういう問題が起こりそうだ」ということが、ものすごい量出てきます。10人以上いますから、100とか150件出てきます。3~4時間かかかるのですけれど。

― それをKJ法か何かで整理するのですか?

山口
そうです。それでまとめていって、「これはみんなが共通して認識している問題だ」ということにする。普段は、それが私に伝わってこないことがよくあるのですよ。だから現場で起こっていることが分からない。業務日報は送ってもらうのですけども、そこには書いてこないですね。

松井
報告書になると、いいことしか書きませんからね。

山口
だから書き出してもらって、その場で、仕事の割り振りを変えるとか、リスケを始めます。で、「これでうまくいくかな」とやってみて、「あ、やっぱり駄目だな」となったらまた一週間後に「変えよう」と…。私のプロジェクトのメンバーは、役割分担で振り回されるので「ふざけるな!」と言っているメンバーがいますけど(笑)。

松井
私は、それはすごくいいと思います。PMを含めて一つのチームでやっているという連帯感が生まれそうな感じがします。「書いていいんだ、言っていいんだ」という気持ちが生まれる。確かに変更に振り回されるかもしれないですが、それはみんなで話をして、「その中でやればいいんじゃない?」と、まとまった結果のことですからね。
たぶん、プロジェクトで問題が生じるのは、マネジメントと実作業とが乖離するからだと思うのです。「マネジャは単純に管理だけして、仕事もしないで何をやっているんだ?」というところが、メンバーの不満の一番大きいところになりかねないなと思うのです。そうやって、実際にマネジャが動いているところを見せるのは、相当に効くんじゃないかな。

山口
まあ、胃が痛いですけどね。去年からずっと胃が痛いですね(笑)。
やはりメンバーからはいろいろと言われるわけですよ。それも、たくさん。

― 年上のメンバーの方もいらっしゃるのですか?

山口
ええ。若手中心でやっているので、私より年齢も下のメンバーが中心ではありますけども、年長の方もいらっしゃいますね。そういう方から「こういうのができていない、ああいうのができてない」と言われます。まあ、それも勉強かな、という感じです。

松井
そう言ってもらえるのは、山口さんが信用されているということですよね。

山口
そうですか? 逆に、「お前、何やっているんだよ!」と、尻をたたかれているのかな、と思っていますけど。

松井
キャリアのある人は、「この年下のマネジャを育てれば、自分たちが仕事をしやすくなる」と思うのではないですか。全然駄目なら、「さっさと見切りを付けて、ほかに動けばいい」と考えると思います。
私もリーダーをやったときに、下に付いてもらった人たちが「俺らがちゃんとサポートするから」と、言ってくれたのですが、サポートしてくれないのですよ(笑)。「あれができてない」「これは?」「あれは?」と文句ばかりつける。私は毎日12時過ぎまで残っていて、その人たちも残ってはくれているのですけど、私に仕事を振るだけで肩代わりはしてくれない。それも今となってはすごくよい経験でした。「ああ、あれは私のためを思って言ってくれていたんだな」というのが、よく分かるし。

― それは、言われてどれくらい経ってからから、分かりました?

松井
半年くらいして、仕事がちょっと落ち着きだして、9時とか10時には帰れるような状態になってからですかね。それくらい経って、やっと身になる感じがしますね。

マネジャとしての視点を失わないために

山口
私も同じように「あれは?これは?」って聞かれます。「このドキュメントがない」、「この書式がない」とか。

松井
「まとめる立場なのに、何で知らないの?」みたいな感じはありますね。

山口
でも最近、「マネジャという立場になったら、あまり自分で仕事をしてはいけない」と思っています。プロジェクト全体が見えなくなってしまいますから。
以前は私が作業をやっていたのです。プログラムも書き、書式作りも全部やって、みんなのドキュメントもレビューしてと、全部やっていたのですけど、そうすると計画を見る人もいない、計画を作る人もいないし、その計画に対してどうだ?と進捗を見る人もいない。リスクを見る人もいないという状況になってしまう。

― チームのモチベーションを見る人もいないですね。

山口
そう、いないのです。どうしても、「自分は自分のことをやっていればいいや」という感じになってしまうのですよ。

― よく分かります。耳が痛いです。

山口
なので、極力そういう仕事はしないということにしました。傍目からはちょっと遊んでいるように見えるくらいがちょうどいいかな、という気が実は最近はしています。ただ、そうやっていると本当に、メンバーから「お前、何やっているんだ」と言われてしまうので、仕事はしているのですけど。

― 兼ね合いが難しいですね。

松井
確かに難しい。ただ、私が思うには、PMにはプレイングマネジャ的な人が多いですよね。そういう人を見て育つと、「PMとはそういうものだ」と思ってしまう。でも、私はそうではないと思っているし、「マネジメントをするためのマネジャでしょ」というところがあります。

― 本来的にはそうですね。

松井
私はそんなに多くのプロジェクトを見てきたわけではないので、何となくなのですが、はたから見て、「マネジャが毎日定時に帰っている」というところが、うまくいっているプロジェクトではないかという気はします。マネジャが毎日一番最後まで残っているところは怪しいかも(笑)。間もなく火を吹くみたいな気がしてしまいますね。

研修をどのように実プロジェクトに生かすか

― 一番最初のほうで、「マネジメントの仕事が見えない」というお話がありましたけれども、このコースを受けて、ある程度見えるようになりましたか?

松井
現場の仕事の中で、「こうやればいいんじゃないか」というところについては、見えるようになってきました。実際にお金が絡んでくるところや、人のやりくり、進捗については、やはり実際にやってみないと分からないところがあるだろうし、もちろん会社によっても違うと思うのです。そういう見えづらい部分は、研修だけではなかなか難しいかなと思います。

山口
やってみないと分からないというのは、確かにその通りですね。計画をこう立てたらよさそうだと、頭では分かる、でも身体で分からない状態ですよね。だから、これを受けて、すぐ明日から計画が立てられるようになるかといったら、それは違うと思います。研修はきっかけだし、大筋のところを示してくれるもので、あとは自分でやらないと。

松井
研修は指標みたいな感じです。

山口
考え方の大枠というか、芯になるものであって、肉付けはやっぱり自分でしないと。実は、その芯は分かっていても、肉付けの仕方が下手だとPMとしては駄目なのだと思います。そこは自分でやってみて、痛い目を見て覚えていくしかないというところがありますね。まあ、痛い目を見ないほうがいいですけれど。

松井
私は「早く痛い目にあいたい!」と思っています。なるべく若いうちに痛い目を見ておかないと。40歳過ぎてマネジャになって、うまくやれなかったら「もう、あいつは使えない」で終わりですよね。今の私の年代だと、「とりあえずやらせてみようよ」という上の判断で、私よりキャリアが上の、できる人を下につけてくれることもあるかもしれないですから、それを期待したいです。
本当に人が成長するのは、苦しい思いをしたあとだと思います。私も半年くらいずっと12時過ぎに帰って、でもやることは全然終わらないし、寝ていても夢に仕事が出て来る経験をして、一皮むけたのかなという気がしています。やはり次はPMですね。

― でも松井さんのようなタイプは珍しいですよ。一時期みんながPMになりたいという時期がありましたが、最近、実はすごく辛そうだと分かってきて、敬遠する風潮があります。

松井
私もPMは辛いとは思いますね。ただこの業界は、マネジメントで生きるか技術で生きるかの、どちらかでしか生き残れない。技術もある程度面白いと思えるのですけど、突き詰めるのが私は苦手で、「ある程度できればいいや」と、自分でストンと切るところがある。でも新しい技術はどんどん出てくるし、それを追いかけ続ける気力はないな、と思っています。

― 確かに、きりがないですね。

松井
マネジメントなら、人が仕事をしている以上、ずっと変わらない普遍の部分があるだろうし、自分には合っていると思います。人がたくさんいる中でも、「こうでしょ!」「ああでしょ!」と主張できる性格だと思っているし(笑)。

― メンバーの個性が強かったり、「みんな一緒でないと駄目なのかな。でも自分は嫌だな」と思っていたとしたら、松井さんのようなマネジャの存在が「それでいいんだ」と道を示すことになって、いい意味で刺激になるかもしれませんね。

松井
たぶんPMも性格によって、全然違うマネジメントの仕方があるのでしょうね。

― 今日は偶然か運命か分かりませんけれど、ちょうどお二人の性格が対照的です。お二人ともコミュニケーション能力がとても高いのですが、マネジャとしてのタイプは違いますね。

松井
このタイプが一緒に仕事をすると、うまく機能する気がしますね。山口さんタイプが押さえるところは押さえて、私のようなタイプに「ちょっと、あれ、交渉して来てよ」と言って、私が「ああ、行ってくるよ」みたいな(笑)。

― すごくいいですよ、それ。「材料は、これと、これとこれだから、頼んだね~」と(笑)

松井
「あとは強気で押し切っちゃってください」と送り出されて、「じゃ、行ってきまーす!」と出かける感じ。旗振り役と、旗をコントロールする人に役割分担できますね。

山口
それは面白いです。今度、ぜひ一緒に仕事をしたいですね(笑)。

― 今の山口さんのひと言は、この研修や、今回の座談を仕掛けた側としては、一番うれしいひと言です。 でも、お二人ともプロジェクトを抱えた状態で研修をお受けになって、二日間を捻出するのはきつかったのではないでしょうか。

山口
きつかったですね。ちょうど開発が始まるかというところで、プログラムの本数も結構量があって、3月納期という状況で12月にPMが2日間いないというのは。だから、休憩時間に会社に電話して「今、状況はどうなっているの? 大丈夫?」と確認をしました。でも、結果的には、ちょっと離れてプロジェクトを見る感じになってよかったです。中にずっといると分からないことは、一回外れてみないと、絶対に見えないということがよく分かりました。

― おっしゃる通りです。

山口
最近はレビューにも会議にも出ないで、一日ずっと仕事をしながら回りを見ている時間をわざと作っています。そうすると、「あの人はちょっと今問題を抱えていそうだな」と気がつくので、そばに寄っていって「大丈夫?」と聞くことができます。困っていても自分からは言わないですから。だから、先ほどいったように、書かせる手法を使わざるを得ない。本当は言ってほしいですね。

松井
山口さんのマネジメントは、すごくお手本通りという感じがしますが。

山口
いや、計画通り行っていないのですよ。見積もりが甘いとか、リスクの洗い出しができていない、タスクの洗い出しも漏れているものが多かったとか、そういうトラブルが私の立てた計画に対して発生していて、それをどう修正するかというので毎日頭が痛い状況です。でも、私一人が考えて私一人が全部やっていたら駄目なので、人を集めて「すみません、これ、どうやったらいいですかね?」とみんなに直接聞いてしまいます。それでミーティングが長いとか、多いとか、上からは文句を言われているのですけども。だから私はプロジェクトマネジャというよりも、全体を見ているだけです。みんなが問題を持っていたら、どんどん言ってもらうようにするだけですから。

松井
いや、それは立派にマネジメントだと思いますよ。

山口
そうですか? あまりマネジャらしくないような気が…

― いいえ、問題が見えなくなってしまうのが一番まずいですから。それをはき出してもらえているというとは、マネジメントができているのだと思います。

山口
そうですね。

松井
私はマネジメントの一番大事な部分は、人を見ることだと思っているのです。「ちゃんと進捗通りです」とメンバーが言っていても、実は何か問題を隠していて最終的に遅れる可能性もある。むしろ、その段階で問題を引き出せるのが、一番大事なところだと思いますよ。

山口
そういうのを考えられるようになったのは、ごく最近なのです。それまでは、何かよく分からない混沌とした状態でやっていて、3月まではデスマーチみたいになり、4月に人も増やしてもらったのです。人が増えれば増えてくるほど、「自分もちゃんとやらなきゃいけない」となるのですが、やはりどうやっていいか分からない。本当に最近、今お話しさせていただいたようなことを考えるようになってきました。研修で学んだことは、自分が当事者になって考えないとやはり駄目かなと。だから研修で学んだことを実践するのは、まさにこれからだという気がします。

― 研修当日、受講した皆さんは、まず「ああ、なんだ。こうだったのか」と分かった気になるのですが、実際のプロジェクトになったら、「えっ? そんなふうにいかないぞ」と思います。そして、しばらく頑張っていくと「ああ、あの研修のあれは、こういうことだったのかな」と、また違う意味で、セミナーの内容が消化吸収されていくようです。そういう共通したプロセスがあるようですね。ですから、ずっとあとになって、講師のサジェスチョンのひと言ひと言が、また別の意味で沁みてくることもあるのではないかと思います。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

| トラックバック[0件]

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://www.promane.jp/blog_manager/mt-tb.cgi/509

↑ このページの先頭へ