プロジェクトマネジメント、プロジェクト管理におけるポータルサイト

HOME > プロマネの勘所 > 【新春放談】第2回 「複雑化の時代に、自社の原点とミッションを再確認」

2008年1月11日

【新春放談】第2回 「複雑化の時代に、自社の原点とミッションを再確認」

異なった環境から見えてくるもの

林 衛


インド研修もそうですが、全然違う環境のところに行くと、今自分が生活し仕事をしているこの都会の状況が客観的に見えてきますよ。
私は先日、3日間種子島に行っていたのですが、地場でそれなりに成功している人たちや、一度外に行って帰ってきた人たちとじっくり話をしました。そうすると、今の自分に欠けているものがわかります。

― 種子島ですか。それはどういった理由でいかれたのですか?


村興しをITを使ってできないかという課題に取り組むためです。廃校になりつつある中学校を全部買い取って、ITの学校にしたいのだが、どうやって使ったらいいだろうかという話があり、現地を見に行きました。市町村合併もしているし、創立130年以上の伝統ある学校がある島です。資源としては、すごくもったいないことです。心ある人は、これはどうにかすべきだと真剣に考えているわけです。
たまたまそれで訪ねて行って、別の中学校の校庭に入っていったら、子供たちが「こんにちは」「おじさんたち、どこからいらしたんですか」と挨拶するのです。それは私たちの生活から失われてしまったものです。都会には、挨拶をすると損をすると思っている人たちが多いけれど、種子島には、挨拶をするように素直に子供たちを育てる当たり前の人たちがいて、それが環境として成り立っているところがあるのだと思いました。
それはインドで感じることに通じるところがあります。都会で忙しく暮らし、ろくに挨拶もしないのも合理性はあるのだけれど、それで本当にいいのだろうかと。
そう感じるのは私だけではなく、今や時代がそういう見直しの時期に来ているような気がしますね。おそらく、文学者が2008年について対談すると、私と同じようなことを言うのではないでしょうか。

能登原
だから、「原点にもどる」ということを言いたくなるわけですね。


そのひとつが創業時に戻ると言うことなのですよ。たぶん時間の使い方が下手なのでしょうね。変なところに濃く使っていて、肝心なところに使っていないから、アンバランスになるのでしょう。だからもう一度原点まで戻す必要があります。それが一番近道なのではないかと思います。

IS部門のためのISリーダ研修とは

能登原伸二

― 原点といえば、アイ・ティ・イノベーションは今までPM教育やテストなど、個別のところをやってきましたけれども、それらを総合した形でIS部門におけるISのトップを目指す人への教育を手がけ始めましたね。動機は何でしょうか?

能登原
新年早々、難しいことを聞きますね(笑)。


その質問に答えるには、「われわれは現実の課題と教育ということをどう捉えているか」というところから話さないといけないですね。カテゴリーごとに教育というものがあるわけではなくて、そもそも当社が最初からやっているプロジェクトマネジメントやモデリングについても、技能を教えているわけではありません。たまたまその領域の、技能や手順や方法論を含んだ教育になっているということです。
元々プロジェクト活動は、何かを良くすることであり、それに人が関わっています。その中で大切なものを、プロジェクトマネジメントならプロジェクトマネジメントという領域で実現すると言うことです。その中に発注者、受託者も存在し、プロマネという職位もあるし、「どうせなら英語で勉強をしてしまおう」というやり方だってある、ということに過ぎないということだと思います。

能登原
当社のPM研修は仕事のやり方、進め方の基本的なことを教えています。例えば自動車会社のラインの標準作業も、仕事の手順ややり方を勉強し、どうしたら一番いいかを考えて行うのと同じです。そういう基本的な仕事のやり方が、いろいろな業種にあります。そのなかでIT企業を対象としたときに、プロジェクトマネジメントというのはプロジェクト系であればなんでも適用できる、非常に一般的な仕事の作法です。これはかなり汎用的な基礎となるものなのですよ。
そして、どの会社にも標準的な作業というものはあります。ITの発注側の企業、情報システム部門にも、そこで行う仕事のプロセスがあり、それに合うよう仕事の手順や進め方があります。それを受注してITのシステム開発を行うベンダーと、ユーザー企業の情報システム部門とは仕事の内容が違うので、それごとに勉強する内容も違ってくるということになります。ですから基礎的なITの教育だけではなくて、それに合うような教育の体系とか内容があってもいいのではないかと思います。


ITの活動、特に大企業の中の情報システム部門の仕事というのは非常に難しいものです。もう少し大きいカテゴリーで言うと、「調達マネジメント」になります。何かを調達して会社の中をよくするという仕事です。どこまでやったらいいのか、どういう人に手伝ってもらったらいいのか、どういう組み立て方をしたら成功するのか、全部考えてやらなければならないことになります。しかも社内には事業をやっている人もいれば管理部門の人もいるし、外部には調達先もいますよね。しかも自社の中のITという道具を使って、今よりも水準を上げて行くという仕事です。これにはいろいろな利害関係者が存在して、ものすごく複雑です。
プロジェクトマネジメントのやり方だけ教えていれば、うまく到達点にいくかというと、そうではないですね。お金を払う側でもあるし、モノやソフトウエアを調達する側として、どのようにいろいろな利害関係者と付き合っていって、ちゃんと仕事を成し遂げるかということは、また別の観点で非常に難しいわけですから。
そういう領域というのは、今まで手がつけられていませんでした。それは社会のニーズとして間違いなくあります。なぜかというと、世の中ではITがたくさん、実にいろいろなところで使われているわけですが、結局その大もとはというと、調達者がいてはじめて成り立つからです。そこはわれわれにとって見逃せないところですね。

― これからはその「手のつけられていない領域」に注力して行く必要があるということでしょうか。


そもそも、アイ・ティ・イノベーションは「ある組織を成している人たちに対してITを使って今の水準よりも良くしていくことに貢献する」会社であるということです。ですから教育もするし、仕事も手伝います。ただ、今のところは社員の数に限りがあるので、それをどうやって組み立てて行くかがなかなか難しいところですし、それを実行できる人たちをどうやって教育するかということ自体も、またチャレンジですよね。

能登原
アイ・ティ・イノベーションという社名からして、やはり発注側の企業が、ITを使ってビジネスを変革して生産性を上げたり、最初に言ったように、まだない新しい市場を作り出すようなことを支援できればいいと思っています。そう考えると、われわれがまず支援するのはユーザー企業の情報システム部門ということになるのではないでしょうか。
ユーザー企業の情報システム部門の人たちのミッションは、ビジネス上やろうとしたことを、社内のIT専門家として実現することです。しかし、状況は刻々変化していますよね。また、IT技術も非常に変化しています。昔はパソコンでしかできなかったことが携帯でできるようになってきたり、これからもどんどん進歩していくと思います。それを使って企業のビジネスを作り出したり、生産性を上げたり、在庫を減らしたり、リードタイムを減らしたりということをやるには、全社の視線で見なければいけません。林社長の言うように、ユーザー企業の情報システム部門の仕事は、非常に大変です。
一時期、情報システム部門の人たちの人員数が少なくなってきて、日本企業は弱くなってしまったという状況がありました。しかし、今後はそういうところも、少数精鋭でもっと良い組織に変革していくことが、日本企業を強くするためには必要だと思います。そこに貢献したいというのが、われわれの希望であり夢でもあるわけです。

― なるほど。それがアイ・ティ・イノベーション社にとって原点のひとつということになりますね。

2007年に見られた世の中のしくみ

― ところで、今回は今後の話になってしまいましたが、ちょっと戻って質問です。2007年を一言で言うと、どういう年でしたか?

能登原
僕はやはり、「偽装問題の年」だったということですね。企業の景気はちょっとよくなってきているけれど、その理由はデフレでモノが安くなったのと、人件費を大幅に圧縮したためです。そこに溜まった膿のようなものが出てきた年だったと思います。そういう膿は、これからも出てくるでしょうね。
偽装はやはり間違っています。今後はコンプライアンス上も正しく行動しながら、どうすればみんなが成長できて豊かになれるのかを、今年は考えて行かないといけないのではないでしょうか。


私も内容的にはそれと同じことを言っていると思うのだけど、2007年は本物が選別された年」だと思います。それで負の部分も出てきたわけです。2008年、2009年は、さらに選別が進み本物中の本物が選別されるという方向に向かうと思います。本物とか、原点とか、価値という言葉が非常に大切になってくるはずです。
複雑化や多様化は止められません。ちょうど宇宙がビッグバンから始まって膨張しているようなもので、それがまた収縮するということはないのです。複雑化・多様化があるところまで進むと、だんだん自由度が高くなってきます。それが宇宙の力学なのかもしれないけれど、それと同じように20年くらい前からITが入ってきて、どんどん多様化が進んでいろいろな企業が出てきました。その中のひとつがアイ・ティ・イノベーションです。私の目には、そのような社会構造に見えています。
その中で生き残るのは、やはり本物でしょう。そして、選択する意志を持っていないと、その中を生き残れないのです。濃くて特徴があって、できることがはっきりしている会社は生き残る。全部出来る会社というのはもう存在しません。

能登原
そうですね。全部やろうとする会社は調子が悪くなっていますね。最近は同じ業種に複数の会社があると、それはやがて淘汰されてどこかに合併され、大きな会社に集中するようになりました。そうすると、その巨大化した会社がやらなくなる部分が出てきて、それは切り捨てられます。そこに隙間ができて、ベンチャーのような新しい会社が多数生まれてきます。そして淘汰されるという新陳代謝を繰り返す。それが最近の、企業が生まれてから死ぬまでの流れではないでしょうか。
昔は、大企業はあまり潰れなかったけれど、これからM&Aが活発になってくると、逆に隙間の中でのチャンスも出てきて、ベンチャー企業もチャレンジできる新たな機会が増えてくるのではないかと思います。
それに、大企業も新しいところを狙っていかないと利益が出ないので、そういう発想が国全体で出てくると思うのです。そうしないと、国際競争力という意味では、大量に安いものを作って売るのは中国には勝てないですし、頭を使って勝っていくしか日本の選択肢はないですから。


いい時代になりましたよね。大小に関係なく競争できるし、生き残れるし。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

| トラックバック[0件]

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://www.promane.jp/blog_manager/mt-tb.cgi/546

↑ このページの先頭へ