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2008年1月18日

【新春放談】第3回 「理念や誇りという抽象度の高いものが、生き残る上で重要となる」

実力差は紙一重、そこで勝つためには

能登原伸二


これまでは、他の人と大体同じことをやっていればよかったわけです。私は丁度、そのような「右に倣え」時代から、教育ママや受験戦争の時代を抜けて、そのまま企業に入り、バブル崩壊があって再生や再構築というライフサイクルを、一通り味わいました。ですから、同じように企業が伸びて行っても、前とは明らかに違うということがわかります。企業は伸びているけれど、果たして社員が、昭和40年代50年代の人たちと比べて幸せなのかどうかは、非常に疑問ですね。「企業が社員を幸せにしないといけない」という使命感は、日本企業はある程度持っています。しかし、ある程度持っていても、実際には社員の幸せを負いきれない状況です。昔は、社員が幸せを感じる方向も一緒でしたが、今はそうは行きません。
だからこそ、変革が必要です。世の中が変わっているのだから、会社も変わらないといけない。しかし、その中の少数の人だけが変わり、大部分の人は変えたくないという気持ちが働きます。そこをどうするのか。人を変革できる割合によって、企業の力は変わってきます。それができた会社が、つまり教育で成功した会社ということでしょう。

能登原
あまり戦略という言葉を強調してはいけないのかもしれませんが、昨年の12月に日本対韓国の野球試合がありましたよね。接戦の末に4対3で日本が勝ちました。この場合は、スポーツにおいてのことですが、企業間もそのくらい紙一重なのです。そして紙一重で勝とうと思うと、戦略が非常に重要です。


私は必ず日本が勝つと信じていましたが(笑)。能登原さんのいうとおり、差が小さくなってきているわけですよ。

能登原
あの試合のときの日本チームは、本当に戦略をきちんと考えていていましたね。二塁に入ったらバントで三塁に送って、必ずワンヒットで返すという戦略をちゃんと立てていました。それから、あの試合では、8回に韓国チームにヒットを打たれたのです。しかし、日本のチームが前進守備をしていたために、韓国は二塁にいて、三塁に回れずホームベースに返れませんでした。ワンヒットで返れるのに返れなかった。そのあと日本が三振を取って、8回を0点に抑えたのですね。
ピッチャーも3回まで投げて交替しました。4回まで無理して投げさせて、悪かったら換えようというのではなくて、3回まではこの人に任せて、4回からは今度はこちらのピッチャーに任せるというふうに戦略を立ててやっていたと思います。
企業もこれからは、戦略をきちんと立てて、その通りやるべきというか…下手に成り行きでやると勝てない時代になったのかなと思います。


レベルの差というのは、野球のようなスポーツもそうだけれど、企業間でも同じくらいになってきていますよね。そもそもの差があまりないですから、最後は精神力で勝てたり、ちょっとした我慢をするかどうかで違いが生まれる。あるいは、我慢しないでスパッと換えるか。どちらもマネジメントが非常に重要ですね。
あの試合のときも、星野監督が以前よりも進化していたじゃないですか。

能登原
あれはアテネで負けたので、データをかなり入手し、綿密に分析していると言っていました。やはり失敗を糧に、相当綿密に計画を立てて、やり方を練っていましたね。


野球は勝たないと意味がないし、負けると終わってしまうわけだけれど、企業の場合には、それに比べて多少の得失点の幅というものは許されるわけです。それに時間もかけることができます。それなのに、ちゃんとやれていませんね。

企業理念の部分をもう一度見直す

林 衛


能登原さんが戦略というのは、まったくその通りですが、M&Aでいろいろなカルチャーの人が統合されたりすると、戦略以前の理念とか、もっと企業が持っている精神的なものや文化的なものが非常に大事です。「そこを作り直せ」と唱えている人が徐々に増えてきていますね。
簡単に言うと、理念を3年分に限定して作ったら戦略になるのです。事業があって、理念があってそれを3年分どうやるかというのが戦略で、それがさらに単年度になると、もっと戦術的なものになってきます。しかし、これだけ変化が早い時代に3年後は見通せません。そうすると常に塗り替えて行くような形になって、理念が非常に重要になってきます。
赤福があんなふうになったのは残念ですね。赤福というのは非常に高貴な言葉ですし、老舗として福をもたらす餅を作るという理念があるはずなのです。それがいつの間にか、お金儲けのほうに引っ張られて、どこかで崩れてしまったわけです。それが世代交代のところなのか、とにかく生産販売を増やすほうにシフトしたからなのか、詳しいことはわからないですが、とにかくデリバリーの範囲を広げて行ったときに冷凍することにしてしまい、冷凍してしまうとどこからが保存期間なのかあいまいになったわけです。
確かに、冷凍がいけないのなら、冷凍したケーキなどは、食べられなくなりますね。製造した時期と解凍して食べる時期が、異なるわけですから。賞味期限のルール自体も見直す必要があるかもしれません。どちらもそれでお腹が痛くなった人がいないので、ミートホープのほうがはるかに悪いことをしたとは思いますけれどね。そういうことがなぜ起こるのかと考えると、それは戦略の問題ではありません。理念の問題でしょう。
でも何でこれほど続けて起こるのでしょう。2007年は、本当に食に関する不祥事が続きましたよね。

能登原
みんな裏でやっていたことが、内部告発者がいたりして表面化したということでしょうね。


常態化していたことが、たまたま問題として出てくる時期だったということですか。

能登原
おそらく、そういうことです。


誰か潔癖な人が何かのきっかけで、突然告発という引き金を引くわけですね。

能登原
ええ、だからその会社や業界の膿が出てきたというかたちですね。

自信や誇りと「一期一会」


そういうところに陥りさえしなければ、自分たちの得意分野で勝負できるということですから、非常に2008年は明るいです。われわれも大企業になったらまた考えなければならないけれど、ほとんどのIT組織は自分たちの得意分野を伸ばすことを考えてやって行けば、生き残れるわけです。

― IT企業で働く個人にも、同じことが言えるのかもしれませんね。
先ほど、M&Aでできた隙間に、また新しいベンチャーが生まれるというお話がありましたね。能登原さんの対談(プロマネへの道)を読んでいると、個人に関しても、そういうふうに隙間をうまく見つけて、新しい発想で伸びる方が出てきている感じがしました。

能登原
まさにそうですね。


そのような方は、もう少し時期が早くて、今のように多様化が進んでいなかったら、あれだけ伸びることは難しかったかもしれないです。また、そのような方を見出した人もすごかったと思いますね。「この人だ。この人に勝負してもらおう」と彼を見出した人がいて、その時期がまたよかったのだと思います。
能登原 先ほどのコンプライアンスの話もそうだと思うのですが、人が生きるうえではやはり自信や誇りのようなものが必要で、それをきちんと持てるかどうかは、どこかに切り替え点があるのかもしれないと思います。
NHKに「百歳バンザイ」という、百歳の人が出てくる取材番組があるのです。昨年その番組に、百歳の茶道の先生が登場しました。五十歳のときに茶道の先生として弟子を取るようになったそうなのです。今でも身の回りのことは全部自分でおやりになるし、弟子も持っている。さらに自分が使う茶道具などは全部手作りしているそうです。
そういうすごい方なのですが、もともとは学校の先生をしていました。たまたま生徒のお父さんが茶道の先生で、あるときお茶席に誘われたのだといいます。まるっきり初めてで、お茶の作法がわからない。おそらく、おどおどしていたのでしょう。そうしたらその生徒のお父さんから「堂々とやりなさい」といわれたらしいのです。その言葉がきっかけでお茶の道に入ったのだそうです。そこから始めて、五十歳で先生になって百歳で現役です。


出会いがあって新しい道に入るのは、遅くてもまったく大丈夫ですよ。

能登原
そうですね。その番組を見ても感じたのですが、自信を持つとか堂々とやるというのはとても大事なことだと思うのです。でも、最良のタイミングで「堂々とやりなさい」といってくれる人は少ないですよね。その茶道の先生にとって、まさにその一言が人生を変えたわけです。
その番組を見るまで、茶道には興味がなかったのですが、人の生き方のようなものも教えてくれるのだなと思いました。

― まさに「一期一会」ですね。茶道の精神そのもののようなお話です。


そうです。茶道のように抽象度の高いものは大切なのです。私が常々言っていることですが、自分の仕事以外に抽象度の高いものを、それは茶道でも美術でも音楽でもいいのですが、手がけることが、自分自身をすごく豊かにするし、結局は仕事の質にも関わってくるのです。茶道は、日常生活に絶対必要なものではないですよね。それは芸術全般に言えることですが、人間が生きて行くうえで絶対に必要というものではない。でも、非常に大切なことを教えてくれます。
任天堂のビジネスも、おそらく人間のそういう部分をくすぐるのだと思います。

― 赤福は、その逆を行ってしまったわけですね。


それに、考え方が間違っています。どうしても冷凍保存しなければならない事態になったときに、「見つからなければいい」という心が働いていたと思いますよ。たしかに冷凍食品の現状を考えたら、「自分たちがやってなぜいけないんだ」と思ったのかもしれない。直前まで冷凍保存してあったものの方が、衛生上は問題が少ないですからね。しかし、製品を配送する際に問題が生まれたとき、それを周囲に相談して、もっとよい方法を探る道もあったはずです。
そこを基本から見直すということが大事です。仕事もそうだし、人生もそうです。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

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