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2008年4月11日

【林衛の業界探求シリーズ(4)】第二回 「個人も組織も、待ったなしの改革と成長が要求されている」

インドIT研修の成果と影響

久保浩史さん、林衛

久保
アイ・ティ・イノベーションのインドIT研修には、今年も6人参加しています。


ありがとうございます。

久保
最初に研修生を出したのは去年なのですが、去年研修に行った6人の最初の反応は、「なぜ自分が選ばれたのかと思った」というものでした。その周辺や、あるいは同期の反応も、「何であの人なの?」「私でなくてなぜあの人が?」というものもありました。研修生は選ばれて行っていると思うようですね。今年もそういう反応はあります。
当社の多忙な状況から言うと、選んでいるのではなくて、行ける状況の人を出しているのです(笑)。「現状からすればこの人を行かせた方がいいかもしれないけれども、今忙しいし、とてもじゃないけど、仕事から離せない。だから研修に出しても他のメンバがカバーできるような人に行ってもらおうか」という事情だったのですが、「選ばれて行っているから」と周りが見るのですね。誤解なのですが、だから「自分も行きたい」という社員がけっこう多いですね(笑)。自分から水を飲む気になってくれた。


私の感想を申し上げると、まず御社の社員の方は、IT業界の中で比較すると明るいですね。

久保
そうですね。


ユーザー系企業というというのは、比較的そういう傾向があるのです。それに対して独立性のベンダーは、何となく圧迫感があって暗め、そして真面目という感じがします。御社は、みなさん、明るくてコミュニケーション能力が豊かです。今回も取締役がインドに陣中見舞い行かれて、研修生に鞄いっぱい補給物資を贈られていました。口では厳しいことを言われていながら、非常に優しいですね。社員の方もすごく喜んでおられた。もちろん研修成果に対する要求は厳しいと思うのですけど、現地で社員の方もちょうどいろいろなものが見えてきて、疲れも出てくるころなので、ちょうどいいタイミングで取締役が行かれて、非常によかったと私は感じています。
会社のカルチャーとして、人を大切にされていますね。前回もそれを感じました。
ところで、一期生が帰って来られて、いろいろな仕事に着任されていると思うのですが、社長からご覧になられて、その変化をどのように感じておられるのかをお聞きしたいと思います。

久保
帰国後の全社への報告会に先駆けて、4月にまず、研修生はわれわれ役員に対して報告会をしました。そのときに、研修生たちはやはり変わったなと思いました。「自分の意見はしっかりと述べないといけない」という意識が出てきたようです。
どちらかと言うと、わが社の社員はおっとり型が多いのですよ。だから家庭的な雰囲気があるとも言えるのですが、ビジネスに対してはおっとり型を何とか変えたいと思っています。ですから、彼らが帰ってきて、自分の言葉でしゃべるというか、われわれに対して物怖じせずに報告したのが印象的でした。役員達が報告を聞いての第一声が、「おっ、随分変わったね、シャキッとしたな」だったのですよ。


なるほど。それはよかった。私たちは変えることが仕事ですから。弊社は「ITを変える(ITをイノベーションする)」という名前の会社ですので。

久保
研修生のほとんどは、研修前にいたポジションから変わったのですが、やはり前に比べてかなり違っていますね。


それはそうだと思います。

久保
私の感じとしては、単純に「インドで辛い経験もしたから、とにかく精一杯頑張ろう」という力の入り方ではなくて、全体感を持って頑張ろうとしているというか、すっと新しいところに行ったような気がしますね。
まずはものをきちんと自分の言葉で表現できるというのが、一番大きい変化ですね。なんでも英語で言わなきゃいけないと、どうやったら伝わるのか考えて言わなければなりませんよね。ITの勉強をしていても、分からないところが出てきたら、何とかそれを英語で伝えて解決しなければならないわけですから。当たり前のことではあるのでしょうけど、きちんと論理的に考えたりとか、あるいは全体を見て考えたり判断したりというようなことが、すごくできるようになったという感触があります。もちろん基礎もあったと思うのですけれど、より物事が見えてきたかなと思います。


英語の世界になると、直球しか投げることができませんから(笑)。

久保
ええ、そうなんですよね。


日本人同士で会話をする際には、多少カーブとか、緩いボールとかいろいろ使い分けていたのが、さすがにインドではできなくなります。英語はコミュニケーションのために、自分がサバイバルをするために使うわけだから、まずは1回ごとにまっすぐに投げます。それに慣れてきて、やっと次に応用問題もできるようになってくるというパターンなのです。研修生本人は無我夢中ですから、そんなことは感じてないかもしれませんけれど、外から見るとそれはよく分かります。一度そのプロセスを体験すると「あ、普通に素直に言っていいんだ」ということが分かってくるのです。

久保
そうそう(笑)。


それで、今度は日本語の世界に戻った時に、インドでの経験が生きてくるという意味もあるのかと思います。

久保
私が社長に就任したとき、当社の弱点であったと思われる受け身な態度、たとえば「言われたからやる」という待ちの姿勢があったのです。当社はグループ会社であるし、特にこれまでは原価主義でした。掛かったお金と時間は全部カバーされていたわけですね。でも、「それではあかん!」と。私が貢献できる部分は、IT子会社の場合に往々にしてありがちなそういう弱点を、どうやって変えるかということだと思っていました。いろいろな経験をさせることで、自分で考えるという習慣ができるのはいいのではないかと。もちろん、それだけではないのでしょうけれども。結局、人間の意識というのは、1回でころっと変えようと思っても無理なのですよね。


そうですね。形状記憶脳といいますか、何かショックを受けて変わっても、また元に戻ってしまう。かなり長い時間かかって変えていかなければなりませんね。

グローバル化に対応できる社員の育成が急務

久保浩史さん

久保
ですから3年目に、主立った部課長クラスと「もう会社を大きく変えるチャンスはそんなにないよ」ということで、当社の構造改革をスタートさせたのです。8月の合宿から始まって、だいたい9ヶ月ぐらいで作り上げ、それを従業員に説明しました。新しい中期計画が始まるところだったので、中期的に何をするかに結びつけたわけですね。そういう点からすると、中期計画の今後のために中心となる人は、若手から中堅というところになります。


改革の核がシフトしていくのですね。

久保
彼らがどんな会社にしたいかということを、取締役の一人を座長として検討してもらい、私達役員は基本的にはそれを全部受け入れることにしました。方向性のベースがありましたから、そう変なことにはならないとは思っていました。その改革がどんどんうまく回転しているのではないかと思います。そんな中でのインド研修でしたので、先ほど言ったように「何であの人が」と「何で自分は違うんだ」という意見も出てきたのだと思うし、「海外に行って勉強したい」という社員も多くなりました。


それはいいことですね。

久保
ええ。住友化学グループのグローバルの展開をサポートするというミッションがありますので。


激しくグローバル展開をされていて、すごいなと思っております。

久保
2年前は想像もつかなかったですね。そのころ弊社はグローバル展開を全くしていませんでしたから、英語でIT研修どころか、英語の「え」の字もやっていなかったですね。2年前に、世界のグループ会社のセキュリティーをどうするかということで、住友化学の情報システム部隊と一体になって海外グループ会社も含め、説明に回ったのがスタートでした。当時は、みんな英語はしゃべってなかったと思いますけれど(笑)。


はい(笑)。

久保
今年度は住友化学グループのIT標準をつくりましたので、IT標準を全世界で使ってもらおうということも行いました。その中心となってプロジェクトを説明に行ったのが、最初のインド研修組なのですよ。
彼らが実感として言っていましたが、「プレゼンテーションはできます」「ヒアリングも前より良くなっています」と、そこまでは大丈夫。「しかし、質疑応答になった途端に口が重くなります」と(笑)。


なるほどね。定着するまで、しぶとくやっていかないといけないですね。
まだ、いくつかぎこちない点があっても、意識が変われば目的とすることが実現できますよ。実際にそれを担う人ができたということは大きいです。

久保
ええ、そうですね。今年からまた「それじゃあかん!」ということで、社内英会話研修を始めました。希望者のみです。今のところ東京は15人ぐらい、大阪が25人ちょっとで、計40人ぐらいやっています。


大阪は多いですね。

久保
ええ。ちょっと大阪の人が多くなりましたね。


社長が就任されたころは、今の事業規模だったのですか。今およそ社員300人で90億から100億円規模と伺っていますが。

久保
私が来たときには300人ちょっといたのです。で、毎年10人ぐらい採用しているのですが、定年で辞める社員もいるし、それ以上に住友化学側に出向者が戻るというケースが多いですね。


なるほど。もともと出向者が多くて、プロパーと入れ替わったり、いろいろあるのですね。ITをカバーしている人たちは増えている状態ですか。

久保
いや、今280人なのです。けっこう出向者を返しましたし、定年やそれ以外の理由での退職もあります。ただわが社の場合は、退職率は少ないと言われています。特に新人の退職率が少ないです。家庭的な雰囲気がいいのではないかと、よく言われるのですけれどもね。


御社のホームページで、会社プロフィールのあとに採用欄を拝見しましたが、明るい雰囲気で、入社したくなる感じがしますね。

久保
それはありますね。


女性社員の方も美しくてしっかりとしたタイプが多い。男性に全然負けてないというオーラを感じます。

久保
去年のインド研修組の女性2人も、典型です。今研修に行っているグループも女性のほうが強いです(笑)。


ええ、写真を見せていただきました。現地でもちょっとお会いしましたし。

久保
男が弱いわけではなくて、女性がたくましいのですよ(笑)。

ローテーションで個人と組織双方の成長を

林衛


ここまではインド中心にお話をお聞きしましたけど、会社全体としては標準化もきちんと進められていますし、本丸のマネジメント研修をいろいろお手伝いさせていただきましたが、いろいろな層の方に機会を与えられていて、これから着々と効き目が出てくるのではないかと思っております。

久保
そう言っていただけるのはありがたいですが、厳しい言い方をすると、レベルが低かったら、それだけ成長の伸び代があるとも言えます。おそらく、それから先を伸していくのが、私の本当の仕事だと思います。


なるほど。

久保
まずはわれわれとしては、レベル3ぐらいまで、とにかく全員がクリアして、その上でさらにその研修をどう深めていくかを考えてやっていかないといけないなと思っています。だから「キャリア達成度」も採用しました。


これはもう公表されていますね。

久保
はい、自分たちがどう仕事に取り組んでキャリアを作って行くか上司と相談しながら考えて行きます。ただ必ずしも、それが100%その通りにいくかというと、そうではないですよね。やはり仕事ですから。でも、本人の希望は当然聞いています。随分とそういう面で、意識が変わってきました。弊社の歴史からという面もありますが、ローテーションに対して非常に抵抗感が強かったのですよ。


これは日本では特に、独特の抵抗感がありますね。

久保
ええ。特に弊社はスタートのときは大阪本社でしたので、大阪でたくさん採用しました。それから、合併会社が新居浜の住化インフォテックという会社で、こちらは新居浜採用です。新居浜採用だったのに、いつの間にか東京に来てしまった社員もいます。
だから抵抗感が強かったのですが、その点について私は「ローテーションの意味は二つあるよ」と言っています。一つは「そこにずっといたら楽かもしれないけど、現状維持というのは退歩につながるんだよ」と。と言うのは、現状を維持するにも努力がいるのですよね。努力しなかったら下がっていくわけです。ところがそれは自分ひとりを見た場合であって、「AさんとBさんとの関係で見ると、ある時点でAさんより下にいたBさんが努力してAさんより上に行ったら、現状維持は退歩につながっているよ」という言い方をしているのです。そういう点からすると、やはりローテーションは自分のスパンを変えたり、あるいは新しい知識を得るチャンスです。個人にとってのチャンスであるだけでなく、組織にとってもそうです。違う風が入ってくることによって、また違った活性化が図れるはずです。


そうですね。

久保
それから第二には、私は「スパンの拡大」と言っているのですが、個人が同心円でずっと固まっていてはいけない。自分の同心円をできるだけ拡大して、他と重なった部分を排除することによって効率化が図られる。それが大事なことじゃないかと。したがって組織から一人を抜ければ、そのときには抜けたことによるマイナスはあるかもしれないが、それをカバーすれば、カバーした人にとっては、自分のスパンを拡大できるわけです。そういう面でも活性化をしていかなきゃいけないのではないかという話をしています。何のかんの言いながら、私が来てから、結果的にはかなりローテーションしています。


御社の場合、事業所の数も規模のわりには多いですね。いろいろな場所の話が聞けて楽しいです。地方にいる人もだいたいローテーションされているので、それが非常にプラスに働いている感じはしますね。

久保
「いずれは帰りたい」とみんなは思っているかもしれませんけれどね。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

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