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2008年4月25日

【林衛の業界探求シリーズ(4)】第三回 「IT会社として、グループ全体にどのように貢献するか」

ここ数年で急速に進むグローバル展開

林衛


ところで、久保社長のご出身はどちらですか。

久保
生まれは熊本の八代です。もともとは父が満鉄(満州鉄道)にいたので、母のお腹にいる時に満州から引き揚げてきました。生まれて1年で福岡に引っ越しました。九州には両親がいるのですが、私は大学進学で故郷を出て住友化学に入りました。最初の20年間で6回転勤しています。


20年で6回は多いですね。銀行員並でしょうか。

久保
多いです。平均3年3ヶ月ぐらいで転勤している計算です。故郷は福岡という気持ちはあるのですが、だんだんと薄れていますね。転々としていますので。


それだけに環境適応力に優れていそうですね。海外の経験はおありですか。

久保
いえ、英語は苦手ですし(笑)。人事労務をやっているとずっと国内ですし、英語を使う機会があまりなかったですね。一回だけ、ICIだったか、当時の日本的経営を学びに住友化学に来られたときに、玄関に迎えに行って、エレベーターに乗って降りて「This way, please.」と(笑)。それだけですよ。
とはいえ、関連事業部に変わって、だんだん英語の必要に迫られるようになりました。商法が変わって監査役が2人から3人以上になりました。ジョイントベンチャーの場合は、2対2にする必要があります。それで、海外とのJVで「名目だけでいいからなってくれないか」と言われて、「名目だけなら」と監査役に入ったのですが、名目どころか英語で監査役会をするのですよ(笑)。私はそこで、貝になりました(笑)。


そんなことがあったのですか。

久保
ただ、聞くほうは一生懸命聞いて、なんとか理解します。会社の英語は専門用語が多いので、比較的理解しやすいですから。


そうですね。ITも同じです。ですから私は、インドに研修に行く人に「重要単語は1500しかないのだから、その範囲ですぐ分かるようになるよ」と言うのです。ただ、小説を読んだり、異性を口説くとかは(笑)、同じ英語でも、まったく違いますね。

久保
それはそうです。とくに食事のときの会話は、かなり慣れていないと言葉が出ませんよね。話題が展開していきますから。


そうですね。あれはなかなか苦痛です。

久保
ひとつの話題になった時に「何を話そうかな」とちょっと考えている間に話題が次に行っていますよね。「これは、かなわんな」とだいぶ思いました。


でも、住友化学グループさんも非常に海外展開に積極的で、会社全体がグローバルになりつつあります。そして、まさにその情報動脈を御社が担っているわけです。

久保
そう、これからですけどね。これまで海外各社でばらばらだった情報システムのネットワークを、データベースを中心として繋ごうということに、今ようやく着手しようとしているのです。当社も海外でのプロジェクトにも関与することが多くなってきました。実は上海の情報電子会社のプロジェクトのキックオフがあるというので、昨日、一昨日と上海に行って来ました。


私は10年ぐらい前にはじめて上海には行って、5年ぐらい前まではよく行っていました。上海もずいぶん変わったでしょうね。

久保
「ビル群がすごくて、もう東京どころじゃないよ」と聞いていたのですが、思ったほどではなかったです。それよりもスモッグがすごかった。両日とも晴天だったのですけど、500mくらい向こうのビルは見えませんでした。


今、インドでも同じ状況が起こり始めていますよ。

久保
そうですか、やはり。


インド研修場所のプネはデカン高原の標高600mのところですから大丈夫ですが、ムンバイからプネ行く道中に薄汚れた、もやっとした空気の中を通ってゆきます。ムンバイの中にいるときは感じないのですけれどね。経済発展というのは、こういうポリューション(汚染)を伴うのだなと感じます。

久保
本当にそう思いますね。


日本も60年代、70年代はスモッグがひどかったですが、あれと似た状態です。

久保
いや、あの時よりもよりひどいでしょう。


今、中国が一番ひどいと思います。

久保
石炭を燃やしていますから、スモッグが黒いですよね。


本当に黒いし、風向きが悪いと黄砂といっしょに日本のほうへ来ます。

久保
この前、酸性雨で屋久杉がやられていましたね。


そういう点も現地に行ってみないと、なかなか実感できません。

人材育成のベースにあるSSSのミッション

久保浩史さん、林衛


話は変わりますが、2007年に弊社が主催するITIフォーラムで、御社の木村さんと白石さんに、標準化の話と人材育成の話をしていただきました。お陰様で昨年のフォーラムの出席者は、前回を40人ぐらい上回る、230名ほどの参加になりまして、これはひとえにゲストスピーカーの講演内容と話題性がマッチした結果だと考えております。一部笑いも誘う、非常にリラックスしたプレゼンテーションをいただいて感謝していますし、SSSさんの実力を非常に感じました。

久保
ありがとうございます。


いろいろな育成の機会が与えられていて、中堅以上の部長さんやセンター長さんクラスにまでその成果が浸透しているのではないかと思いますが、社長からご覧になっていかがですか?

久保
木村の場合には、その前に能登原さんとの対談(ザ・プロジェクトマネジャーズのサイトに掲載)があったからよけいにかもしれませんけれども、フォーラム後のパーティーの時に、業務プロセスの一本化について質問攻めになって、ほとんどなにも食べられなかった(笑)と言っていましたね。白石も実態を率直に話したのがよかったのではないでしょうか。


今回、インドに同行された中に、今爆発的にグローバルビジネスを広げられているメーカーの方がおられて、ぜひSSSさんに話を聞きたいとおっしゃっていました。そちらも待ったなし、崖っぷちの状態で育成しなければならない状況です。やはりSSSさんはユーザー系企業ではグローバル化要員の育成に成功されていると見られているし、実際そうだと思います。
もっと先で人材育成の中身を高めていこうというお考えは、当然おありでしょうけど、2年ぐらいの短期で質と量と確保されたのはすごいと思います。

久保
住友化学の危機意識もありました。当社は住友化学グループで唯一の情報システム会社で、しかも住友化学のグループ会社は200社あります。この中にはペーパーカンパニー等もあるので、グループ会社として実質的な企業活動を行っているのは日本で70社ぐらい、海外でおそらく50社ぐらいです。しかし、今や各会社にITの専門家を置けるような状況ではありません。経理がITも兼務している場合もかなりあります。したがって、各グループ会社のIT戦略から保守運用までを、全部わが社が担うということをミッションとしました。


ITについては、全部を一貫して面倒を見るということですね。

久保
ええ。前から、そうしたいとは思っていたのです。早く人材をレベルアップしないことにはそのミッションを担えないという事情と、住友化学が「人材投資に対して大いにやるべし」という方針を採ったことが、うまくマッチしたということだと思います。われわれは今280人(4/1時点では300人)ぐらいですけども、それでも人数が足りず、まだ全部のグループ会社には入り込めていません。昔からのお付合いがあったところはやっているのですが、全体で見るとできていない部分がありますし、それに対する不満も当然生じているわけです。


なるほど。

久保
そこで、「とにかくグループ会社のニーズに応えることを最優先にやろう」と、考え方を変えました。2年前までは、これからの事業展開を考えたときに、外部のビジネスをやろうという考えもあったのです。


そうですね。外販ということも当然視野に入って来ますでしょうね。

久保
しかし、よくよく考えたらグループ内部に、まだまだわれわれが期待に応えてない会社があるのですから、これを優先してやるべきじゃないかと。しかもわが社がモットーとしています低コスト、高品質、高安全性、高安定性、高付加価値のサービスを提供することによってグループ各社に貢献できたらいいのではないかと切り替えたのです。したがって、外販はしばらく止めようということにしました。


方針ははっきり決まっているのですね。

久保
外販もたくさんの会社がしのぎを削っている中で、今われわれがやるべきなのかというと、そうでもないんじゃないかということになりました。むしろ他のベンダーさんから見たら、SSSは住友化学グループという大きなグループの中で安定したユーザーがいるということを非常に羨ましく思っているでしょうし、いつ何時、彼らに攻めてこられても不思議ではないわけです。それに対して、われわれとしてはきちんとグループ内部に向けて、低コスト、高品質のサービスを提供することが先ではないかと思います。それができれば、将来内部向けの仕事が一段落したときに、外販してもおそらく大丈夫でしょう。


十分な実力は付けているはずだということですね。

久保
グループ内にこれだけのニーズがどんどん出てきますと、実際問題として忙しすぎて、外販はやれなくなってしまいましたね。

海外も含め、まずはグループ内各社への貢献を

久保浩史さん


今後3年から5年ぐらいの将来を見たときに、人材面や事業戦略の面で、何を重点に置こうとお考えですか?

久保
グループ会社はわが社の「ALIS」というシステムを使っています。これも相当長い期間使っていますので、早晩再構築をやらないといけません。グループ会社もいろいろありますから、大中小とそれぞれの会社規模に相応しいシステムを提供できるようにする必要もあります。それが、これからの大きな課題だと思っています。しかもテンプレート化して使いやすくすることで、今のシステムの不備をできるだけ少なくした上で、しかも安く開発することがもっとも望まれるでしょう。それだけでもかなり大変な開発力がつくと思います。それは恐らく当社1社だけではできないでしょうし、当社が得意でないところはベンダーさんとのコラボレーションになります。


どんな会社も、1社だけで完結する仕事はもうできなくなっていますね。

久保
ええ。だからわれわれも今はグループ各社のコンサルでありたいと思います。運用保守も当然やるのですが、実際システムを作り上げる時には、キーとなる部分はわが社が持ちつつ、むしろものづくりよりコンサル的な仕事をしていくことで、IT戦略の実現化に応えていく形になっていくと思います。以前は、システム屋と言いますか、ものづくり的なシステム構築をしていましたが、これからはシステムサービス、つまりサービスを売ることになります。そのサービスがお客さまのニーズに応えられるようにしていかなければならない。そういう方向に変化することは目に見えているので、人材を早く育成していきたいのです。だから短期育成とか、底上げ教育で、できるだけレベルアップを図っていきたいと思っています。その構想の実現には、3年よりももっとかかるかもしれませんけれど


その領域で、いかに高いレベルのサービスを提供して差別化するかですね。ユーザー系企業の場合は、エンドユーザーのノウハウ、つまり業務ノウハウがあるというのが、まずは特徴のひとつとしてありますね。

久保
そうですね。


それから御社では昨年から今年にかけて、マネジメントの標準化を進めておられますので、その次の段階としては、アーキテクトやアナリスト、つまり業務ノウハウやそれを実現していく部分の企画業務を担える人材の育成が、非常に重要ではないかと思います。

久保
社内にIT標準はありますが、その応用になると組織ごとにみんな違っていました。そこで今回は業務プロセスを一本化しようとプロジェクトで検討し、実施しました。AさんがBという職場からCという職場に変わっても、すっと入れるようにということです。それを完遂するには、もう少し時間がかかると思います。今は頭の中の切り替えをやっていて、これから実践で変えていく必要があります。そうなってくると、今おっしゃったような次のステップが見えてくるのではないかと思います。これもまさに各人のスパンの拡大と、人材の育成と活性化につながっていく大きな役割を持っていると思いますね。


いま足下では内部統制とかJ-SOX対応が始まっています。ある意味ではプロセスが重なりますが、将来はもっとスッキリした体系になると思います。

久保
もちろん今回の業務プロセス一本化も、J-SOX対応にも随分と貢献すると考えているわけです。いろいろなやり方があれば、それぞれが全部監査対象となります。そこで今回プロセスを一本化することによって、監査があってもそんな大がかりにならないようにした。ですから早めに手を打ったということだと思います。それだけこれまでがばらばらだったということでもありますが。


これはもう、どこの会社でも非常に悩んでいますし、納期に間に合わない会社が続出するのではないかと言われています。

久保
なるほど、そうですよね。


体力があって耐えられる組織とそうじゃない組織とでは、相当な差があります。

久保
監査法人は安全を見て、厳しめにやっていると思います。もちろんコンプライアンスを重視していなかったら問題ですけど、あまりやり過ぎると費用負担が大きくなり、かえって企業の体力を落とすことになるのではないかと思います。


間違いなく落とすと思います。体力的に見て日本の企業でルール通りにやりきれる会社は上位の、力のある会社に絞られてくるのではないでしょうか。
IT業務は、そういう横並びでやらないといけないところと、突出してユニークネスで勝負するという二通りがあると思います。ユニークネスの方については、今後のビジョンということでは社長はどのようにお考えですか。

久保
現時点で取組むべきテーマが多く、その対応に全力を傾注している中で、そしてITの激しい変化がますます予想される中では、まだそこまで考えられないです。先の見通しは踏まえつつも、やはり目先の問題を片付けなければなりませんから。


その一山を越えれば次が見えてくるのでしょうね。

久保
そう思います。現在、組織を変え、仕事の仕方も変えていこうとしていますし、人材育成をしています。こうありたいという会社のビジョンは、おそらくその先にあるのでしょう。。本当は夢やロマンを語るべきなのでしょうが、現実問題としてはその前にやることが山積していますので、それは私の時代じゃなくて、もうちょっと先になるのではないかと思います。
ただ先ほど言いましたように、当社が住友化学の各グループ会社のIT戦略が担えて、保守運用までやれるということは非常にいいことだし、私としては当社のあるべき姿のひとつだと思います。夢と言うより目指すべきターゲットとして。


さらにグローバルでのサービスを、徐々に実現されようとしていますから。

久保
そうですね。海外各社のニーズに応えるのが大事だと思います。早くそうなるべく努力をしていますが、もうちょっと時間がかかるかもしれません。そのためにもグローバル人材の育成はこれからも大いに取組みたいと考えています。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

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