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2008年6月 6日

【林衛の業界探求シリーズ(5)】第二回 「現場を見て業務の実際を知ることの大切さを学ぶ」

周囲のプロ意識に触発され鍛えられる

日比喜博さん


その後、カードのお仕事はどう展開したのでしょうか。私も銀行の仕組みを構築したことがありますので、とんでもなく大変だったのではないかと推察します。

日比
カードの仕事では、教科書なんてありませんし自分ひとりで特別な勉強をしたということではありませんでした。他のクレジットカード会社さんや証券会社さんや銀行さんと、いろいろなデータ交換をしなければいけないので、「打ち合わせをしてきてください」と、クレジットカード会社の人に言われて、自分で行ったり、打ち合わせについて行ったりしました。それがSEとして非常に勉強になりましたね。実際に銀行または証券会社の方と打ち合わせに行くと、セキュリティー面や品質の面での考え方が全然違うということに気が付き、行くたびに勉強して帰って来ることになりました。またそれを使ってシステム開発をするのですが、何も知らない駆け出しの若造でしたので、1年ぐらいの間に相当実務的に教えていただいて、非常にありがたかったと思っています。


私が思い出すところでは、80年代にお会いしたお客さまたちは、スペシャリストとしてのレベルが高かったですね。自分が若くて、まだそこまでのレベルに到達できていなかったからそう感じたという部分もあるのでしょうが、すごく詳しい人が、けっこういらっしゃいました。

日比
そうですね。職人気質の方が多かったです。企画部門のシステム担当の方は、業務や営業部門も全部まとめる力があって、非常に論理的にお話しをされて、かつシステムの知識も豊富だったのです。そういう方と仕事をすると、「システムを構築するには、業務を取り仕切れる能力がないと設計はできないんだな」というのがよく分かりました。その感覚を、仕事をしながら体で覚えたという感じですね。


そのころのお仲間で、まだぼつぼつとお付合いしている人はいらっしゃるのですか。皆さん偉くなっているでしょうね。

日比
そのころ一緒に徹夜したメーカーのSEさんは、今ではソフトウェアハウスの社長です。


私もそのころ大きなプロジェクトに参画していましたが、プロジェクトとして一緒にがんばると、会社の壁を越えてしまいますよね。先ほど日比さんが言われたように、怒鳴る人も出るのですが、みんなプロジェクトを遂行するためのプロ根性に溢れているわけです。今となっては、そういうことがずいぶん懐かしいなと感じます。今は、人を隔てるような、おかしな建前みたいなものが出てきている面もあるようで、あのころのような雰囲気がありません。

日比
そういうお客様たちを間近で見て、「ITも勉強しなければいけないけれど、それに加えて、業務も勉強しなければいけない」と自覚したのがそのころでした。
ですから、クレジットカード会社をつくるという仕事を任されたときに、自分でいろんなクレジット会社のカード会員に全部入会したのです。


客として入会して、システムがどんな感じなのか体験するのですね。

日比
ええ。入会のシステムはどうなっているか、案内書はどういうふうに送ってくるか、請求書はどう送って来るか、全部わかるわけです。ですから、実際に自分で商品を買ってみて、「引き落としをわざとやめたらどういう具合になるのかな」と経過を見て、督促状をいただいたこともあります。もうちょっとでブラックリストに名前が載って、ローンも借りられなくなりそうだったので、それ以上はやめましたけれど(笑)。真面目に仕事をしているような顔をして、実は半ば遊びながら、そういうことをやっていました。今の若い人には、「業務を知るためには、そういう突っ込んだこともやったほうがいいよ」とは言いつつ、私の場合はちょっとやり過ぎだったかなと反省もしていますね。


いや、仕事自体が非常に張り詰めているわけだから、ずっと張り詰めては、人間がもちません。どこかで気を抜く必要があります。そのような日比さんの人間性と言うか、遊び心が、仕事上の余裕になっていたのではないでしょうか。

日比
遊びの話をしますと、そのころから徹夜の連続だったのですが、まだ私も30歳前後で体力的には非常に元気でしたから、徹夜したあとで、みんなで車を出してスキーに行ったりしていました。夏になると24時間の屋外のコンサートに行ったり、飲みに行ったり。私がそういう遊びを組織するのも好きだったのと、一緒にやってくれたメンバーも、仕事の面でのチームワークはもちろん、仕事外のチームワークも非常によかったのです。そういう時代もありましたね。

真剣によく遊ぶ人ほど仕事ができる

林 衛


今のお話で思い出しましたが、先日、私のよく知っている会社に「社員のやる気度メンタル調査」を依頼しました。10社で400人弱を対象とした調査結果で、年代別に、どういうファクターが成果と繋がっているかという相関を取ってもらったのです
そうすると、成果をきちんと出している人は、仕事以外の趣味を一生懸命やっている人であるという面白い相関がわかりました。もちろん、両立するだけの体力があるというのが前提ですが(笑)。
ちょっと話がわき道にそれますが、この年代別の分析結果は面白かったのです。今の40代以上の人は、自分なりの趣味を持って、きちんと遊んでいることがわかりました。ところが、それより下の30代は、遊んでいなくて、仕事の成果にも繋がらないという結果が出ました。どうもそのあたりがバブル世代と重なってくるようです。それよりさらに若い世代は、またそれなりの特徴があるのです。
今のいわゆる「おじさん」たちは、ちゃんと成果を出しながら遊んでいるのですよ。

日比
業種に関係なく、この世代には趣味にこだわりが持てる人が多いかもしれませんね。自分の好きなものがあれば、嫌なことも我慢ができるし、それは仕事の成果につながるかもしれません。人生積極的な方のほうがいいのですね。


そうです。私も忙しくなればなるほどゴルフの回数が増えてくし、音楽を聴く回数も増えてくるので、今の日比さんのお話は理にかなっていると思いました。

日比
学生のころ、試験の前になると、勉強以外のものを何かやりたくなったと思います。急に小説を読みたくなったり、音楽聴きたくなったりしました。仕事でも同じですよ。


追い詰められれば追い詰められるほど遊びます。私も、忙しくなればなるほどゴルフのスケジュールが入ってきます(笑)。

日比
「何とかスケジュールを空けてゴルフに…」(笑)となりますね。


ゴルフをしているときには、仕事は全く頭の中にないくらい集中しています。すると今度は月曜日から仕事に集中できる。明らかに、「濃い遊びをすると、濃い仕事ができる」という感じがします。

日比
まさにその通りだと思いますよ。


濃くないとだめですね。たぶん日比さんもそうなのではないですか。中途半端では生きている感じがしない(笑)。

日比
そうですね。そのころもそういう濃い遊びもしましたが、チームをどうやって運営していくかというのは非常に気を使いました。まだ、プロジェクトという呼び方はしていませんでしたが。


チームの活性化ですね。

日比
そのころある本を読んで一番いいと思ったのは、机の上にバスケットを置いて、ビスケットやキャンディーで一杯にしておくというアイディアです。引き出しの中にはカップヌードルをいつも入れておく。女性も多かったので、「どうぞ、飴ぐらいは食べて下さいよ」と、そこで簡単にコミュニケーションも取れます。アメリカなどでは、ビスケットとコーヒーが必ず置いてあってミーティングするコーナーがしつらえてありますが、そういうものにもちょっと憧れがありました。やはり一緒に食事に行くとか、みんなで一緒に残業のときにおにぎりを食べるとか、そういうことが仕事の面では非常に重要だということを、若いときに勉強することができたと思っています。

現場には学ぶべきことがたくさんある

日比喜博さん


今の日比さんの話をお聞きすると、夢のような時代でしたね。苦しい面もあったと思うのですが、日比さんは結構楽しんでいらしたでしょう。

日比
どう言ったらいいのか(笑)。先輩にいろいろ助けていただいたのですが、今思い出しても、「よくこんな無謀なことをしたな…」と自分でもあきれるようなこともありましたが、その中でたくさん学ぶことができました。入社したころの私だったら、たぶんマシン室の中に一日中こもっていたと思うのですが、現場から学ぶことは非常に多いです。ですから、今でも私はみんなに「必ず現場を見に行きなさいよ」と言っています。
例えば、私がカードを使えるように設定したので、新しくお店が開店するときに、きちんとそのカードが使えるかどうかを、自分で行って確認したことがあります。朝の10時に行って、実際に購入してみたらカードが使えなかったのです。


それは、ちょっとガッカリですね。

日比
すぐ帰って原因を究明しようと思ったのに、開店したばかりのお店ですから、応接室へ通されて、「お客さま、申し訳ございません」とお茶を出されました。「私は関係者です」と本当は言いたかったですが、そこはお客様のふりをして「いやいや、結構です」と言って現金で払って、慌てて会社へ戻って調査をしたというような、心臓が止まりそうな経験も何度もしています(笑)。今でしたら、新聞記事になっているような事態ですよね。


やはり現場まで行って、一歩突っ込んだ仕事をされていたのですね。

日比
それは非常に重要なことではないかと思いますね。
ちょっと話は飛びますけども、仙台のほうのハイウェイレストランにPOSを設置することになりました。名古屋から自分の車でそこへ仕事をしに行ったのですが、現状調査という名目で、名古屋から仙台までのハイウェイのレストランを全部見学しながら向かいました。一個ずつジュースかお菓子を買って、そのときレジからレシートが出てくるか、POS化されているのか、それともメカレジなのかというのを全部メモしました。行きで24時間かかりましたね。しかも車の中は、ジュースとスナックだらけになりました。


それはすごいですね。

日比
普通なら飛行機で行ってすぐ仕事をしないといけないと思いますが、そのころはそういう余裕のある仕事もしていました。仕事先のハイウェイレストランの店長さんにお会いして、そういう話をしましたら、店長さんが非常によく話に乗ってくれましたね。「隣のパーキングエリアのレストランのレジは何が入っているのかも私は知らないのに、日比さんはよくそんなの知っていますね」と言われて、「いや、いま見てきましたから」と(笑)。


全部見て来たので、到着するまで24時間かかったのですね。

日比
夜中に「このPOSのメーカーはどこだろう?」とレジを覗いていたら、奥から店長が、強盗と間違えて飛んで来たこともあります。「こいつはレジの札束掴んで逃げるんじゃないか」と間違えられて(笑)。監視カメラで見ていたのでしょうね。血相変えて飛び出して来ました。


なるほどね(笑)。

日比
お店の人のやっていることは、コンピュータルームの中にいては全くわからないのです。でも、そういうふうに現場を見ていると、その会社の事務部門の方よりも業務がよくわかるかもしれないのです。やはり私たちの仕事は、事務部門の方とお話しすることが多いのですが、それだけではなくて、現場のことをよく見ないといけないというのは、そのころしっかり覚えたことです。


そういう観点でいえば、名鉄グループはさまざまな分野に事業を展開しているので、興味は尽きないですね。メイテツコムという会社がいろいろなことを手伝えるわけですから。現場も生活に密着していて分かりやすいですし。

日比
そうですね。ホテル、トラックなど、いろんな業種がありますので、私は普通のソフトウェア開発会社さんより楽しく仕事ができるのではないかと思っています。


私も今のお話を伺って、とても楽しい職場だと思います。その辺をもっとアピールされるとよいのではないでしょうか。こんな話を新卒の説明会ですれば、楽しい会社だとわかりますよ。

日比
今のような話は、社内向けにはちょっとずつ出しています。私の周りには、そういう話は巨万(ごまん)とありますので。今お話したことは、もう時効になっていて、外部の皆さんにもお話してもいいものばかりですが、実はまだ言えない話もたくさんあります。


それはメイテツコムに入社すれば、日比さんからこっそり教えてもらえるのでしょうか(笑)。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子

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