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2008年10月31日

【インドIT研修(2)】第四回 研修後に自分自身を振り返って感じたこと

インド体験で世界観は変わるのか

― 4ヶ月間の研修を受講し、しかも週末にハードな旅行をしたわけですが、その経験を通して、ご自分で「このあたりが変わった」と自覚しているところはありますか? ITスキルも英語も、人間的な部分も全部含めてですが。

原田
よく「インドに行ったら世界観が変わる」と言われますよね。僕も帰って来てから、いろいろな人から「どうなの? インドに行って世界観が変わった?」と聞かれました。
インドにいる間、日本に帰国してから自分と対話して色々考えてきましたが、180℃変わることはそうそう有り得ませんけれど、この先の自分にとって有益であろう、"良い種"を自分の中に蒔けたかなとは強く感じました。これから先、芽が出て花が咲いて実になるような種です。そういったきっかけになることが、今回の研修ではすごく多かったですね。
本当に自分の人生において貴重な体験となりました。研修に派遣してくれた自分の会社に感謝しています。

― 原田さんが言うところの"種"というのはなんでしょうか。

原田
僕が「のちのちやりたいな」と思っていることに、つながるものですね。これから先の自分の人生において有益になるだろう情報とか、そのやり方や考え方だったりもします。
僕は将来的には、IT業界で後進の人たちの育成ができるようになりたいと考えています。それにはIT技術の習得ももっと必要だし、クロスカルチャーなどの人間的な部分も大事です。ですから、今回のインド研修は、僕にとってはすごくよい研修でした。

― 上高牧さんはいかがですか。

上高牧
変化の大小について言うと、喜怒哀楽の基準や価値観が変わるほど大きくは変わってないと思います。30年近く生きてきて、もう子供じゃないので、それなりの「こだわり」のようなものも既にありますしね。もちろん小さな変化はあったとは思いますが、今回のインド研修に限らず価値観や人生観が大きく変わるほどの衝撃的な経験をする可能性は、現在の情報社会の中では、あまりないのではないかと思います。行く前にテレビや本、インターネットなどで情報を得ることができますので、非日常や異文化に対して、ある程度ではありますが無意識に事前準備してしまいますから。

― それでは、上高牧さんにとってインド研修の異文化体験の部分は、あまり意味がなかったのでしょうか?

上高牧
もちろん、そんなことはありません。異文化体験は、インド研修の根幹を成すところだと思っていますし、欧米でのIT研修ではなく、インドを選択する理由だとも思います。自身の変化に対する質問の答えとしては飛躍がありますが、異文化体験を通して「自分について知る・自分について考える」ことができたことに大きな価値があったと私は思っています。
インド研修前後の、自分の考え方や行動の変化について考えるには、インドに行く前の、日本で普通に生活しているときの自分の考え方や行動について、きちんと考えて整理していることが前提ですよね。でも、そもそもそれができていないケースが多いと思います。少なくとも私の場合はそうでした。自分のことは分かっているようで分かっていないことが案外多いものだと思いますし、日本で普通に生活していると、そもそもじっくりとそんなことを考えたりしませんよね。

― そうですね。日常の中では必要を感じないかもしれませんね。

上高牧
個人の考え方や価値観は、日本の歴史や文化・社会環境や、もっと身近なところでは、自分が勤める会社や、親交の深い仲間の中で影響を受けて形成されたものですから、個人差はもちろんありますが、全体的には共通する部分が多いと思います。だからこそ、「国民性」や「日本人らしさ」といった表現が存在するのだと思います。ほぼ同じような考え方や価値観の環境の中で生活していると、ちょっとした比較はするものの、歴史観、宗教観、人生観、職業観といったレベルまで、自分の考え方や価値観について突き詰めて考えることは少ないと思います。
ところがインドで生活すると状況は違いました。インドでは超格差社会、宗教、歴史といった社会的レベルのことから、家族との関係、仲間との関係、男女間の関係といった個人的レベルのことまで、日本での考え方や価値観、習慣とは明らかに異なる環境の中で生活することになります。そのような状況の中で、日本社会や自分の考え方、価値観、習慣などと自発的に比較して自問自答する機会や時間を多く持ちました。そういった自問自答を繰り返すことで「自分について知る・自分について考える」ことができたのではないかと思います。そのことに大きな価値を感じていますね。

― 仕事については、変化というほど大きなものでなくても、何か影響はありましたか。

上高牧
大きな変化ではありませんが、インドでエネルギーを充電できたような気がしています。日本ではIT業界は3Kとか言われてますが、インドではITが主要産業になりつつありますし、社会的ステータスも得られるということもあって、プライドや使命感を持って働いているIT技術者がいたり、いろいろな話を聞きました。将来、IT技術者を志望する学生も多い。非常に勇気付けられましたね。

― タイミングとしてはなかなかよかったのではないですか。

上高牧
そうですね。ITの仕事に対する迷いが少し吹っ切れたような感覚があります。ITの仕事は「ものづくり」の仕事だと思いましたし、私の仕事も非常に微力ながらも「社会をつくる」ことに一役買っている。社会的責任があり難しい仕事であるからこそ、大変で苦労を伴うわけで、自分の職業人生をかける価値がある。やりがいのある仕事だということを改めて思いました。
帰ってきてからは、忙しい時は体は疲れますが、精神的なところでは迷いがなくなった分、打ち込んで仕事ができるようになったと思います。もちろん、忙しい時は「しんどいなぁ」と思うのですが、忙しい時ほど間違いなくパワーが出ている状態ですし「充実している」とも同時に思えるようになりました。そのあたりはちょっと変わったのかなと。

原田
あとひとつ、上高牧さんが変わったところを僕が代弁していいですか。本人は照れくさくて言えないと思うので。

上高牧
えっ、何?

原田
最後の夜に外で飲んで、その後に友だちを引き連れて、クラリオンで飲み会をしたんですよ。上高牧さんが朝方4時ぐらいになったときに「俺はこんなことを言う人間じゃないんやけど…」とか言って、「クラリオンズと一緒で楽しかった。」みたいなことを少し涙声で言ったんです。もう一人のルームメイトはずっとつぶれて寝ていたので、聞いていないのですが。(笑)

上高牧
寝とった。あいつには、そういうところがある(笑)。肝心な時に、酔っぱらって寝てる。そういう「酒の星の下」に生まれているから仕方ない。責めたらかわいそうや(笑)。

原田
僕たちがすごく熱い感じになったので、他のみんなは「もう帰ったほうがいいね」と(笑)。

上高牧
みんな酔っぱらってたから、私が泣いていると勘違いしてただけなんです。実際のところは、ほんのちょっとだけウルウルきてたぐらいです。むしろ原田さんのほうが、めちゃめちゃ号泣していたんですよ。

原田
もらい泣きだよ(笑)。男が涙流して本音をぶつける。そりゃぶつけられた方も泣くじゃないですか。ずるいと思いながらも純粋にすごくうれしかったですね。それも上高牧さんが変わったところじゃないのかと思って。

上高牧
何かずるいなあ(笑)。ここで言うたら、ずっと残るしWEBで公開されるねんで(笑)。

原田
でも、あれは本当に感動的でしたよ。もう一人は、そのあと相当悔しがっていました。周りから「そういうことがあったんだよ」と言われて、「ええっ、俺、何でつぶれて寝ていたんだろう」って言って(笑)。

上高牧
この時以来みんなから、いじられて大変なんです。事実とは、ちょっと違うんですけどね…やっぱり泣いてないんです。原田さんのネタにつきあってあげているんですよ(笑)。

原田
はいはい(笑)。おれは胸をはって言えますけどね。「号泣し合える仲間に出逢えたぞー」って!(笑)この齢になってそういうのって、あまりないじゃないですか。

― それはとてもいいお話ですね。

自分次第で広がる経験と人間関係

― 今振り返って、これから次のインド研修に行く後輩に、インド研修のよかった点や、「こんなときはこうすればいいよ」とアドバイスするとしたら、どんなことを話したいですか。

原田
もう、次の研修生が決まっているので、僕は自分で体験したことを、特に生活面で「ここは気をつけなきゃいけないよ」とか「ここはこうしたほうがいいよ」ということを一通り伝えました。今度の研修の時期は雨期なので、そこばかりは分からないところですが…。僕たちのときは毎日晴れだったですからね。
僕の会社の後輩に限らず、このWEBをご覧になっているこれから研修に参加する方々へ。
同じ期間、同じ研修を受けてもあなた次第で自分の伸びしろは無限大です。
The possibilities are infinite. なのです。
経験するだけではなく、その経験から自分で考えて自分の中に落とし込む作業が、よりその経験の意義を広げたりすると思います。
インド研修では日本で経験できない経験もでき、自分と対話する時間もたっぷりあります。たまにはゆっくり自分と対話するのも自分を活性化させますよ。

上高牧
4ヶ月ありますから「こんなことをやりに行こう」「こんなものを食べに行こう」「バディに会いに行こう」といろいろな企画があります。正直に言うと、疲れている時とかは、乗り気じゃなかった時もありましたが、行ってみたら結構楽しかった。ですから、「とりあえずインドに行ったら腹を決めて、何でもやってみたほうがいいのではないかな」と思いました。ものすごく極端な話をすると、アパートと研修所の往復だけだと日本にいるのとあまり変わりません。少しの勇気と積極性がいりますが、そのルートからはずれたところにインド研修の妙味が散らばっていると思います。

原田
インドの研修センターの掲示板みたいなところに「この日曜日はどこで何がある」と、結構いろいろと地元の催し物の情報を載せてくれています。そういうのにも積極的に参加したほうがいいと思います。
行ってまだ2週間ぐらいのときに、ワイン・フェスティバルがあったんですよ。

上高牧
あったね。

原田
ワイン試飲会なので結構ブルジョアな方がいらっしゃって、様々なインドの方々と交流も持てたし、ある会社の社長さんにワインをおごってもらったりもしました。
おまけに僕はムンバイの新聞に載りました。新聞のインタビューを受けてはいたのですが、結構たくさんの人に取材していたので載るわけはないと思っていたんです。しかし、たまたまビジネス英会話研修でその新聞を使って記事を発表する授業があったときに、「これハラディじゃない?」と、偶然発見されました。しかも紙面にかなり大きく顔写真が。インド来て2週間でメディアデビュー、「おれ、もってるな~」って思いましたね(笑)。われわれの同期は、けっこう他にも新聞に載ったんですよ。5人はいたんじゃないでしょうか。

上高牧
研修の同期もすばらしかった。みなさん非常に優秀なエンジニアでした。

― そう、そのお話がまだでした。他のメンバーとの交流はいかがでした。

上高牧
いろいろと教えてもらいましたし、研修メンバー間で、良い刺激を与え合ってモチベーションが上がった点も良かったと思います。そういった交流の中で、SEとして自信を深めたところもありましたし、逆に課題意識を持ったところもありました。
私達のバッチ(期)は、IT企画担当、金融系システム担当、組込系SEが参加されていました。授業中の質問内容やグループ演習などを通して、研修メンバーの技術レベルや得意分野が分かり、各企業のシステム開発方法やプロジェクト管理方法についても授業中にコメントを聞くことができたので、自分や自社の技術力やシステム開発方法、プロジェクト管理方法について相対的に比較してレベルを確認できたのが非常に良かったと思います。
日本に帰ってきてインド研修期間中に交換した名刺を整理していた時に気づいたのですが、4ヶ月で50人近くの方々と交流があったことになります。社会人になってからは短期間にこれだけの人と交流することは滅多にありませんので、大変貴重な経験だったと思いますし、これからも大事にしていきたいと思います。

研修を終えて感じたこと・考えたこと

― 最後に、お二人にとっての研修の成果をまとめると、どのようなものでしたか。会社でも研修報告をなさったと思いますが、周囲の反応はいかがでした。

原田
インドに行く前と後での仕事の内容が変わって、今はもう現場のプログラミングではなくて調整する側になりました。現場で製造している業務チームと、マネジメントをやっているチームとの橋渡し役です。ですから、仕事で人と話す機会が以前と比べて断然増えました。それまで開発中心だったので自分のチーム以外の方とはあまり会話をしたことがなかったのに、今ではその機会が増えるどころか会議の進行までやってます。話している自分に「ああ、何か自信持って話せてるな、俺」と感じますね(笑)。
僕はあまり会社で地を出さなかったので、近しい人からは「やっぱりインドに行った甲斐があったね」とか「それをもっと出せよ。何で今まで出さなかったの」と言われます。だから、まわりからは「いい意味で変わって帰って来た」と思われているのかな。
自分の中では、ビジネス的なやり取りが前より円滑にできるようになりました。

― それは仕事をしていく上でも、大きな武器になりますね。

原田
研修報告では、それまで上流工程の設計は経験したことがなかったので、研修を受けたことで今まで漠然と理解していた点と点が線でつながった、という内容をまとめました。今まで見えにくかった部分が体系的に学ぶことによって理解できたというのは良かったですよね。

― 上高牧さんはいかがですか?

上高牧
当社では1回目の研修生だったので、「あのインドに行った人って、君か」という反響はありました。やはりIT研修の中身より「インドってどんなところ?」ということに興味があるみたいです。いろいろなところへ旅に行ったので、写真を見せて説明しています。それと先ほどもコメントしましたが「インドに行って何が変わった?」という質問が多いです。これもインドに行くと人生観が変わるとか、みなさんそういうイメージが強いからだと思います。先ほどは「自分について知る」の話をしましたが、強いて「変化」という観点で言うと、比較対象となる新しい経験値が増えたことなのではないかと思っています。説明が難しいですが、「メートルだけじゃなくてヤードっていう基準もあるんやなぁ」という感じでしょうか。日本の常識は世界の非常識のような感覚。比較対象となる新しい経験が増えたことで、自分らしさや自分の人間性について考えることにつながる。「そんなのSEにはあまり必要がないよ」という意見もあると思いますが、それは少し精神的に不健康な意見だと思います。私達はSEというエンジニアである以前に一人の人間ですからね。時には自分自身のことについて、じっくりと考えることは、とても大切なことだと思います。

― 先ほどのお話にもありましたが、インドに行く前は、あまりそういうことについては考えなかったのですね。

上高牧
ええ。クロスカルチャーの授業では「日本人の考え方について考える」というテーマで進められたのですが、その時に「私は非常にデジタル的な考え方、価値観を持っているのではないか」と感じたのです。仕事柄なのか私には、0か1か、必要か不要か、どちらか白黒はっきりと決めようとする傾向がある。SEの仕事をする上で、重要な考え方ですが、極端にデジタル的な考え方だけに偏ってしまうとエンジニアとして、パフォーマンスが発揮できないような気がしたのです。意外と、あいまいなところからクリエイティブなことができることがあると思いますしね。
インド人のように良い意味での「いいかげんさ」や、宗教でなくても「何か信じるところ」を心に持つ事で、彼らのようにリラックスしつつ、タフでパワフルになれるのかもしれません。

― お二人とも、何かそれまでのご自分の殻を破るようなことが起こっているようですね。これからインドで蒔かれた"種"がどのように成長して花開くのか、楽しみです。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

(終わり)

構成:萩谷美也子

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