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2009年4月10日

【林衛の業界探求シリーズ(7)】第四回 本当のグローバル化を目指した仕組みづくり

グローバル化時代のシステムのありかた


今後はどのあたりに重点に置いて改革をされるおつもりですか。ここまででもずいぶんお聞きしましたが、さらに二つか三つ挙げるとすれば、いかがでしょうか。

今井
デンソーはグローバル企業で、これから伸びるのは海外事業です。いかに海外事業を拡大、展開していくのか、あるいはいろいろなニーズに柔軟に対応していくかということが非常に大切になってきます。そのためにはITが事業拡大や展開の足かせになってはいけません。ところが、システムの仕事というのは硬直化しがちで、なかなか柔軟性がないのです。


そうですね。どうしても硬直化しやすいものですね。

今井様

今井
ええ。そこをもう一度これからの事業拡大に合わせて、基礎から見直さないといけないと思っています。グローバルと言いながらも、実はグローバルシステムになっていないのです。現在まだできていないこと、将来要求されてくることを見直して、もう一度業務の標準化も含めて再構築をしていく必要があります。これは非常に大きな改革となります。
ちょうど私が会社に入ってからホスト時代に築いてきたものが、技術も事務もいまだにベースになっているのですね。やはり限界があって、これから先ずっとこのままやって行けるわけではありません。当時と今とでは事業環境は全く違いますので、現状に合わせていくには無理がきている。業務もきちんと見直していく必要があります。しかし、今まで何十年もかけて積み上げていたものを、そう簡単に変えられないのです。


それは変えられる部分と、変えてはいけない部分があると思います。単純に再構成すればいいという話ではありませんから。

今井
ええ。ただ再構成するだけでは全く付加価値を生まないので、付加価値を付けた上で再構成をしていかなければなりません。そうすると、今から10年ぐらいかけていろいろやっていかねばなりません。現在社内にそういうことに耐えられるだけの内製力があるかというと、実はまだないと思っています。この2、3年の間にしっかりと内製体制を整え、向こう10年かけて新しいインフラの上できちんと構築できるようにしていかなければと思っています。


まさにグローバル化についてもお聞きしたかったのですが、やはりちゃんと考えておられるのですね。グローバル化については、各社事情が違いますし、今置かれている立場によってグローバル化の意味が、それぞれ全部違ってくると思います。グローバル化に対応する人の問題もそうですし、それから今内製というお話がありましたが、その中には海外の人を採用してやるという話もあるでしょう。標準化についても、グローバルスタンダードにある程度枠組みがのってないと、グローバルプロジェクト自身が成り立たなくなります。今お話に出たのは、そのへんの取り組みに関してかと思いますが。

今井
ええ、そうです。まず業務をどうするかですね。今までは日本を中心にして世界に情報や商品が流れていたのですが、今は日本を通らずいろいろな地域間でダイレクトに情報や商品が動くネットワーク型のビジネスが出てきています。しかし、仕組みも業務もそうはなっていないのです。ですから、時代に合ったかたちで、それをうまく進められるように変えていかないといけない。
ただ今までグローバル化してなかったかというと、そうではなくて、やはり世界中に日本で開発したシステムを持って行ってやってきているわけです。そうすると、現地でもある程度デンソーの生産管理のやり方がわかってきましたし、その生産管理をやる人や生産管理に対するデンソーの標準システムをメンテナンスする人は、そこそこの人数になっています。これは非常に貴重な財産だとおもいます。


そうですね。

今井
次のグローバルな仕組みを最初からつくるためには、そういう人たちを活用できると思います。ただ、残念ながら少し古いホスト系の仕組みしか知らない。オープンな新しい仕組みの開発や設計思想について、もう一度再教育をやらないといけないでしょう。それも含めて、そういう人材をうまく使っていけるよう、われわれIT部門の内部の体制やマネジメントも、本当にグローバル化しなければいけないと考えています。
今はそれぞれの地域に任せて、なんとかつないでいるのですが、そこをもう一段階進めて「ワンデンソー」にしようとしています。


なるほど。ワンデンソーですか。

今井
われわれのIT部門もワンデンソー、ワンシステムにしていこうということで、グローバルなマネジメントや、いろいろな意味での協働開発体制を構築したいと思っていまして、それは徐々にやり始めているのです。

英語でのダイレクトコミュニケーションが課題

今井
その中でやはり障害になるのが言葉の問題です。これは依然として残っています。われわれの部門はほかの部門に比べて、海外出向経験者が多いほうなのですが。


ええ、いろいろな方とお話しすると、海外に行っておられた方が多いですよね。

今井
確かに多いのですが、もっとコミュニケーションを英語でダイレクトにできる人材にしていきたいと思います。これはITの面だけではなくて、本質的なダイレクトコミュニケーションができる環境作りや育成もやっていく必要があります。
これができないと、結局今のオフショアの使い方のように、リエゾンのエンジニアが入ってやらなければなりません。それではなかなかプロジェクトが進まないですよね。これは非常に大きな課題です。「10年がかりで取り組んで、やっと土台ができるかなあ」というレンジで考えています。

林 衛


確かに、それくらいのレンジかもしれませんね。ちょっと宣伝みたいですが、3年前から当社でやっているインドでのIT人材育成事業がようやく軌道に乗ってきまして、今ニーズがユーザ系企業にだんだんシフトしています。それは、もう待ったなしで着手しなければならない段階にきているということの、一つの現れなのだろうと思っています。
もちろん会社のIT部門全体の方針もあるでしょうし、今いる人たちや今後入ってくる人たちをグローバル化するための育成もあるでしょうし、それから外国人を取り込むという方法もありますから、それだけが一つの選択肢ではありません。
私は、さらにこれには、少子化の問題が関わってくると思います。高齢化・少子化の影響で、就業人口が減ると言われていますが、「いや、金さえあれば大丈夫」とか、「うちの場合は関係ない」という態度の会社が結構多いのでが、それでは到底対応できないと思っています。
例えばベトナムと日本と比べたら、元気なSEの数を揃えるにはベトナムのほうが可能性はあります。インドは言わずと知れていますし、付き合いは難しいですが中国もそうです。そのあたりはどのようにお考えですか?

今井
それはもう、日本で人を増やすのは限界なので、海外の人たちともうまく組んでやっていくというのが必須です。ただそのときのやり方として、自前でやるのか、ベンダーさんにお願いしてやるのかという二通りがあると思います。私はもう少し自前でやれると思っています。それは先ほど言ったように、海外の各地域にはローカルスタッフを含めて、今本社にいる人間のちょうど半分ぐらいの人がいます。この人たちは一応デンソーの仕組みを知っていますから、非常に有効活用できるのです。


ローテーションしたりするのですね。

今井
ええ、結局は人材だと思います。いろいろ流動はしていますが、それでも海外で今のシステムメンテナンスや機能追加をやっていますので、そういう人たちとうまく組んで新しい仕組みを作っていく。そういうことができれば、まさしくグローバルなシステムだと思います。
今までは日本で作ったシステムを海外へ持って行っていました。もちろん最初に要件を聞くのですが、なかなか聞ききれなくて、持って行ってから「いや、ああだ、こうだ」となるのです。最初から現地のユーザも含めて設計して開発すれば、各地域のユーザと事後調整して手戻りすることも少なくなるはずです。そういう意味で、初めて本当にグローバルなシステムができるのではないでしょうか。
ただ、さっき言いましたように言葉の問題があります。言葉が、実際どこまでグローバルなプロジェクトを組めるのかどうかにかかってきます。出向経験者の活躍の場は非常にたくさんあるのですが、負荷がかかり過ぎてしまう面も出てくるでしょう。

準備するより、現地での実践で慣れる

今井
もう一つ、私自身が海外出向を経験した立場で言うと、英語を勉強してコミュニケーションできるようになるのを待ってからでは遅いのです。逆に言うと、そういう場がないと勉強できないので、しゃべれてもしゃべらなくても、コミュニケーションできてもできなくてもその場に放り込んでしまうというのがいいと思います。


ある程度見切り発車してしまう。

今井
そう、それをやらざるを得ないと思います。で、私もしゃべれないままアメリカに行かされました。それでも苦労しながら3年間マネジメントしました。その経験から、「人間その場で追い詰められないとしゃべるようにならない」と(笑)。


ただし、それができるのは能力を持っている人に限られます。今井さんだからそれがなんとかできた。でも、いずれにしても環境が強制的に変われば、やらざるを得ないですよ。

今井
そういう加速をしないといけません。自助努力や機会を待っていたら、なかなかできないと思います。今デンソーにはトレーニー制度がありまして、研修ということで海外に行くことができます。コストは本社負担ですが、その負担ができるうちは、できるだけトレーニーとして若い人を海外に出し、海外からもトレーニーで受け入れて交流を活性化したいです。実際に仕事の場面に海外の人たちが入ってくれば、英語でコミュニケーションせざるを得ない。無理でも一生懸命やります。そういう環境にない中で「英語を勉強しろ」と言っても、結局勉強に終わってしまいます。


「だって勉強しなくたって生きられるんだもん」(笑)ということでしょうね。若いうちにポンと海外に出してしまうと、わりと習得が早いですよ。

今井
ええ。特にアジアの人たちが一生懸命日本語や英語を勉強するじゃないですか。あのハングリーさは、必要に迫られてやむにやまれずというところがありますよね。
日本人は、日本の企業にいてはそういう気にならないので、無理矢理そういう環境に突っ込んでしまう。荒療治かもしれないけれど、そういうことぐらいしないと、10年たっても変わらないかなと思います。


「まだ準備できていません」という人は、「どうせこのままでは準備しないんだから、行けよ」(笑)と、向こうに行かせてしまうのが、絶対お勧めだと思いますね。

今井
海外に進出していった先輩たちの話を聞いても、別に英語がしゃべれたから行っているわけではなくて、「とにかく海外に拡販しなきゃ駄目なんだ」と行かされて、向こうで苦労しながら、それでもビジネスを取ってくるわけです。そういう切磋琢磨をした先輩たちがいて、今初めてわが社が成り立っている。もっと今の若い人たちにチャレンジさせないといけないですよね。


仕事ができる人なら、英語ができないというのはたいした問題じゃないですよ。行かせてしまったほうがいいです。
余談ですが、「英語だけできて仕事ができない人」に対しての扱いがまた間違っていることが多くて、いろいろな会社でけっこう変な人事をしたりしています。英語しかできない人が一番どうしようもないという場合は多々がありますが、仕事ができる人は、英語もなんとかなりますよ。

今井
海外行っても英語がしゃべれない人は、もともと日本語もうまくしゃべれていないです(笑)。コミュニケーションの意欲があれば、あるいは必然性があれば、自然にコミュニケーションできるようになります。でも日本でもコミュニケーションできない人は、向こうに行ってもコミュニケーション能力は上がりませんね。
ですから、仕事のキーマンになる連中は、どんどん海外へ行かせるというのが必須です。習うより慣れろで。


なるほど、お聞きすると、今井さんの仕事は終わりがないですね。

今井
そろそろ引退したいという気もするのですが(笑)。


いやいや。グローバル化に確信をもてるまでは引退できないのではないでしょうか(笑)。

苦しくても人を頼らないのが上達のコツ

今井
先ほどの、ダイレクトコミュニケーションの話ですが、要するに海外に日本人が出ているのが、ダイレクトコミュニケーションを阻害している一つの要因なのです。日本人がいるから、そこを頼って日本語でやり取りしてしまう。「もうこれは止めよう。海外に行った日本人は通訳じゃない。ちゃんと仕事を持っているのだから、担当はダイレクトにそれぞれでやりましょう」と言っています。「そんなに英会話はできません」と文句が出るのですが、そんなことに関係なく、もうダイレクトコミュニケーションでやれと。
今は幸いなことにメールがありますから、電話で会話しなくても仕事はある程度済ませられます。メールは少し考える時間が取れますからね。分からなかったら辞書を引きながら文章を作ればいいですし。


メールは相当楽ですよ。電話でのやりとりはきついですね。敷居が高いです。

今井
ええ。メールでやればそこそこすむ仕事もありますし、ダイレクトにコミュニケーションすれば、向こうも目的は分かっていますから、8割、いや7割ぐらい合っている英語なら、だいたい通じます。駄目だったら、また聞き返せばいい。そういうことで、今、私は一生懸命、ダイレクトコミュニケーションをやろうと言っているのです。


それはいいことですね。現地の日本人を介してコミュニケーションできないというかたちになれば、やらざるを得ないですよね。
英語が母国語でない人たちと、英語でやり取りをするのは非常に楽ですよ。似たようなレベルですから。

今井
楽ですけどね、また、お互いに少しそこは問題があって。


詳細に落ちない。ブレイクダウンしないのでしょう。

今井
ええ。そうです。お互いが8割の英語では、やはり少しコミュニケーションできないところが残ってしまいます。ネイティブとやると、こちらが7割の英語でも向こうがちゃんと「この人はここが間違っているから、何か違うことがいいたいんだろう」(笑)と感じてくれますが、母国語でない同士ではお互いに間違っていても分からない。この組み合わせにはちょっと注意が必要です。
それでもITの言葉だから、そんなに間違いはしないですね。


ITの言葉は、ほとんどカタカナを英語にするだけで通じますから。
でも、日本語でコミュニケーション能力がない人は、英語にするともっとパワーが落ちますし、仕事が分かっている人同士がやるというのが基本ですね。

今井
そうですね。


英語が多少不得意でも、そこしかプロトコルがないのなら、仕事がもともとできる人なら、やればすぐ慣れますよ。私たちもインドの会社とダイレクトコミュニケーションでやっています。インド側にも日本語ができる人が何人かいて、それが阻害要因になるので、直接現地の担当者とやらせています。最初は「間違うかもしれない」といやがっていましたが、「注意深くやれ」と(笑)。今そういうパイプラインができつつあります。一番話が早くていいですね。

今井
私が海外へ行って一番勉強になったのは、会議です。日本人も入って英語で会議していた。向こうが私にいろいろ質問しているのは分かるのですが、なかなか自分でパッと答えられないので、英語の流暢な日本人の先輩に「悪いけど、こういうふうに言って、通訳してくれませんか」と頼んだら、「駄目だ。君が自分で話しなさい」と断られました。通訳すると、彼らもそのほうが楽なので、全部先輩を通してコミュニケーションすると言うのです。「そうすると、ますます君は上達しないし、コミュニケーションできなくなる。だから通じなくてもいいから、まず自分の力で話せ」と、自分でやらされましたね。


それはいい先輩ですね。

今井
だから、「うーん」と言いながら必死で答えました。「うーん」と言うことは何か考えている、何か言いたいんだなというのは彼らにも分かるわけです。会議中に、「とにかくちょっとこれは確認しなきゃいけないな」とか「何か言わなきゃいかんな」というときには、まず「ジャストモーメント」と言う。すると彼らが注目してくれるので、キーワードの一言でも言うと「ああ、そうか」と理解してくれます。
先輩は私にそういうことを説明してくれて、「とにかく最初は苦しくても自分で答えなさい。それでうまくいかなかったら通訳してやる」と言ってくれました。たどたどしくつかえながらでも自分で話そうとすると、向こうがダイレクトにこっちに言ってくれるようになるのでやり取りが増え、自然に英語に慣れてきます。

(次回に続く)

構成:萩谷美也子


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