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2009年5月 8日

【林衛の業界探求シリーズ(7)】第五回 失敗を恥じず挑戦することで伸びる

50歳を前に、初の海外出向

今井様

今井
私は2001年にアメリカに出向しました。


2000年以降の話ですか。それは、ずいぶんベテランになってからですね。

今井
そうですね。50歳目前で初めての海外出向でした。


「そろそろ海外出向が来るかな」という予兆は何かあったのですか。

今井
いいえ、突然でした。ITの仕事では、私の齢で海外に出向することはないだろうと思っていました。


いつまで、アメリカのどちらにいらしたのですか。

今井
2001年から2004年まで、デトロイトです。


デトロイトですか。英語は聞き取りにくくはなかったですか。

今井
デトロイトはほとんど標準語で、アメリカの中では聞きやすい英語らしいのです。それに日系企業のベテランのアメリカ人は、日本人の英語がよく分かりますので。


通じた感じにはなるのですね。

今井
ええ。下手すると、ベテランの現地社員が新人の現地社員に通訳してくれるのですよ、英語で(笑)。われわれが話していてなかなか通じないと、一生懸命英語で「この人はこういうこと言っているんだぞ」と通訳してくれます。
でもダイレクトに自分から話さないと直接会話してくれなくなってしまうということを先輩に教えられて、「ああ、そうか」と納得しました。日本にいるときでも、ダイレクトコミュニケーションへの障害は、やはりそれですよね。現地社員が日本に直接聞いてもなかなか答えてくれないと、結局は現地の出向者に聞いて、出向者が通訳のようになってしまいます。しかし、現地社員が英語で聞けるということがわかれば、そのほうが早いですから、もっと直接やり取りするようになります。それがやはり大事なのではないかと思います。


それには、まず英語で読み書きができるというのが、一つの前提条件ですよね。相手がそれを認識してくれれば、あとはダイレクトコミュニケーションまで時間の問題です。英語の発音が下手なのは、私は仕方がないと思うし、恥ずかしいことではないと思っていますが、多くの人が「エレガントに英語をしゃべれないとまずい」と考えているようですね。そんなことは、普通のビジネスマンの場合、一生できるはずはないと思います。

今井
日本人の英語は下手だし、発音は分からない。それでいいんですよ(笑)。


ただ通じるまであきらめずにやることです。

今井
そう、伝えたいという気持ちがあれば、どんどんうまく伝えられるようになります。結局ダイレクトにやって慣れるしかないですよね。


ええ。

今井
その経験を通じて成長していきます。ですから、そういう機会を自然に増やしたい。若い人たちが英語でしゃべらざるを得ないという機会が自然に増えてくると、英語でコミュニケーションする力もついてくると思います。

変な羞恥心が上達の妨げに

林 衛


実は、最近聞いた話なのですが、今の30代ぐらいまではけっこう海外に行っているのに比べて、それより若い人は「日本から出たことがない」という人の比率がかなり多くなってきているのだそうです。それから、あまり他者とのコミュニケーションをとらない人も増えているという話も聞いています。日本の場合は会社も学校の機能がありますね。ポテンシャルはあるわけだから、よい機会を与えて、コミュニケーション力をずっと開発し続けなければ日本が生き残れる道はないのではないでしょうか。

今井
ほとんどのソフトは残念ながら日本製ではなく海外、特にアメリカ製が多いのでダイレクトに開発責任者とやり取りできるようにしたい。これは私の希望です。
日本の支社を介して、ワンクッション入ったやりとりをしていると、なかなか話がうまくつながらないし、通じません。ですから、本社の開発チームやマーケティングチームとダイレクトにやりたいのです。これはいろいろなところでお願いしてきました。
そうするとダイレクトにいろいろなことをやる機会は増えてくるわけです。そこでプレゼンテーションを若い人たちにさせるのですが、プレゼンテーションまでは英語でやるのに、Q&Aはやらないのですよ。


若い人はへこたれやすいから、そのへんから苦しくなりますね(笑)。

今井
ええ。ですから、私が先輩に言われたように「ダメだ。まずは自分で質問を投げる、あるいは答える。どうしてもそれが通じなかったら、翻訳あるいは通訳を頼んでもいい。まず自分でやってみろ」と言っています。


未熟な若い人が、いわゆる「仕事の終わり」を自分で決めてしまうのはよくないですね。そこから始まることがいろいろとあるのに。

今井
ええ、せっかくの機会なので、チャレンジしないと。でも、残念ながら時間に制限があるので、なかなか徹底できないのです。特に日本人がいると、英語で話すのを恥ずかしがるようですね。
私は向こうで嫌というほど恥ずかしい目にあってきたから、慣れてしまいましたね。確かに最初は日本人がいるところで、英語で話そうとすると、なかなかしゃべれないものだから恥ずかしい気持ちもありましたが、どうしても仕事上話さざるを得ないようになってくると、もうそんなことには構っていられないので、どんどん慣れていくのです。
でも日本にいて、まだ経験の浅い人たちはそういうことは感じていないですから、どうしても恥ずかしいというのが先に立つのかもしれません。日本人の一番悪い点は、羞恥心ですね。羞恥心があまりにも強すぎます。


そのとおりだと思います。むしろ「恥ずかしい」と思うこと自体が恥ずかしいのですけれどね。それが全部コミュニケーションを阻害しています。

今井
ええ、当然こちらも若い人は英語が上手く話せないのは分かっているのですよ。分かっていてチャレンジさせているのだから、間違ってもいいのです。「上手く話せなくてもいいんだ。とにかく一言でも発しろ」と言うのですが、なかなか発言できない。でも、本当はしゃべれるのです。


これだけ英語を学習してきているのだから、ある程度分かっていますよね。でも、学校教育の悪影響で、「全部分からないと答えてはいけないのだ」と思い込んでしまうのでしょう。

今井
そうなのです。だから「しっちゃかめっちゃかになってもいいから、とにかく話せ」って言うのですが、羞恥心がどうも取れなくて、せっかくの機会なのに、自分から話せないのです。そういうところも、強制的にわれわれが「ダメだ。自分で話せ」「自分で聞けよ」といい続ければ、少しずつ変わってくるかなと思います。残念ながら、本社に来てからそういうチャンスがデンソーアイテックより少ないのを感じますね。これから徐々に変えて行きたいと思います。

20年前の「初チャット」の感動


やはり明るく前向きに、それから素直なのがいいと私は思いますね。自分が知っていることが全世界と勘違いしているような人や、ネガティブ志向でものを考える人も中にはいます。
IT業界には、そういう人も結構多いように思います。痛い目に遭っているからというのもあるのでしょうが、せっかく仕事をするのだから楽しんで、何か目標を見つけてやったほうがよいと思います

今井
そうですね。どうせなら楽しんでやったほうがいいですね。私はそういう意味ではいろいろな経験をさせてもらいました。ずっと技術の世界だったのですが、最初CADの開発を10年ぐらいやって、その後はCADを展開する仕事をしました。国内のグループ会社にも展開しましたし、海外にも展開したいというので、自分で海外用のシステムを作って、向こうへ持って行って導入してきました。国内のグループ会社さんに展開する時には、「ああそうか、デンソーはこういうグループ会社さんと一緒に仕事をやっているんだな」と感じ、海外に行けば「そうか、デンソーは海外でもこういうふうに地域の自動車会社といろいろなことやっているんだな」と分かります。そういう経験をしながらグローバルに見てきましたから、すごくいい経験をさせていただいたと思います。
ですから、海外の同じグループの人たちと上手くコミュニケーションをとってやらないと成り立たないということを身をもって体験していましたので、「デトロイトへ行け」と言われても、「あ、そうですか。やっぱり行かなきゃいかんですか」と、スッと行きました。


自分で作ったものを導入して喜んでくれると、非常にモチベーションが上がりますよね。使う側からの視点をよく理解されたのではないかと思います。
私も同じ経験をしています。自分で作った銀行のシステムがロンドンにあるのです。「ああ、こうやって支店で使われているんだ」と思いました。

今井
そういう意味では、グローバルに自分の関係したことが動いているのは、ITのすごいところですよね。


ええ、すごいことですよ。

今井
私もちょうどアメリカ・テネシーの工場を立ち上げるときに、CADのシステムを導入しにいきました。CADのシステムなのですが、メッセージ交換ができるのです。日本時間では夜になりますが、立ち会ってくれている本社の人間とそれを使って初めてメッセージを交換しました。CAD同士で交換すると、ちゃんと自分の打ったメッセージに対して答えてくる。「お、すごいな」と感動しました。まだ今のようにインターネットが発達する前の時代です。ホストコンピュータの中のネットワークでやっていました。自分がメッセージを打つと本社から返事が返ってくる。
次にそこからデトロイトにいる現地の社員、CADオペレーションをやってくれる女性がいて、彼女にもメッセージを打ちました。


チャットっぽい感じですね。

今井
そうです。インストールが終わったテネシーのCAD端末からデトロイトの彼女のCAD端末にメッセージを送ったので、彼女もビックリしていました。


理論としては、できることはわかっているのですが、実際に経験すると違いますよね。

今井
そうです。わかっているけども、初めてそれをやってみて、「あ、ちゃんと動くんだ」と改めてコンピュータの素晴らしさに感動しました。今から20年ぐらい前のことです。


20年前のチャットは、かなり先駆的です。

今井
「自分で作ったシステムだけども、それで日本とアメリカでコミュニケーションできるんだからすごいなあ、やっぱりコンピュータってすごいな」と思いましたね。

結局は人と人とのコミュニケーションである

今井
そういうふうに苦労しながら現地社員と一緒にやると、現地社員とダイレクトコミュニケーションになっていましたから、何かトラブルがあると全部私に相談の電話がかかってくるのです。私が担当を外れても、私にかかってきます。「もう担当は俺じゃないんだから」と言っても、かかってくるんですよ(笑)。


それは、相手から見たら、一緒に苦労した人こそが担当ですよ(笑)。

今井
でも、さすがに英語では上手く話せなかったので、英語で電話がかかってきても、なかなか話が通じませんでした。その当時はメールがないので「ちょっと待って。とにかくファックス打ってくれ」と。送られて来たファックスを読んで「そうかそうか、やっぱりこうか」とわかるので、こちらからファックスで「こうしてみてくれ」と返したり、あるいは直接端末でやったりしました。ファックスでなんとかしのいでやり取りしましたよね。トラブル情報はむしろファックスできちんと書いてくれたほうが正しく通じますしね。
今の人にそれをやれとは言いませんが、そういう苦労をしながらもやっていく機会がないといけないのかなと思います。


いろいろな人とやり取りをする中で、単にシステムを導入する仕事というだけではなく、やはり感動や、何らかの情動が入ってきます。

今井
そうですよね。


そういう仕事ができると、次も頑張ろうかという気持ちになります。そのあたりの話は後輩の方にどんどんされたほうがいいです。あるいはこの対談を通じて、「今井さんの言うダイレクトというのは、そういう背景からきているんだな」というのがわかるといいと思います。そうすると、実際に体験してもらいやすいでしょう。

今井
そうですね。そして、一度体感してもらわないといけませんね。


中堅社員でも海外に出せますよ。「もう齢が齢ですから」といわれても、今井さんは「俺がいくつで行ったと思うんだ!」と言えばいいのです。同じ年齢までは(笑)。

今井
昔は海外出張するときには、向こうの拠点の人に、仕事を放り出してまで受け入れをお願いしていました。でも、今は「そんなのでいちいち付き合わなくてもいい。直接やらせてくれ」と言うようにしています。せっかく行ったのだから、自分で苦労してもらうことにしました。それを手取り足取り現地の日本人が間に入ってやっていたら、何の経験にもならないじゃないかと。僕の意を汲んでそうやってくれる駐在員もいれば、「そうはいうものの、問題を起こしちゃいかんから」って言って従来どおりにやる駐在員もいます。でも、せっかくの機会はうまく使ってもらうことが必要だと思います。

実体験をたくさん積み、体感することの重要さ

今井様、林衛


デトロイトにはよいゴルフ場もありますよね。だいぶ楽しまれたのではないですか。

今井
そうですね。でもCADを立ち上げた当時、日曜日は教会に行く習慣が残っていて、日曜日の午前中だと、ゴルフ場にアジア人しかいないのですよ(笑)。


デトロイトから中西部の人たちは、特に信仰心がありますよね。

今井
今はアメリカでもゴルフを一般の人たちもかなりやるようになって、今なら日曜日に行ってもアメリカ人はたくさんいます。


日本人ビジネスマンはゴルフが大好きな人が多いし、わりとレベルが高いのではないでしょうか。私はPGAのツアーをテレビで見て、アメリカ人はうまい人ばかりだと誤解していましたが、実際に現地に行ってみるとそうでもないですね。

今井
勉強になるのは、ゴルフが下手なアメリカ人でも、すごく落ち着いていることです。日本人で下手な人は、例えばOBしたりチョロしたりすると、「ああ、しまったな」という表情になりますよね。でも、アメリカ人は平気です。OBしようが、平気でゆうゆうともう一発打つ。そこに国民性の違いを感じます。日本人は生真面目なのか、恥ずかしがり屋なのか、そういうところで引け目を感じてしまうのですが、彼らは全く引け目を感じない人種ですね。


彼らの方が、本当の意味でゴルフを楽しんでいます。

今井
平気でマイペースでゆっくりやって、ワーワーしゃべりながら楽しんでいます。日本人だったら「すいません、すいません」って言いながらやるのでしょうけどね(笑)。そのへんの国民性の違いは、ゴルフ場で如実に見えますね。アメリカ人からすると、「何で日本人はそんなに恥ずかしがっているんだ。何でそんなに気にするんだ」と思うのでしょうね。


言葉の問題も、しっかり練習しないで外人と会話しては恥ずかしいという考え方をしているから上手くならないのでしょうね。そういうところは、できるだけ海外の人を見習うほうがいいと思います。日本人の感覚では大胆過ぎるぐらいにやって、アメリカでは普通の生活ができるという感じだと思います。

今井
そうですね。そういうことも実際に行ってみて体感して初めてわかることです。これからいろいろなことをグローバルに展開しようとしたときに、例えば「現地のアメリカ人はこういう感覚を持っている」というのをわかりながらやるのと、わからないでやるのとでは、結果もずいぶん違います。
そういう意味でやはり、若い人たちにはいろいろな経験をしてもらわないといけません。向こうの人を連れて来たり、こちらから現地に行かせたり、そういう経験する機会を、できるだけたくさん持たせてやりたいと思っています。


それはますます今後が楽しみです。本日は、本当にありがとうございました。

(終わり)

構成:萩谷美也子

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